フィギュアスケート女子のカミラ・ワリエワ(15)=ロシア・オリンピック委員会(ROC)=がドーピング検査で陽性反応を示した問題で、日本アンチ・ドーピング機構(JADA)の浅川伸専務理事が取材に応じ、北京五輪の出場継続を認めたスポーツ仲裁裁判所(CAS)の決定を「スポーツ全体の前提が覆される判断」と批判した。 禁止薬物トリメタジジンが検出されたワリエワに対し、ロシア反ドーピング機関(RUSADA)は暫定資格停止処分を科したが、選手側の異議申し立てを受けてRUSADA規律委員会が解除。この決定を不服として、国際オリンピック委員会(IOC)などが訴えたものの、CASは16歳未満の「保護対象者」に当たることなどを挙げて退けた。 「公正な環境で競技することが一番尊ばれるべき世界で、ドーピング違反で何らかの処罰が下ることが前提のアスリートの競技継続が容認されたことは極めて残念」と浅川氏。ワリエワの違反は確定していないと断った上で、「本人の尿検体から違反物質が出ていることは動かしがたい。未成年だからといって、違反の事実が無効になるルールの体系にはなっていない」と述べた。 また、昨年12月25日に採取した検体の分析が遅れたことについては、世界反ドーピング機関(WADA)の検査所に届けたRUSADAの対応を疑問視する。「どの程度、急いでやらないといけないか、発注側が追加情報を与えない限り見えない」と指摘。RUSADAが暫定処分を解除した背景も明確でないとした。 浅川氏は今回の一件が今後に与えうる影響として、「違反していても若い子だったら許されるのか、何らかの事情が成立すれば容認されるのかと見られることは、アンチドーピングのシステムとして非常に大きなマイナス。今回のCASの裁定は重大な脅威」と主張。ロシアについては、「アンチドーピングの事案をさばけるか、ルールを執行する能力があるか」が、WADA側の論点になる可能性があると述べた。(了) 【時事通信社】 〔写真説明〕ロシア・オリンピック委員会(ROC)のワリエワ選手(左)とトゥトベリゼ・コーチ=13日、中国・北京