昨季4位に沈んだ悔しさが、81歳の生粋の野球人を動かしている。ソフトバンクの王貞治球団会長は「特別チームアドバイザー」の肩書が加わり、日本一奪還を目指すチームをサポート。宮崎市で行われている春季キャンプでも若手を中心に指導している。 王会長は昨季までも現場に顔を出していた。選手との接点もあったが、「距離を感じていた」と正直に明かす。野手に偏りがちだった助言を投手や捕手にも行い、「意見交換やアドバイス、質問などでやりとりが増えてくれれば」と願っている。 技術指導はコーチの役割だと心得ており、伝えたいのは「試合でどうするかという部分」と言う。練習と試合は全くの別物と捉え、「練習をどれだけ熱心に長時間やっても、結果が伴わないとプロとして評価されない」と言い切る。 キャンプイン前日には、「どれだけ時代が変わっても、100年たっても野球がある以上は俺は真理だと思う」と自負する冊子を刷り、選手や首脳陣に配った。王会長の経験に裏打ちされた考えが事細かに記され、選手からも「一つ一つ響くものがある」との声が聞かれる。 掛ける言葉も日に日に熱を帯びる。「昨年、負けるとこんなに惨めなんだなと感じたと思う。やっぱり勝負事は勝たないと駄目なんだよ。絶対リーグ優勝して、日本一になろう」。個々の成長とチームの覇権奪回を誰よりも願い、選手に寄り添っていく。(了) 【時事通信社】 〔写真説明〕春季キャンプでグラウンドに立ち、打撃練習を見詰めるソフトバンクの王貞治球団会長=2日、宮崎市 〔写真説明〕春季キャンプで選手たちを集め、言葉を掛けるソフトバンクの王貞治球団会長(左から5人目)=2日、宮崎市