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ロジカルコミュニケーションとは、「相手に伝えたいことを整理し、わかりやすく伝える話し方のテクニック」を意味する言葉です。ロジカルは「論理的」を意味し、コミュニケーションは「相手と意思を通じ合わせること(意思疎通)」を意味します。直訳を連結すると、「論理的な意思疎通」となりますが、実際の意味はもっと狭義的で、意思疎通の中でも「話し方」に焦点を当てているのが特徴です。そして、論理的とは、論理に破綻がないこと、つまり「問い」から「答え」までの流れがスムーズでわかりやすいことを意味します。これらを連結し端的に表すと、「わかりやすい話し方」となります。
実は、このロジカルコミュニケーションという言葉は、登録商標されたものです。ロジカルコミュニケーション検定講座を主催している一般社団法人の代表理事「安田 正」氏によって考案されたものであり、そのため、ロジカルコミュニケーションには、登録商標の証である「®️」のマークが付いています。
ロジカルコミュニケーションという言葉を生み出す前、その当時、安田氏は、企業の英語研修の講師を担当していました。その中で、「英語を上手く話せる人でも、プレゼンや会議で話が通じない」という課題にぶつかっていたそうです。
さまざまな事例を分析した結果、課題の原因は英語力ではなく、日本人の話し方にあると気づきました。その気づきから、さらに調査を進めていったところ、「日本人はわかりやすさを意識せず話す傾向がある」「日本人は人それぞれ“わかりやすさ”の基準が異なる」などの傾向が見えてきたそうです。当時、わかりやすい話し方に言及している人間がいなかったこともあり、安田氏は、「日本人の特性に合ったわかりやすいコミュニケーション方法」の考案に踏み切りました。
そうして生まれたのが、「ロジカルコミュニケーション」です。
しかし、当時はわかりやすい話し方の必要性が一般に普及していない時代なので、なかなか受け入れてもらえなかったそうです。そのような不遇のときを、安田氏は地道な活動によって乗り越え、やっと一部のクライアントが研修を導入してくれるようになりました。
徐々に研修を導入してくれる企業が増えていき、ロジカルコミュニケーションは多くの企業の研修に採用されるようになっていきました。そしてその後、安田氏は、ロジカルコミュニケーションの登録商標を取得し、『ロジカルコミュニケーション®︎』という著作を出版されたのです。
ロジカルコミュニケーションは、なぜ必要とされるのでしょうか? ビジネスにおけるロジカルコミュニケーションの必要性を解説します。
ビジネスを円滑に進めるうえで、「わかりやすい説明」は重要です。したがって、それと同義であるロジカルコミュニケーションも、ビジネスにおいて必要不可欠なスキルといえます。
そもそも、なぜビジネスにおいてわかりやすい説明が重要なのかといえば、それは、ビジネスの進行には、関係者間のコミュニケーションが不可欠であり、それをいかにスムーズに行えるかが、ビジネスの成功を大きく左右するからです。
コミュニケーションが不足していたり、意思疎通や情報伝達がチグハグとなっていたりする状況の場合、関係者間の連携は効率性を欠くものとなります。認識の齟齬が原因で従業員同士の衝突が生まれたり、作業の差し戻しが多発して従業員のモチベーションが低下してしまったりと、さまざまな面でビジネスの進行を妨げる恐れがあるのです。
このように、ビジネスにおいて欠かすことができないコミュニケーションですが、円滑に行うためには、わかりやすい説明が求められます。論理が破綻した話を聞いても理解ができないように、わかりにくい説明というのは、コミュニケーションの目的である意思疎通を阻害してしまうためです。聞き手がすんなりと理解できる、わかりやすい説明や話し方を心がける必要があります。その中で、わかりやすい話し方のスキルである、ロジカルコミュニケーションが役に立つというわけです。
ロジカルコミュニケーションがもたらす3つのメリットを解説します。
まず1つ目は、話がわかりやすくなることです。ロジカルコミュニケーションは「わかりやすい話し方」を意味するものであり、身につけることで、話がわかりやすくなる効果が期待できます。「話していて、自分でも何をいっているのかわからなくなるときがある」「『結局、何がいいたいの?』と、よくいわれてしまう」などの悩みを抱えている方は、ロジカルコミュニケーションを身につけることで、話の内容をわかりやすく伝えられるようになり、悩みの解消に役立つでしょう。
2つ目は、コミュニケーションコストが減ることです。コミュニケーションコストとは、情報伝達や意思疎通にかかる時間や労力を意味します。説明を相手にわかりやすく伝えられることで、説明を何度も繰り返すことや、相手の理解を得るまでに時間がかかることが減り、結果としてコミュニケーションにかかる負担を抑えることができます。
3つ目は、交渉力が向上することです。話を論理的に展開できるので、話の矛盾や「伝えたいことがよくわからない」などが原因で、話を聞き入れてもらえないリスクが低下し、自分の主張を聞いてもらいやすくなります。交渉においては、まず自分の要望を相手に理解してもらうことが必要であり、そのうえで、お互いの主張や要望をすり合わせながら、最適な結論を探します。ロジカルコミュニケーションができることで、自分の要望を正確に相手に伝えることができ、交渉の際も有利に話を展開することができます。
ロジカルコミュニケーションにはさまざまなメリットがあることがわかりました。しかし、身につけるためには、具体的にどうすればよいのでしょうか? ここからは、日常で実践できるロジカルコミュニケーションのコツを紹介します。
1つ目は、ロジカルシンキングのスキルを鍛えることです。ロジカルシンキングとは、物事を論理立てて考える思考法を意味します。「論理立てる」とは、物事を理解したり説明したりするとき、矛盾がないように筋道を立てることです。ロジカルシンキングを鍛えることで、論理的な思考力が養われていき、自然とロジカルコミュニケーションの能力も高まっていきます。
ロジカルシンキングの鍛え方については、以下3つのトレーニング方法が参考になるでしょう。
それぞれについて、簡単に解説します。
フェルミ推定とは、実際に数えると膨大な手間がかかる「数の問い」に対して、論理的推論によって、短時間で概算を弾き出す手法のことです。
例えば、「日本にいる子供の数は?」という問いがあったとします。実際に数えようとすると膨大な手間がかかりますが、フェルミ推定では、いくつかの情報をもとに仮定で思考を進めていくので、この場合は、「人口は1億3,000万人で、子供の割合は15%と仮定したなら、日本にいる子供の数は1,950万人となる」といった具合に、概算で答えを算出します。
ポイントは、材料となる情報を根拠として、仮定で思考を深めていく点です。「〇〇だから△△」という論理の箱を、矛盾なく積み上げて、論理構造に破綻のない結論を出します。フェルミ推定の問題を解くことで、根拠に基づいて仮説を立てる力が養われ、ロジカルシンキングのスキルが鍛えられます。
ディベートに参加することも、ロジカルシンキングの能力向上に役立ちます。ディベートとは、主題に対するグループを肯定派と否定派の2つに区分し、定められたフォーマットに沿って、それぞれが討論するというものです。物事を多面的に捉える思考が養われる効果が期待できる他、自身の主張には相手を納得させるだけの論理性が求められるので、論理的思考力も鍛えることができます。
ロジカルシンキングでは、効率よく実践ができるように、いくつかの思考法、つまり思考のフレームワークが提案されています。代表的なフレームワークとして、「演繹法」「帰納法」「MECE」の3つを紹介しましょう。
演繹法
まず「演繹法(えんえきほう)」とは、「ルール(もしくは一般論)」と「観察事項」をもとに結論を出すフレームワークです。以下に例を挙げてみます。
三段論法ともいわれる思考法です。ロジカルシンキングのフレームワークの中でも、一般的な思考法で、気軽に実践することができます。ただし、ルールと観察事項に誤りがあると、的外れな結論が導き出されてしまうので、その点には注意が必要です。
帰納法
「帰納法(きのうほう)」とは、いくつかの事実をもとに結論を導き出す思考法です。以下に例を挙げてみましょう。
事実①〜③から共通してわかることは、動画の需要が伸びていることです。したがって、この共通点から導き出される結論は、自社も動画配信を活用したマーケティングを行うべきである、ということになります。
このように、帰納法では、いくつかの事実を並べて共通する傾向を見出し、それをもとに結論を出すという思考のプロセスをたどります。
MECE
「MECE(ミーシー)」とは、物事を分類する際に役立つ思考法です。以下の英単語の頭文字をとって、MECEと呼ばれています。
まとめると、「それぞれの要素に重なりがなく、全体が網羅されている状態」を意味します。論理的に物事を思考する際は、各要素の整理が必須です。論理を立てるとき、情報の重なりや並べ方の矛盾があると、きれいな筋道を描けないからです。それぞれの要素がどのような性質を持っているのかを理解し、それらをどう区分するのが適切かを考えなくてはいけません。これを考えることが、MECEという思考法です。MECEに基づいて思考することで、物事を適切に分類できるようになり、情報を整理した状態で論理を組み立てることができます。
ロジカルコミュニケーションのコツの2つ目は、話す内容をグループ化することです。伝えたいポイントを整理して、それぞれを区分しグループ化することで、話の展開がきれいにまとまり、相手に話の要点を伝えやすくなります。先ほど説明したMECEを用いると、効率的に行えるのでおすすめです。
3つ目は、結論ファーストを心がけることです。話の冒頭に結論をもってくるように心がけることで、結論から根拠までの流れを意識したうえで、物事を思考できるようになります。「伝えたいことは、〇〇です。なぜなら、△△だからです」といった論理構造を頭の中で展開できるようになり、自然とロジカルコミュニケーションを実践できるようになるでしょう。結論ファーストを心がけるうえで参考になるフレームワークが、「PREP法」です。PREP法とは文章構成術の一種で、以下の流れで内容を構成します。
結論を述べたあとに、結論に至った根拠や理由、具体的な事例を説明し、最後にあらためて結論を提示します。結論から伝えるため、論理構造にブレが生じにくく、具体例を用いることで、抽象的な概念も実態を伴う形で説明できるので、相手にわかりやすく物事を伝えられます。また、最後にもう一度結論を提示することで、全体の繋がりを相手に再認識させることができ、内容の説得力が増すのです。PREP法は、わかりやすい文章を作成するために用いられる文章術ですが、話し方の矯正にも応用が効きます。結論ファーストを心がけるときは、ぜひPREP法を参考に話の展開を考えてみてください。
ロジカルコミュニケーションの習得に関して、実践的なトレーニングでスキルを鍛える前に、ロジカルコミュニケーションについて体系的に学習しておきたいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。また、実践トレーニングを行う際、理論体系を理解している状態で実践するのとそうでないのとでは、習得の速度に差が生じます。
そのため、効率的な習得という点からみても、ロジカルコミュニケーションについて、体系的に学習しておくことは有用です。ここでは、ロジカルコミュニケーションの学習方法について、3つの方法を紹介します。
1つ目の方法は、ロジカルコミュニケーションに関する本を読むことです。本稿含め、ネットメディアに掲載されている記事でも、ロジカルコミュニケーションに関する情報を収集することは可能ですが、本と比較すると、情報の信頼度や網羅性、理論体系のまとまり具合は劣る傾向にあります。その点、本や書籍というのは、ネットメディアと違い、一度発行したものは修正が難しいので、出版社は誤った情報を流さぬよう、会社として厳重にチェックを行います。また、しっかりと編集がなされているので、文章のクオリティが高く、構成の組み方も読者のニーズに沿ってまとめられています。1冊の本を読了するだけでも、ロジカルコミュニケーションの基本的な内容について、網羅できるはずです。可能であれば、数冊を読んでおくと、視点や捉え方に偏りが生まれにくく、より多角的に内容を理解することができます。
2つ目の方法は、ロジカルコミュニケーションの講座やセミナーを受講することです。オンライン・オフラインを問わず、ロジカルコミュニケーションを学習するための講座やセミナーは数多く開催されています。専門講師がわかりやすく解説してくれるので、複雑な理論体系もスッと理解することができ、自学習だけでは理解が追いつかないときや、学習に入る前の体系的なインプットにおすすめです。
3つ目は、コミュニケーション・マイスター協会が主催するロジカルコミュニケーションの検定を受けることです。検定を受講することで、ロジカルコミュニケーションの習得に必要な知識をレベル別(3級や2級など)に学習できます。通信講座で完結するものも多く、受講し必要なカリキュラムを終えるだけで、ロジカルコミュニケーションを体系的に学習できる他、資格認定を受けられるので、能力を対外的にアピールしやすくなります。
わかりやすい説明は、スムーズなビジネスの進行に欠かすことができません。そして、ロジカルコミュニケーションとは、「わかりやすい話し方」を意味する言葉です。したがって、ロジカルコミュニケーションを学習し、身につけることは、ビジネススキルの向上にもつながるといえます。ビジネスパーソンとして成長を望む方は、ぜひロジカルコミュニケーションの習得を検討されてみてはいかがでしょうか。
また、企業内のコミュニケーションについて課題を感じられている企業または担当者の方には、ビジネスチャット「WowTalk(ワウトーク)」の活用がおすすめです。
WowTalkは、抜群の使いやすさと充実した管理機能によって、企業のコミュニケーションをサポートします。これまで、製造業や運輸業、銀行業やサービス・小売業など幅広い業種のお客様に導入させていただき、2021年3月には累計導入企業数10,000社を突破しました。
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