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冒頭でも少し触れたとおり、従業員エンゲージメントとは、従業員による企業への信頼度や貢献意欲を指す言葉です。
従業員エンゲージメント向上のためには、単語の意味について正確に把握したうえで、実際に自社内のエンゲージメントを測定してみることが重要です。
まずは、混同しやすい「従業員満足度やモチベーションとの違い」や「従業員エンゲージメントを簡単に測定する方法」などについて詳しく解説します。
従業員満足度と従業員エンゲージメントとの違いは、「自発的な貢献意欲の有無」にあります。
従業員エンゲージメントが高い社員は、自発的な貢献意欲があるため「積極的に動いて、会社をよりよくしたい」と考えます。一方で従業員満足度が高い社員とは、現在の働き方に満足している状態を指しているため、必ずしもやる気に溢れている訳ではありません。
従業員満足度とは、その名の通り、仕事の内容や上司・働き方などに対しての満足度を測る指標です。「従業員満足度が高い=この会社で長く働きたい」と社員が感じやすくなるため、積極的に従業員満足度アップに努めている企業も多く存在します。
しかし従業員満足度が高い社員は、従業員エンゲージメントが高い社員と比較して、「自発的に会社に貢献したい」とは感じていないことも大いにあります。会社や仕事に満足しているかどうかが物差しであるため、自発的な貢献意欲は低いケースも十分にあり得るのです。
そのため従業員満足度が高いからといって、生産性や貢献意欲の向上が必ずしも達成されるわけではないといえます。したがって、従業員満足度の高さと従業員エンゲージメントの高さは、別軸で検討すべき指標であると考えるのがよいでしょう。
モチベーションと従業員エンゲージメントの違いも、「企業への貢献意欲の有無」にあります。
モチベーションとは、「やる気」や「意欲」を意味する言葉です。「モチベーションが高い=やる気がある」と言い換えられるため、従業員エンゲージメントと似たイメージを持つ方も多いでしょう。
しかしモチベーションが高い従業員は、必ずしも企業に対して貢献意欲を所持していません。モチベーションが高い社員は、自分のために仕事を頑張るなど、会社以外のために仕事に励んでいることも多いです。
したがって、モチベーションが高いからといって、企業への貢献意欲があるとは限りません。「仕事に対するやる気はあるものの、給与や自身のスキルアップなどを目標として仕事に取り組んでいる状態」と考えるとわかりやすいでしょう。
では、自社の従業員エンゲージメントはどのように測定すればよいのでしょうか。実は従業員エンゲージメントには明確な指標などは定められておらず、定義はあいまいです。
「定義があいまいなら測定は不可能では? 」と感じますが、アンケート調査などを用いれば、従業員エンゲージメントのある程度の高さを把握できます。ここでは、近年注目されている「eNPS」と呼ばれる調査方法を紹介しましょう。
eNPSとは、「Employee Net Promoter Score(エンプロイー・ネット・プロモーター・スコア)」の略称で、顧客ロイヤルティを測る「NPS」と同様に、点数形式での回答を求める調査です。
「あなたは自社を友人や親しい知人にどの程度すすめたいですか? 0点〜10点で評価してください」といった質問を行い、回答者の点数に応じて以下のような3段階に振り分けます。
上記の数値から「推奨者の割合−批判者の割合」を引いた数値がeNPSとなり、数値が高いほど、従業員エンゲージメントが高いと判断できます。
例えば社員300人に調査を行い、推奨者が150人・批判者が30人とします。すると(150人÷300人×100)−(30人÷300人×100)=40と求められ、この企業の従業員エンゲージメントは比較的高いことがわかります。
一方で、推奨者が80人・批判者が100人の場合は−6.6となり、従業員エンゲージメントは大変低いと判断できます。
eNPSは「周囲の人に会社をすすめたいかどうか」の質問と、自由回答形式の「その理由は? 」とのたった2問だけで実施できるため、手間もかかりません。従業員エンゲージメントの向上には、現状の把握が欠かせないため、ぜひ一度取り組んでみてください。
ここまで説明したとおり、従業員エンゲージメントは「従業員とよい関係性を築けているか」の判断基準として非常に有効です。
では、従業員エンゲージメントが高いと、結果として企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。
従業員エンゲージメントが重要視される理由は、離職率の低下や生産性・収益性の向上などの複数のメリットが存在するためです。従業員エンゲージメントの向上が企業にとってプラスに働くことは、いくつかの研究でも証明されています。
米国心理学会の “Journal of Applied Psychology” に、ギャラップ社の主任研究員であるジェームス・ハーター発表した論文(Harter et al., 2002)によれば、従業員のエンゲージメントが高い事業所ほど、従業員の離職率が低く、顧客満足度や顧客ロイヤリティ、生産性などの数値が高いことが明らかにされています(※1)。
またモチベーションエンジニアリング研究所と慶應義塾大学 大学院経営管理研究科/ビジネス・スクール 岩本研究室が共同で行った「エンゲージメントと企業業績」に関する研究では、エンゲージメントの上昇は、営業利益率や労働生産性へプラスの影響を与えることがわかっています(※2)。
以下のような研究結果を見ると、従業員エンゲージメントが経営にもたらす影響の大きさを実感できるのではないでしょうか。
上記の2つのデータからもわかるとおり、従業員エンゲージメントの向上には数多くのメリットが存在するだけでなく、企業の経営にとって非常に重要な業績向上にも関係しています。
従業員エンゲージメントの向上は、会社のさまざまな問題解決のために、欠かせない取り組みといえるでしょう。
(※1)参考:リアルワン株式会社|従業員エンゲージメント(Employee Engagement)―その定義、効果、そして診断する意義とは?― 前編
(※2)参考:株式会社リンクアンドモチベーション|「エンゲージメントと企業業績」に関する研究結果を公開
前章で紹介したように、従業員エンゲージメントの向上には、企業にとって多数のメリットが存在します。
ただしそうは言っても、具体的に想像しづらい部分もあるかと思いますので、ここでは「従業員エンゲージメントの向上による主な3つのメリット」について詳しく解説します。
1つ目のメリットは、離職率の低減です。従業員エンゲージメントが高いと離職率が低減する理由は、自社で働くことにやりがいを感じており、「この企業で働き続けたい」と感じやすいためです。
離職の理由は人によってさまざまですが、
などの理由が原因で退職する人は多く存在します。
しかし従業員エンゲージメントが高い場合は、自社での仕事に魅力を感じ、前向きに仕事に取り組んでいるため、上記のような悩みを感じる社員が少ない傾向にあります。
また、従業員エンゲージメントが高い社員が増えると「仕事や職場環境をよりよくするにはどうすればよいか」を多くの人が考えるため、結果として働きやすい職場環境となり、会社全体の離職率の低下にも繋がります。
2つ目のメリットは、企業の業績向上です。
従業員エンゲージメントが高まると、仕事に前向きに取り組むため、自発的な行動が多くなります。するとダラダラと働くことが少なくなり、生産性が向上することで、企業の業績アップに繋がります。
ただ与えられた仕事を淡々とこなすのではなく、主体的に課題解決に取り組むようになるため、新しいサービスやアイデアの誕生も今まで以上に期待できるでしょう。
3つ目のメリットは、顧客満足度の向上です。従業員エンゲージメントが高い人は「会社に貢献したい」と感じているため、自社の顧客も大切にしたいとの意識が働きます。
すると日々の業務に積極的に取り組むだけでなく、顧客対応も改善され、結果として顧客満足度の向上も期待できます。
例えば、
などを行うことによって、顧客から評価される機会が増します。
またその結果、会社の商品やサービスのファンになる顧客の獲得にも繋がります。
では、従業員エンゲージメントを向上させるには、具体的にはどのような取り組みを行えばよいのでしょうか。
「従業員エンゲージメントの向上」と聞くと時間がかかりそうなイメージがあるかもしれませんが、今日からでも試せる、取り組みやすい方法もいくつか存在します。
もちろん「納得度の高い人事評価制度にする」「上司のフィードバック能力を高める」なども重要ではあるものの、組織改革や上司の能力向上などが必要となるため、どうしても時間がかかってしまいます。
ここでは特に取り組みやすい3つの方法を紹介しますので、ぜひ参考にして従業員エンゲージメントの向上に取り組んでみてください。
1つ目は、企業理念やビジョンを浸透させることです。企業理念への理解が重要な理由は、企業の現在の方向性への理解や共感がなければ、貢献意欲は発生しないためです。
従業員エンゲージメントが高い状態とは、従業員が企業理念やビジョンについて理解できており、そのうえで企業への貢献意欲を持っている状態を指します。つまり、従業員エンゲージメントの向上のためには、企業理念やビジョンへの理解が欠かせません。
具体的には、
などの取り組みを行い、徐々に浸透させていくことがポイントです。
2つ目は、承認・称賛の文化を作ることです。普段は表面化しづらい成果や貢献などに対して感謝の気持ちを伝えあうことで、従業員が職場の環境に対して働く魅力を感じられるようになり、会社への貢献意欲が高まる効果が期待できます。
いきなり「承認・称賛の文化を作る」と言っても難しいですが、独自のポイント制度を導入し、感謝の気持ちとしてポイントを贈り合うことで、エンゲージメントの向上に取り組んでいる企業も存在します。
自社の魅力を制度化することで、時間をかけて、従業員エンゲージメントの向上を狙いましょう。
ポイント制度の企画設計にハードルの高さを感じる場合は、「サンクスカード」を試してみることもおすすめです。サンクスカードとは、従業員同士が感謝の気持ちを手紙にして贈りあう社内制度の一種です。
実際の紙を運用に用いる場合は、小さめのメッセージカードを用意するだけで制度導入ができるので、費用や手間を抑えたスモールスタートで施策を試すことができます。また、より高度かつ効率化した運用を目指したい場合は、専用のITシステムを活用することも視野に入れることが可能です。
サンクスカードに関する詳しい内容は以下の記事で紹介しているので、興味のある方はぜひ参考にしてください。
3つ目は、社内コミュニケーションの活性化です。従業員エンゲージメントの向上には、同僚や上司などの一緒に働いている人々と良好な関係を築くことも、重要なポイントのひとつと言われています。
そのため、コミュニケーションの機会が減り、人間関係が良好ではなくなると、従業員エンゲージメントの低下にもつながってしまいます。日ごろから社内コミュニケーションを活性化させ、社員同士の関係性を良好にすることを意識しましょう。
なおコミュニケーションの活性化には、オフラインでの交流会やイベントの開催も効果的ですが、ビジネスチャットなどのツールの導入もおすすめです。
ビジネスチャットは社内コミュニケーションの効率化を主な目的としており、
などのメリットにより、近年導入を進める企業が増加傾向にあります。
ビジネスチャットを導入し、雑談などの気軽なコミュニケーションを推進することで、社員同士の関係性向上を促すことがポイントです。
なお弊社では、チャットだけでなく、無料通話やタスク管理機能などさまざまな機能が揃ったビジネスチャット「WowTalk(ワウトーク)」を提供しています。より詳しい活用方法を確認したい場合は、こちらのフォームよりお気軽に資料をダウンロードしてみてください。
ここまで、従業員エンゲージメントを向上させるメリットや、今すぐ向上させる方法について紹介しました。
実際に従業員エンゲージメントが高い企業では、エンゲージメントの向上のため、さまざまな取り組みを行っています。次に、従業員エンゲージメント向上に取り組む2つの企業事例を紹介します。
世界的に有名なコーヒーショップであるスターバックスは、従業員エンゲージメントの向上に積極的に取り組んでいる企業です。
「元気よく挨拶する店員が多い」「迷っているとおすすめメニューを教えてくれる」など、前向きに業務に取り組む従業員が多いイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。
スターバックスでは従業員エンゲージメントの向上のため、具体的には、以下のような取り組みを行っています。
チェーン店としては珍しい「マニュアルを作らない」との取り組みは、従業員の自発的な業務への取り組みを推奨しているためです。また飲食店としては異例の長時間の研修を実施することで、顧客との積極的なコミュニケーションを促しています。
上記のような取り組みにより、従業員全員がブランドミッションを意識して働くことで、「ドリンクへのメッセージサービス」や「積極的な声がけ」など、各店舗では従業員が自発的に業務に取り組む姿勢が見られています。
建築機械の大手メーカーである小松製作所も、従業員エンゲージメントの向上に成功した企業のひとつです。
小松製作所では、従業員に近い位置にいるマネージャー層の強化によって、従業員エンゲージメントの向上に取り組みました。
具体的な取り組みは、管理職向けの研修の実施です。「信頼・モチベーション・変化・チームワーク・権限委譲」の5つのテーマに関連した研修やワークショップの実施により、チームのエンゲージメントやパフォーマンスの向上を目指しました。
その結果、33%だったエンゲージメントは70%にまで上昇。またそれだけではなく、半年間で工場のパフォーマンスが9.4%向上しました。
「従業員エンゲージメントの重要性は理解できたけれど、何から手をつけてよいのかわからない」と感じている方も多いかもしれません。
従業員エンゲージメントの向上には、エンゲージメントツールの活用も効果的です。
エンゲージメントツールを活用すれば、より効率的に従業員エンゲージメントを向上させることができます。ここでは、ツールを選ぶ4つのポイントを紹介します。
まずは、エンゲージメントツールを導入する導入目的を明確にしましょう。エンゲージメントツールにはさまざまなツールが存在するため、目的が明確になっていない場合は、ツールの選択に時間がかかってしまいます。
例えば、
といったように、目的が明確になるとツールを選びやすくなります。「何を一番改善したいのか」を明らかにしたあとで、求める機能が揃ったツールを選びましょう。
継続利用を考えれば、料金も重要なポイントのひとつです。エンゲージメントツールの多くは、ユーザー数によって金額が増加する料金プランを設定しています。
例えば「1ユーザーにつき300円+初期費用」などのイメージで、利用する従業員が増えるほどに、料金は高くなります。またツールによっては複数のプランを提供しており、選んだプランによって料金が大きく変動するケースも多いです。
多くのツールでは無料トライアルが可能なため、まずは体験を行ってみて、料金面も含めて自社にあったサービスを選ぶことがポイントです。
さまざまなツールの中には、機能面は充実しているものの、操作性に欠けるツールも存在します。もし操作性が悪いツールを選ぶと、操作を理解するまでに時間がかかるため、社内に浸透しない恐れが高まります。
ツールを選ぶ際には、できるだけ直感的に操作できるものを選びましょう。操作性は料金や機能面とは異なり、実際にサービスを利用してみないと理解しづらい部分も多いです。無料トライアルに申し込み、多くの社員の意見を聞いてから導入を決めることがおすすめです。
機能性に優れたツールを選んでも、使いこなせなければ意味がありません。「データは揃っているのに分析方法がわからない」「分析結果は見えているが、ここからどのように改善すべきかわからない」などの壁に直面してしまいます。
そのためツールを選ぶ際には、サポート体制の充実度のチェックも重要です。
など、サポートが優れたサービスを選びましょう。
従業員エンゲージメントは、従業員による企業への貢献意欲を指す言葉です。
従業員エンゲージメントの向上には、「離職率の低減」「企業の業績向上」「顧客満足度の向上」などの数多くのメリットが存在しており、企業の存続と発展を考えれば、今日からでも従業員エンゲージメントの向上に取り組むべきと言えます。
また従業員エンゲージメントは、企業理念の浸透や、社内コミュニケーションの活発化などによって、徐々に向上させることができます。いきなりは難しいケースが多いですが、離職率の低下や生産性の向上のためにも、従業員エンゲージメントの向上に根気強く取り組んでみてください。