世界的な消費電力の増加や再生可能エネルギーの導入を受け、供給を支えるクリーンエネルギー・インフラの近代化や送電網の増設・新設などが重要課題となっています。本記事では、脱炭素社会実現の重要なカギを握るクリーンエネルギー・インフラ投資の現在と未来、そして課題について考察します。

脱炭素社会実現に必須のクリーンエネルギー・インフラとは

クリーンエネルギーとは、太陽光発電や風力発電、水力発電、地熱、バイオマス、水素など、温室効果ガスを排出することなく再生可能なエネルギー源から生成されるエネルギーを指します。供給に欠かせないクリーンエネルギー・インフラは送電網から発電施設、太陽光パネル、電気自動車(EV)用の充電ステーションまで、広範囲なクリーンエネルギー・エコシステムの基盤のことです。

クリーンエネルギー・インフラへの移行は脱炭素社会を実現する上で欠かせないプロセスであると同時に、雇用創出や経済効果も期待できることから、近年、先進国を中心に取り組みが進んでいます。

2040年までに8,000万km以上の送電網増設が必要

クリーンエネルギー技術の成長にインフラが追い付いていない現状が浮き彫りになっています。

世界の再生可能エネルギーは年々増加しているとはいうものの、気候変動目標達成に必要な量の半分以下に留まります。特に、需要増加に対応するための送電インフラ不足は、先進国・発展途上国を問わず、クリーンエネルギー普及の大きなハードルとなっています。たとえば、再生可能エネルギーが増加している欧米や日本においては、送電網不足が原因で延滞しているプロジェクトが存在します。

国際エネルギー機関(International Energy Agency:IEA)の推定によると、2040年までに世界中で8,000万km以上の送電網を増設または改修しない限り、各国の気候変動目標を達成できない可能性があります。これは、既存の送電網の2倍の長さに匹敵します。

近年はこのような課題を見据え、「クリーンエネルギー・グリッド(送電網)」などと呼ばれる、再生可能エネルギーの供給変動にリアルタイムで対応可能な最新の送電ネットワークシステムの開発も進められています。

投資家の関心はインフラより技術分野

クリーンエネルギーへの移行には、莫大な投資が必要となることはいうまでもありません。前述した通り、送電網の装備はエネルギー転換を進める上で不可欠な基盤であり、2030年までに投資を現在の2倍に拡大する必要があります。

ところが、クリーンエネルギー市場への投資が順調な伸びを示している一方で、投資対象としては依然としてインフラより技術分野への関心が高いことが明らかになっています。

たとえば、ブルームバーグNEF(※)の最新レポート「エネルギー移行投資動向(Energy Transition Investment Trends)2024 」によると、世界のクリーンエネルギー投資は2023年に17%増加し、過去最高の1兆8,000億ドル(約280兆8,000億円)に達しました。EVなどの電動輸送機器と再生可能エネルギーへの投資がそれぞれ6,000億ドル(約93兆6,000億円)を上回ったのに対し、送電網への投資はその半分に留まりました。

(※)エネルギー分野に特化したビジネス調査企業。

今後どうなる?課題は?

今後の大きな課題のひとつとして、各国におけるクリーンエネルギー・インフラ格差が挙げられます。

エネルギー・インフラが整備されている先進国がクリーンエネルギーへの移行を進める一方で、多くの新興国・発展途上国では送電インフラの老朽化や故障が慢性化しており、送電網への投資が減少するといった動きも見られます。これらの国が気候変動目標を達成するためには、今後15年間で送電網への投資を5倍に増やすと同時に、再生可能エネルギーの発電施設を建設するための技術や資金援助なども必要となります。

全ての国が脱化石燃料を実現するための資金を確保する上で、民間投資のさらなる促進も重要なカギを握っています。投資家がクリーンエネルギー・インフラへの投資のリスクを適切に理解し、より大きなリターンを期待できる魅力的な投資環境作りも、今後の課題のひとつとなるのではないでしょうか。

脱化石燃料に大きな影響を与える世界的プロジェクト

クリーンエネルギー・インフラの構築は、社会が化石燃料から脱却できるか否かに大きな影響を与える、極めて重要な世界的プロジェクトといっても過言ではありません。その道のりは長く、相当の労力とコストが必要とが予想されますが、さらなる技術開発と民間投資の促進、効果的な政策に後押しされ、加速していくことが期待されます。Wealth Roadでは、今後もクリーンエネルギー市場に関する動向をレポートします。

※為替レート:1ドル=156円
※上記は参考情報であり、特定の銘柄の売買及び投資を推奨するものではありません。

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情報提供元: Wealth Road
記事名:「 クリーンエネルギー・インフラ投資 現状と課題