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老後資金÷(1ヵ月の生活費×12ヵ月)=暮らせる年数
家計調査のデータをもとに、独身男性が暮らせる年数を計算してみましょう。
<暮らせる年数の計算>
5,000万円÷(17万5,166円×12ヵ月)=23.7年
(※小数点第2位以下は切り捨て)
上記の計算結果をもとに、次は現実的にリタイアできる年齢を計算してみます。厚生労働省の「令和4年簡易生命表(※)」によると、男性の平均寿命は81.05であるため、81歳としてシミュレーションを行います。
<現実的にリタイアできる年齢の計算>
平均寿命-資金5,000万円で暮らせる年数=現実的にリタイアできる年齢
81歳-23.7年=57.3歳
老齢基礎年金などの安定収入がないと仮定した場合、独身男性がリタイアできる年齢は57.3歳になりました。
(※)参考:厚生労働省「1 主な年齢の平均余命」
次に、同じ流れで独身女性のシミュレーションを行います。厚生労働省の令和4年簡易生命表によると、女性の平均寿命は87.09歳であるため、87歳として計算をしてみましょう。
<現実的にリタイアできる年齢の計算>
5,000万円÷(16万939円×12ヵ月)=25.8年(暮らせる年数)
87歳-25.8年=61.2歳(現実的にリタイアできる年齢)
(※小数点第2位以下は切り捨て) 安定収入がない場合、独身女性が現実的にリタイアできる年齢は61.2歳になりました。定年退職(65歳)までにはリタイアできる計算ですが、50代で退職をすると生活を切り詰めることになるかもしれません。
60歳~70歳でリタイアをすると、5,000万円の老後資金がある独身世帯は生活費をいくら使えるのでしょうか。以下では60歳・65歳・70歳の3パターンに分けて、平均寿命を想定した場合の生活をシミュレーションしました。
平均寿命を想定した場合、毎月使えるお金は以下の式で計算できます。
<1年間の生活費の計算>
老後資金÷(平均寿命-リタイアする年齢)=1年間の生活費
1年間に使える生活費÷12ヵ月=毎月の生活費
独身男性と独身女性に分けて、実際にシミュレーション(小数点以下は切り捨て、以下同様)をしてみます。
<独身男性のシミュレーション>
5,000万円÷(81歳-60歳)=238万952円(1年間の生活費)
238万952円÷12ヵ月=19万8,412円(毎月の生活費)
<独身女性のシミュレーション>
5,000万円÷(87歳-60歳)=185万1,851円(1年間の生活費)
185万1,851円÷12ヵ月=15万4,320円(毎月の生活費)
前述の家計調査のデータと比べると、男性は毎月2万円以上の余裕がある一方で、女性は毎月6,600円ほど不足する結果となりました。
次に、65歳で仕事を辞める場合のシミュレーション結果をご紹介します。
<独身男性のシミュレーション>
5,000万円÷(81歳-65歳)=312万5,000円(1年間の生活費)
312万5,000円÷12ヵ月=26万416円(毎月の生活費)
<独身女性のシミュレーション>
5,000万円÷(87歳-65歳)=227万2,727円(1年間の生活費)
227万2,727円÷12ヵ月=18万9,393円(毎月の生活費)
リタイアする年齢を65歳まで遅らせると、男性・女性のいずれも平均水準以上の生活を送れます。ただし、実際の支出は世帯ごとに異なるため、ライフスタイルや地域によっては生活を切り詰める必要があるかもしれません。
リタイアの年齢を70歳まで遅らせると、毎月どれくらいの生活費を使えるでしょうか。
<独身男性のシミュレーション>
5,000万円÷(81歳-70歳)=454万5,454円(1年間の生活費)
454万5,454円÷12ヵ月=37万8,787円(毎月の生活費)
<独身女性のシミュレーション>
5,000万円÷(87歳-70歳)=294万1,176円(1年間の生活費)
294万1,176円÷12ヵ月=24万5,098円(毎月の生活費)
家計調査のデータと比べると、男性は毎月約20万円、女性は約8万円の余裕があります。病気やけが、事故などのトラブルに見舞われない限りは、安定した生活を維持できると考えられます。
平均寿命まで暮らすことを想定した場合、独身世帯の老後資金は以下の式で計算できます。
<必要な老後資金の計算式>
(平均寿命-老後生活が始まる年齢)×1年間の生活費=必要な老後資金
また、老齢基礎年金を受給する場合は、その分だけ必要な老後資金を減らせます。老齢基礎年金を含めた計算式については、以下の通りです。
<必要な老後資金の計算式(老齢基礎年金を含む)>
(平均寿命-老後生活が始まる年齢)×(生活費-年金収入)=必要な老後資金
(※生活費と年金収入はいずれも1年間の金額)
厚生労働省年金局の資料(※)によると、厚生年金加入者の老齢基礎年金は平均で月14万4,982円、国民年金のみの場合は5万6,428円です。現時点で想定している退職時期や生活水準を踏まえて、必要になる老後資金を計算してみましょう。
(※)参考:厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
現時点で老後資金が不足していても、早めに対策をすれば安心して老後を迎えられる可能性があります。ここからは、老後資金が不足している独身世帯の主な対策をご紹介します。
国民年金や厚生年金に加入している人は、老齢基礎年金を含めた計画を立ててみましょう。例えば、独身男性が65歳に仕事を辞めて、毎月14万5,000円の年金収入を受け取る場合、必要な老後資金は以下のように計算できます。
<年金収入がない場合>
(平均寿命-老後生活が始まる年齢)×1年間の生活費=必要な老後資金
(81歳-65歳)×(17万5,166円×12ヵ月)=3,363万1,872円
<毎月14万5,000円の年金収入がある場合>
(平均寿命-老後生活が始まる年齢)×(生活費-年金収入)=必要な老後資金
(81歳-65歳)×({17万5,166円-14万5,000円}×12ヵ月)=579万1,872円
老齢基礎年金を含めても老後資金が不足する場合は、受給額を増やす方法がひとつの選択肢になります。
<老齢基礎年金の受給額を増やす方法>
・付加保険料を納付する
・60歳から65歳未満まで任意加入制度を利用する
・年金の繰下げ受給を利用する
実際に受給額がどれくらい増えるのかを調べた上で、ご自身に合った制度を活用しましょう。
退職時期を遅らせると、遅らせた分だけ必要な老後資金を減らせます。実際にどれくらい減るのか、以下では平均的な生活水準の独身男性を想定したシミュレーションを行います。
<60歳で仕事を辞める場合>
(平均寿命-老後生活が始まる年齢)×1年間の生活費=必要な老後資金
(81歳-60歳)×(17万5,166円×12ヵ月)=4,414万1,832円
<65歳まで月収20万円を稼ぐ場合>
4,414万1,832円-(年収×5年間)=必要な老後資金
4,414万1,832円-(20万円×12ヵ月×5年間)=3,214万1,832円
なお、上記は簡易的なシミュレーションであり、労働に伴って生じる費用や税金などは考慮していません。細かく計画を立てたい人は、手取り収入を基準としてシミュレーションを行いましょう。
日々の節約も、必要な老後資金を減らすことにつながります。仮に毎月の生活費を1万円減らすと、1年間では12万円、10年間では120万円を節約できます。
実践しやすい節約方法としては、優先順位が低いサービスの解約や、電気・ガス・通信の料金プランを見直す方法などがあります。一つひとつの金額は小さくても、数十年単位で続けると大きな効果を期待できるので、節約できる固定費・変動費を探してみましょう。
確定拠出年金とは、毎月拠出した掛金で金融商品を運用し、60歳以上になってから積み立てた資産を受け取れる年金制度です。企業が掛金を拠出するものは「企業型DC」、加入者個人が拠出するものは「iDeCo(イデコ)」と呼ばれています。
確定拠出年金には税制優遇の仕組みがあり、金融商品の運用益は全て非課税になります。また、個人で拠出した掛金や、将来受け取る一時金・年金にも各種控除が適用されます。
2022年には加入可能年齢が拡充されたため(※)、50代後半や60代から資産形成を始める場合の選択肢にもなります。
(※)企業型DCは70歳未満まで、iDeCoは65歳未満まで加入可能。
2024年1月から始まった新NISAは、非課税投資枠の範囲内で金融商品の運用益が非課税になる制度です。対象商品には上場株式や投資信託、ETFなどがあり、無期限で1,800万円までの金融商品を運用できます。
新NISAには資産の払出し制限がないため、生活資金が必要になったタイミングで金融商品を現金化できます。ただし、投資である以上は損失のリスクがあるため、情報収集や分析をした上で慎重に投資判断をしてください。
5,000万円の老後資金があると、独身世帯では25年ほど生活できることが予想されます。ただし、平均以上の生活水準であったり、想定外の支出が重なったりすると、リタイアをしてから生活資金が不足する可能性も考えられます。退職後に資産計画を修正することは難しいため、現時点で不安を抱えている独身世帯は、余裕のあるうちに対策を考えておきましょう。
※税務の詳細はお近くの税理士や公認会計士にご相談ください。
※本記事は資産運用に関わる基礎知識を解説することを目的としており、資産運用を推奨するものではありません。
※当記事は、2024年3月25日現在のものです。今後制度が変更になる場合もあります。
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