- 週間ランキング
一方、かなり弱いとみられるのが、輸出です。中国政府が公表する数量ベースの輸出の前年同月比での伸びをみると、2023年11月には12.0%にまで回復してきました。ただし、1年前の2022年11月の伸び率がコロナ問題を主因に-10.9%と低迷していました。これをふまえると、2023年11月の輸出は、コロナ禍の収束によって2021年11月の水準にほぼ戻っただけと言えます。ドルベースでの輸出は2023年12月分まで公表されていますが、2023年11月、12月の伸び率は、それぞれ、0.5%、2.3%に過ぎず、輸出が景気をけん引しているとは言えない状況です。
主要な分野中で最も弱いのは、引き続き不動産投資でした。インベスコの試算では、2023年12月における不動産投資の単月ベースでの前年同月比増加率は-24.0%と、リーマンショック以降において最低となりました(11月は-18.1%でした)。居住用不動産をはじめ、オフィスや商業用不動産への投資が全て大幅に落ち込みました(図表2)。
問題はそれだけにとどまりません。居住用不動産の販売床面積・着工床面積がともに下落し(図表3)、特に販売床面積は2008年12月以来の低水準となりました。マンションの販売が振るわないことで、住宅開発業者の資金繰りの問題がさらに深刻化する可能性が指摘できます。中国の不動産不況の問題については今後、当レポートにおいて別途分析をご紹介したいと思います。
ブルームバーグ社は1月16日の報道において、中国当局が新たに1兆元規模の特別国債の発行を検討していると伝えました。不動産不況が長引き、かつ、大きな問題となる中、景気の先行きについての不透明感が強まっています。昨日公表された12月分の主要統計を受けて、中国当局が財政政策の積極化によって短期的に景気刺激を試みる可能性が高まっていると判断できます。私は、こうした財政刺激策の実施は、中国経済を浮揚させるというよりも、中国経済が直面するダウンサイドリスクの抑制を念頭に置いたものになると考えています。その意味では、追加的な財政措置が講じられたとしても、現在の中国経済に対する投資家の目線が大きく変わるとは考えにくい状況です。)。
今年の中国景気が抱えるダウンサイドリスクとしては、①不動産不況の深刻化リスク、➁地方政府の「かくれ債務」問題を解決する過程で地方政府融資平台(LGFV)による投資活動が大きく減速するリスク―が重要であると考えられます。これらは相互に関連するリスクですが、LGFV問題(➁)については、債務返済が困難なLGFVの債務を地方政府自身の債務として認識し、地方政府が発行する債券の発行によって債務を肩代わりする措置が2023年秋から一部の地方で採用されつつあります。LGFVの債務再編の動きは、中国経済が直面する重要な問題を健全化させる動きとして評価できますが、その結果としてLGFVによる資金調達が遅延し、インフラ投資に悪影響を及ぼすリスクが存在しています。今後、3月の全国人民代表大会(全人代)のタイミングで公表されるとみられる2023年の財政政策やその他の政策対応に引き続き注目したいと思います。
木下 智夫
グローバル・マーケット・ ストラテジスト
ご利用上のご注意
当資料は情報提供を目的として、インベスコ・アセット・マネジメント株式会社(以下、「当社」)が当社グループの運用プロフェッショナルが日本語で作成したものあるいは、英文で作成した資料を抄訳し、要旨の追加などを含む編集を行ったものであり、法令に基づく開示書類でも金融商品取引契約の締結の勧誘資料でもありません。抄訳には正確を期していますが、必ずしも完全性を当社が保証するものではありません。また、抄訳において、原資料の趣旨を必ずしもすべて反映した内容になっていない場合があります。また、当資料は信頼できる情報に基づいて作成されたものですが、その情報の確実性あるいは完結性を表明するものではありません。当資料に記載されている内容は既に変更されている場合があり、また、予告なく変更される場合があります。当資料には将来の市場の見通し等に関する記述が含まれている場合がありますが、それらは資料作成時における作成者の見解であり、将来の動向や成果を保証するものではありません。また、当資料に示す見解は、インベスコの他の運用チームの見解と異なる場合があります。過去のパフォーマンスや動向は将来の収益や成果を保証するものではありません。当社の事前の承認なく、当資料の一部または全部を使用、複製、転用、配布等することを禁じます。
MC2024-008
The post 弱さが目立った10-12月期の中国経済 first appeared on Wealth Road.