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このFRB政策への懸念こそが、年央以降のグローバル金融市場における最も重要な懸念材料であったと言って過言ではありません。FRBが2024~2025年も高金利を継続してしまうのではという懸念が長期金利の上昇につながり、株価がグローバルに下落する事態を惹起しました。先進国だけではなく、新興国においても、対ドルでの通貨安と株価の下落が進行しました(図表2の左図)。
しかし、11月初めのFOMCがハト派的な利上げの休止を決め、その後の10月分米雇用統計とISMサービス業指数が景気減速を示唆するものになり、さらに今週に公表された10月分CPI統計がインフレの落ち着きを示すものになったことで、年央からの相場の「巻き戻し」が急速に進行してきました(図表2の右図)。11月の月初以降、ほぼ全ての主要通貨が対ドルで増価するとともに、主要株価指数が上昇に転じてきました。年央以降の通貨の下落率が大きければ大きいほど、11月初め以降の通貨の上昇率が大きく、また、年央以降の株価下落率が大きければ大きいほど、11月初め以降の株価上昇率が大きいという傾向がみられました。この傾向の重要な例外が日本と中国です。日本については、株価は「巻き戻し」てきたものの、日米の長期金利差がまだ高水準で乖離していることを受けて円の対ドルレートは若干の増価にとどまりました。一方、中国については、株価の年央からの下落率に比べ、11月初めからの戻りが非常に限定的でした。これは不動産不況や地政学的なリスクなど、中国の市場が直面する構造的な問題を反映している可能性が高いと考えられます。
ただ、11月月初からの相場の「巻き戻し」局面は、短期的には継続する可能性が高いものの、そのうち終了すると予想されます。米10年国債金利が10月中旬に5%に達したのはオーバーシュートであったと考えられ、それが金融市場にもたらしたドル高や株安などの影響が、米10年国債金利が再低下することで、逆方向への影響をもたらすのは自然なことでした。しかし、11月月初以降、過去2週間の金融市場が織り込んできたのは、米国景気の減速に伴うFRBのハト派化期待にほかなりません。グローバル株価がFRBのハト派化という好材料をある程度織り込んだ後は、景気減速に伴う企業業績への悪影響がより強く意識される形でグローバル株価が横ばい圏に入ると予想されます。他方、目先のリスクとして、米国の現行法による連邦予算措置が11月17日で切れることに伴って、18日以降に連邦政府が閉鎖され、米長期金利が上昇してしまうリスクは残っています。しかし、ジョンソン下院議長が主導して下院を通過させたつなぎ予算の法案が上院で審議されており、これが上院を通過すれば政府閉鎖は回避される見通しです。これにより、一部で懸念されていた米国国債の格下げリスクは低下したと考えられます。
木下 智夫
グローバル・マーケット・ ストラテジスト
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