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(本記事は、清水 克彦氏の著書『すごい!家計の自衛策』=株式会社小学館、2021年1月28日発行の中から一部を抜粋・編集しています)
私が担当してきた報道ワイド番組で年金問題を取り上げると、聴取者からは決ま って、「将来もらえる金額が減るのでは?」とか「年金制度そのものが破綻するんじ ゃない?」といったメールを頂戴します。確かに、年金は高齢者の収入60%以上を占め、高齢者の約半分が年金だけで 生活している現状です。これを考えると、年金の先行きは働き盛りの皆さんも気になるところでしょう。
年金積立金は、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)によって運用されてい ます。GPIFは、株式や債券などの資産を長期にわたって持ち続ける「長期運用」 によって、安定的な収益を得ることを目指しています。運用ですから損も出しますが、新型コロナウイルスの影響で積立金の運用がマイ ナスになっているのは、GPIFが運用している約170兆円から見ると3兆円あまりの部分だけです。現状では大きな問題にはなっていません。
ただ、新型コロナウイルスの感染拡大が数年にわたって終息しない場合は、運用収益が落ちますから影響が出る可能性はあります。
とはいえ、万一の場合は、国民に訴えられたくない政府が総力を挙げて支援しますし、
それ以前に、2020年9月から、高所得者を狙い撃ちし、月収63.5万 円以上の人は月額5490円(年間で6万円以上)も厚生年金保険料を引き上げたりしたため、制度自体が破綻することはありません。
それよりも落とし穴と言えるのが、女性の受給額です。日本社会では、女性が管理職になるケースはまだまだ少なく、役職手当をもらえ ず所得が低くなってしまうため、女性の受給額は男性より少なくなります。
したがって、夫が受け取るであろう年金受給額を2倍にするのではなく、妻はいくらもらえそうなのか調べておく必要があります。ただ、夫が65歳になって年金をもらい始めたとき、年下で扶養されている妻がいる場合は、夫の年金に「加給年金」というものが加算されます。これは、夫が年金生活に入ったときに支給される家族手当のようなもので、妻が65歳になり年金を受け取り始めたらもらえなくなってしまいます。最寄りの年金 事務所で確認しておくのがいいでしょう。
もうひとつ考慮しておくべきことは、何歳から年金を受け取ればいいかです。
年金は、基本的には65歳から受給できますが、希望すれば、60歳から70歳の間で好きなときにもらい始めることができます。安倍政権時代から進められてきた全世代型社会保障制度では、75歳から受け取るという選択肢も浮上していますが、ここでは、65歳の前から受け取る「繰り上げ受給」と、65歳よりあとに受け取る「繰り下げ受給」について留意しておくべき事項をまとめておきます。
【[繰り上げ受給】
・65歳より1か月早まるごとに0.5%減額される。
・60歳で受け取り始めると30%減額になる。
・疾病や負傷の際に支払われる障害基礎年金や、 夫を亡くした子どものいない妻が受け取れる寡婦年金、被保険者が死亡したとき支給される遺族年金が受け取れなくなる。
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