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私は、先進国の投資家が新興国・市場への証券投資を本格的に増加させるのは、FRBやECBなどの主要中央銀行による利下げが視野に入り、先進国景気の2024年後半における回復が株価に織り込まれ始めるとみられる2023年末ごろからとみています。しかし、足元では、新興国市場への投資を促進させる材料が出てきており、新興国・地域への先進国からの証券投資フローが循環的要因を背景として増加しはじめる可能性が高いとみています。具体的には、①景気の回復、➁インフレの低下に伴う新興国・地域での利上げの打ち止め―が重要です。①については、まず、直近において、グローバル経済の中での新興国・地域の役割が大きくなっていることを挙げたいと思います。図表2は、コロナ前からのグローバルGDPの動きをみたものですが、2020年のうちにコロナ禍から回復を始めた中国を別とすれば、2021年央までのグローバルな成長の主役は米国であり、中国を除く新興国・地域によるグローバル成長への寄与は限定的でした。しかし、2021年末ごろから中国以外のアジア新興国・地域での回復が軌道に乗り始め、直近では、中国を除くアジア地域の新興国・地域がグローバル経済の成長に対してより大きく貢献してきました。2023年についても、欧米での景気悪化が避けにくく、また中国景気の年後半における減速が見込まれる中でも、中国を除くアジア地域の主要新興国・地域では内需を軸とした景気の堅調さが見込まれており、グローバル経済の中でより重要な役割を果たすと見込まれます。
コロナ前からの実質GDPの動きを個別の新興国・地域についてみると、直近では、インド、インドネシア、フィリピン、ブラジルで景気の勢いが強くなっています(図表3)。これらは内需を軸とした成長を達成していて、世界的な在庫調整の中で向かい風に直面している輸出への依存度が比較的低い国々です。このうち、インド、インドネシア、フィリピンではインフレ率が目標に対して上振れていたことから、今年1-3月期までは中央銀行が利上げを続けていました。しかし、直近の消費者物価上昇率が、政府が目標とするレンジにまで低下してきており、4月以降は中央銀行が利上げを停止、今後についても利上げが見込まれていません(図表4)。これら3カ国については、今後も内需がけん引する形での景気の堅調さが見込まれます。特に、インドとインドネシアについては、①良好なファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)が継続する見通しであること、➁東アジア地域における地政学的なリスクが高まる中で対内直接投資の増加が見込まれること―から、海外からの証券投資が増加して株価上昇につながる可能性が高く、注目されます。
今後のグローバル金融市場のリスクとしては、金融不安やFRBの政策などによって金融環境が想定以上にタイト化し、米国景気が深刻なリセッションに陥るリスクが挙げられますが、米金利高騰局面にあった2022年でもこれらの2カ国の主要株価指数がやや上昇していたこと(図表1の左図をご参照ください)を踏まえると、このリスクが顕在化する場合でも、株価へのダメージは比較的抑制されたものになると考えられます。
木下 智夫
グローバル・マーケット・ ストラテジスト
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