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【2】金利が下がっている状況
円高や金利低下がどのように影響するのか、以下ではその仕組みを解説します。
ドルなどの外貨に対して円高が進むと、外貨建て資産を日本円に戻したときの資産額が目減りします。例えば、1ドル=130円のときに外貨建てMMFを10ドル分購入し、1ドル=120円になったときの資産額を計算してみましょう。
<計算式>
ドル円の為替レート×購入する外貨建てMMF=購入価格
※資産自体の価格変動や手数料は考慮しない。
<購入時の評価額>
130円×10ドル分=1,300円
<為替レート変動後の評価額>
120円×10ドル分=1,200円
仮に為替レートの変動後に外貨建てMMFを売却すると、100円の損失(1,300円-1,200円)が発生します。金融商品自体の価格が変動しなくても、円高が進むと円ベースでは損をすることが分かりました。
公社債などの短期証券に投資をする外貨建てMMFは、金利が下がると運用が難しくなり、繰り上げ償還の可能性が高まります。
繰り上げ償還とは、事前に定められている条件を満たしたファンドが、当初の運用期間を満了する前に償還されることです。繰り上げ償還が実施されると、その時点での保有資産が現金で返却されるため、運用状況によっては損をする場合があります。
実際に、2020年には新型コロナウイルスの影響を受けて、金利低下による外貨建てMMFの繰り上げ償還が発生しました。
以下の特徴に当てはまる人は、外貨建てMMFの取引に向いていない可能性があります。
<外貨建てMMFをおすすめしない人>
・元本割れのリスクを少しも抱えたくない
・為替レートの変動要因を把握していない
・繰り上げ償還のリスクをできるだけ抑えたい
前述の通り、外貨建てMMFは為替レートや金利の動向によって、資産価値が変動する金融商品です。運用状況によっては繰り上げ償還のリスクもあるので、元本割れや価格変動のリスクを抑えたい人には向かないかもしれません。
また、買い時や売り時を判断するときには、海外の経済動向などを調べる必要があります。情報収集や分析に慣れていない人は、手間や難しさを感じると思います。
どのような投資スタイルや目的であれば、外貨建てMMFが選択肢に含まれるのでしょうか。次は、外貨建てMMFの活用を検討してもいい人の特徴を紹介します。
<外貨建てMMFの活用を検討してもいい人>
・ある程度の損失リスクは許容できる
・日本円ではなく、外貨建ての資産で中長期の運用がしたい
・為替レートの変動要因を把握している
・海外の経済動向に興味や関心がある
前述では外貨建てMMFをおすすめしない状況を解説しましたが、経済動向によっては外貨建て資産のほうが有利になることもあります。仮に円安や金利上昇の局面になると、円高や金利低下とは逆の現象が起こるので、その分のリターンを期待できるかもしれません。
そのため、外貨建て資産で運用をしたい人、為替レートや金利動向に詳しい人は、外貨建てMMFが一つの選択肢になる可能性があります。
外貨建てMMFのメリットとしては、次の4つが挙げられます。
【1】利回りが高い
【2】少額投資ができる
【3】いつでも解約できる
【4】株式や投資信託と損益通算ができる
ここからは、各メリットについて詳しく解説します。
2023年12月21日時点での外貨建てMMFの年率換算利回りは、以下のとおりです。
銘柄名 | 通貨の種類 | 年利換算利回り(税引前) |
---|---|---|
ブラックロック・スーパー・マネー・マーケト・ファンド | 米ドル | 4.9070% |
ニッコウ・マネー・マーケット・ファンド | 米ドル | 4.7810% |
ノムラ・グローバル・セレクト・トラスト | 米ドル | 4.8000% |
ゴールドマン・サックス | 米ドル | 4.8970% |
ホライズン・トラスト | 南アフリカランド | 7.2210% |
トルコ・リラ・マネー・マーケットファンド | トルコリラ | 30.737% |
(参考:SBI証券「投信・外貨建MMF|SBI証券」)
金融機関や時期によってやや異なりますが、外貨建てMMFでは年率4%以上の利回りを期待できます。仮に100万円分を保有した場合は、1年間で4万円以上のリターンを狙える計算です。
ただし、外貨建てMMFは金利状況や為替レートの影響を受けるため、必ずしも利益が出る金融商品ではありません。数日で利回りが変わることもあるので、短期間のデータだけで判断しないようにしましょう。
一般的な外貨建てMMFは、数千円の資金があれば取引できます。実際に最低投資金額がどれくらいなのか、大手ネット証券のサービス例を紹介しましょう。
<外貨建てMMFの最低投資金額>
A社:円貨決済では5,000円から、外貨決済では10ドルから購入可能。
B社:円貨決済では1,000円から、外貨決済では1,000円相当から購入可能
C社:円貨決済では1万円から、外貨決済では100ドルから購入可能。
D社:決済方法に限らず、1万円以上1円単位で購入可能。
E社:決済方法に限らず、10外貨単位から購入可能
円貨決済とは、日本円のままで外貨建て商品を購入できるサービスです。一方で、資産を米ドルなどに換えてから金融商品を購入するサービスは外貨決済と呼ばれています。
主なメリット | 主なデメリット | |
---|---|---|
円貨決済 | ・外貨に換える手間がかからない ・スムーズに外貨建てMMFを購入できる | ・取引ごとに為替手数料がかかる ・適用レートの確定に時間がかかる |
外貨決済 | ・取引ごとの手数料を節約できる ・手持ちの資産を分散できる | ・外貨に換える手間がかかる ・資金管理がやや複雑になる |
最低投資金額が1万円の証券会社もありますが、1,000円程度から外貨建てMMFを取引できるケースは少なくありません。また、1円単位で取引できる証券会社もあるので、資金に合わせて取引数量を細かく調整することも可能です。
外貨建てMMFには決められた預入期間がありません。営業日の取引時間内であれば、自由なタイミングで購入・解約の申し込みができます。
実際にどのような注文システムになっているのか、以下では一例を紹介しましょう。
<外貨建てMMFの注文システムの例>
注文受付:24時間(※メンテナンスは除く)
注文締切:米ドルは当日15時まで、それ以外は当日12時まで
為替レートの提示:米ドルは14時20分~15時00分、それ以外は11時20分~12時00分
なお、メンテナンスや注文締切などの時間は、利用する証券会社によって異なります。前述の最低投資金額も変わってくるので、各社のサービス詳細は事前に確認しておきましょう。
2016年1月の法改正によって、外貨建てMMFの利益は申告分離課税となりました。そのため、特定口座で取引をする場合は、株式や投資信託との損益通算が認められます。
<損益通算とは>
同一年内(1月~12月)に取引した金融商品の損益を通算することです。例えば、株式投資で50万円の利益、外貨建てMMFで10万円の損失が出た場合は、以下のように損益が計算されます。
1年間の利益-1年間の損失=課税対象になる金額
50万円-10万円=40万円
もし損失額のほうが大きく、上記の計算結果がマイナスになる場合は、その損失分を3年間繰り越すことができます(※毎年の確定申告が必要)。
損益通算を利用すると、1年間の利益と損失を相殺できるので、その年の税負担を抑えられます。
次に、外貨建てMMFのデメリットを見てみましょう。
【1】国内は商品数が少ない
【2】元本保証がない
【3】為替差益が非課税ではなくなった
具体的にどのようなデメリットなのか、以下で詳しく解説をします。
国内の証券会社を利用する場合、取引できる外貨建てMMFは4~6銘柄です。代表的な金融商品よりどれくらい少ないのか、おおよその銘柄数を比較してみましょう。
金融商品の種類 | 商品数の目安(国内の証券会社) |
---|---|
外貨建てMMF | 4~6銘柄 |
国内株式 | 3,800銘柄(※東京証券取引所のみ) |
米国株式 | 4,000~5,000銘柄 |
通常の投資信託 | 1,500~2,600銘柄 |
海外ETF | 300~400銘柄 |
債券 | 100銘柄 |
FX | 20~28通貨ペア |
(※2023年5月時点)
投資先を外貨建てMMFに限定すると、どうしても選択肢が少なくなります。さまざまな地域や資産に投資をしたい人は、その他の金融商品と組み合わせることも考えましょう。
元本保証とは、金融商品の購入資金が減らない保証のことです。例えば、国内の普通預金や定期預金では、仮に銀行が破たんしても1,000万円までの元本が保証されます。
外貨建てMMFには元本保証がありません。もし購入した銘柄が下落したり、為替レートが円高に振れたりすると、損失が生じてしまうこともあります。
前述の利回りについても、時期によってはマイナスになる可能性があるので注意してください。
為替差益とは、為替レートの変動によって生じた利益のことです。例えば、1ドル=100円のときに外貨建て商品を1口購入し、1ドル=110円になってから売却した場合は、10円(110円-100円)の為替差益を受け取れます。
外貨建てMMFの為替差益は、2015年12月31日まで非課税として扱われていました。しかし、2016年からは公社債や公社債投資信託の課税方式が上場株式などと同様になったことで、20.315%の税金が課される形になっています。
外貨建てMMFには元本保証がないため、損失のリスクを事前に理解しておく必要があります。主なリスクは、以下の通りです。
【1】為替変動リスク
【2】価格変動リスク
【3】金利変動リスク
【4】償還リスク
具体的にどのようなリスクなのか、一つずつ確認していきましょう。
為替変動リスクとは、為替レートの変動によって損失が出るリスクです。実際にどれくらいの損益が想定されるのか、1ドル=100円のときに1口10ドルの外貨建てMMFを購入したとして、簡単にシミュレーションをしてみましょう。
売却時の1ドルの価格 | 1口の売却価格 | 為替変動による損益 |
---|---|---|
70円 | 700円 | -300円 |
80円 | 800円 | -200円 |
90円 | 900円 | -100円 |
100円 | 1,000円 | 0円 |
110円 | 1,100円 | +100円 |
120円 | 1,200円 | +200円 |
130円 | 1,300円 | +300円 |
(※手数料等は考慮しない。)
為替レートが円安方向に進むと利益になりますが、円高方向に進んだ場合は損失が生じます。この損失は取引数量に応じて大きくなり、もし同じ銘柄を100口購入して1ドル=70円のときに売却する場合は、3万円の損失が出る計算です。
つまり、為替レートの状況によっては、運用状況が良好でも損失が膨らむかもしれません。外貨建て商品を取引する際には、金融商品自体のパフォーマンスだけではなく、為替レートも注視することが大切です。
価格変動リスクとは、金融商品自体の価値が変動するリスクです。外貨建てMMFの投資対象は格付の高い公社債ですが、銘柄によっては元本割れを起こすこともあります。
例として、以下では米ドル建てMMFの投資対象になり得る「米国債券1年」の利回りを紹介しましょう。
時期 | 米国債券1年の利回り |
---|---|
2014年 | 0.09% |
2015年 | 0.14% |
2016年 | 0.44% |
2017年 | 0.76% |
2018年 | 1.92% |
2019年 | 2.56% |
2020年 | 1.52% |
2021年 | 0.08% |
2022年 | 0.85% |
2023年 | 4.69% |
(※利回りは各年初頭のおおよその値。)
(参考:Investing.com「アメリカ 1年 | アメリカ 1年 債券利回り」)
マイナスにはなっていませんが、米国政府が運用する債券でも利回りは変動していることが分かります。投資先の債券でほとんど利益が出ない場合は、手数料でマイナス運用になるかもしれません。
そのため、取引の前にはポートフォリオ(投資先)をチェックし、外貨建てMMF自体のパフォーマンスも確認しましょう。
外貨建てMMFの価格は、世の中の金利動向にも左右されます。
例えば、年3.0%の債券を購入した後に、その債券の金利が年4.0%に上昇したとします。このとき、世の中の投資家は年4.0%の債券を購入するため、需要が減ることで年3.0%の債券は下落します。
このように、債券と金利は密接に関わっており、シーソーのように反対の動きをする特徴があります。
償還とは、投資信託の運用が終了することです。一般的な投資信託では、あらかじめ設定された償還日を迎えるか、目論見書に記載された条件を満たしたときに償還が行われます。
このうち、当初の想定よりも早く実施されるものは「繰上償還」と呼ばれており、基本的には以下のようなケースで行われます。
<繰上償還が行われるケースの例>
・基準価額や純資産額が基準を下回った
・想定していたよりも購入口数が少なかった
・運用会社にやむを得ないトラブルが発生した
繰上償還が決まると、保有している外貨建てMMFを解約することになるため、タイミング次第では損失が生じます。譲渡益が生じた場合であっても、金額によっては税金を負担しなければなりません。つまり、人によっては投資計画の修正やポートフォリオの組み直しが必要になります。
実際に、2020年~2021年にかけては外貨建てMMFの繰上償還が相次いだため、珍しいことではないと理解しておきましょう。
外貨建てMMFのリスクを抑えるには、どのような方法で銘柄を選べば良いのでしょうか。ここからは、外貨建てMMFを選ぶ際の注意点を紹介します。
月次レポートとは、直近数年間の利回りやポートフォリオなどを確認できる資料です。外貨建てMMFの運用会社が毎月作成しており、各銘柄を取り扱う証券会社などで公開されています。
銘柄によって記載内容はやや異なりますが、確認できる情報の例を紹介しましょう。
<外貨建てMMFの月次レポートから分かること>
・レポート作成時点での基準価額や純資産額
・直近数ヵ月や数年間の騰落率(パフォーマンス)
・7日間平均利回りの推移
・組入れ上位銘柄などのポートフォリオ
・投資先の格付分布
・関連する金融商品や為替レートの推移
・主なリスクの種類と内容
月次レポートで確認しておきたいのは、その銘柄のパフォーマンスやマーケットの変化です。数ヵ月分のレポートを読み、状況がどのように変化したのかを見極めれば、購入・売却するかどうかの判断材料になります。
また、運用会社や担当者が記載しているコメントからも、関連するマーケットなどの変化を読み取れます。ファンドの方針が記載されていることもあるので、月次レポートはできるだけ細部まで確認しましょう。
前述の通り、外貨建てMMFのリターンには為替レートも影響します。為替差益だけで損益が膨らむこともあるので、外貨ごとの為替相場はこまめに確認してください。
国内で取引できる外貨建てMMFには、米ドル建ての銘柄の他、南アフリカランドやトルコリラ建てのものがあります。
外貨建てMMFを選ぶときに、直近の利回りは重要な判断材料になります。利回りが高いほど大きなリターンを期待できますが、あまりにも高利回りの銘柄は避けるようにしましょう。
投資のリスクとリターンは比例する性質があり、大きな利益を狙うほど抱えるリスクは増大します。実際に、利回りが高い外貨建てMMFは公社債や通貨の信用性が低いため、元本割れになる可能性が高まります。
特に新興国通貨(南アフリカランドやトルコリラ)で取引する銘柄は、利回りが不安定な傾向にあります。国内で値動きが安定した銘柄を探している人は、米ドル建ての商品から検討してみましょう。
外貨建てMMFは、金利状況や為替レート次第で高利回りを期待できる金融商品です。2016年からは為替差益も課税対象になりましたが、国内の金融商品とは異なる魅力があります。
ただし、安定した公社債で運用されている銘柄でも、運用状況によっては損失が出てしまいます。複数あるリスクを理解した上で、投資のタイミングやポートフォリオに入れることを考えてみましょう。
※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません。
The post 外貨建てMMFをおすすめしない状況2選!メリットとデメリットを解説 first appeared on Wealth Road.