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第1は、ドル安の進展です。 金融市場では、追加関税による米国景気の悪化やFRBの利下げについての織り込みが進展したことで、世界的なドル安の動きが加速し、新興国通貨に増価圧力がかかりました。
第2は、トランプ政権の通商交渉に対する姿勢が柔軟化したという認識が広がった点です。5月12日に締結された米中間の暫定合意や米国と一部の新興国間のディールを巡る通商交渉が進展しているというニュースが、トランプ政権の政策による新興国景気へのダメージを和らげるとの期待感を強めました。
第3は、新興国の通貨高・株高が進行したことで、投資家の新興国市場向け投資に対するリスク許容度が上昇したとみられる点です。これにより、グローバル市場において、投資家が新興国向けの株式投資により積極的になったと考えられます。米国の投資家はドル安の動きの中で新興国投資により積極的となったとみられます。また、その動きを見たユーロ圏やその他欧州の投資家も、自国の政策金利が引き下げられる中で、従前よりも積極的にリスクを取って新興国株式への投資を進めたとみられます。
第4は、第2期トランプ政権誕生後にグローバル株式市場における米国一極集中の動きが後退した点です。米国以外の株式投資家は、2024年末までは、米国一極集中の動きに追随することによって比較的大きなリターンを享受することができましたが、トランプ政権による様々な政策によって投資家の米国資産への信頼度が低下したことで、新興国への投資比率を引き上げる動きにつながりつつあると考えられます。当レポートの先週号でふれたように、私は、米国資産を再評価する動きが2025年10-12月期ごろに強まるまでは、欧州や日本と並んで、新興国への投資フローが一時的に増加する公算が大きいと考えており、新興国株式市場への追い風になると予想しています。
第5は、インフレ率の落ち着きやドル安により、新興国の中央銀行が金融緩和を積極的に推進する可能性が強まったことです。非常に高水準のインフレが続くトルコや高めのインフレ率が続くブラジルでは足元で利上げの実施を余儀なくされているものの、その他の主要新興国・地域では2024年後半から利下げサイクルに入り、2025年に入ってからもそれが続いています(図表3)。2025年後半も利下げの動きが継続し、株式市場には追い風になると見込まれます。先に挙げたトルコとブラジルを除けば、インフレ目標を設定して中央銀行が金融政策運営を行っている主要新興国の全てにおいて、足元でのインフレ率が中央銀行の目標レンジ内にあります(図表4)。トランプ政権の追加関税策がもたらす悪影響により、新興国は4-6月期から今年末にかけて、一時的な景気減速局面に入ると見込まれます。この点は株価にはマイナス材料になるものの、その悪影響は既に株価におおむね織り込まれていると考えられるうえ、多くの国では今後の金融・財政両面からの政策対応によってその悪影響が緩和されると見込まれます。
今後の新興国株式市場のパフォーマンスは、トランプ政権の追加関税政策や新興国各国とのディールの進捗に大きく左右されると見込まれます。それでも、今後数カ月の間は先進国からの新興国への資金フローは比較的強めになるとみられ、株式市場における前向きの動きが見込まれます。もっとも、新興国・地域への証券投資は、時間の経過とともにより選別的になると見込まれます。具体的には、米国の追加関税策をはじめとする外部ショックへの脆弱性や金融・財政政策の対応の柔軟性、中国からの製造拠点のシフト状況などに左右されるとみられます。
アジア地域の新興国の中では、私が最も注目しているのはインド株市場です。また、インドネシア株市場についても注目に値すると考えています。これら2か国では、潜在成長率の水準が比較的高く、株式市場が中期的な成長の恩恵を受けやすいとみられる他、米中間の貿易面での緊張関係の高まりによって対内直接投資の増加が見込まれます。また、昨年の後半から大きく下落した株価がまだピークの水準にもどっておらず、今後、両国への株式投資は、株価のリバウンドによる恩恵を享受しやすいと考えられます。
木下 智夫
グローバル・マーケット・ ストラテジスト
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