本研究では、カルサーヴィンの主著『人格について』(1929)に見出されるフョードロフ思想の受容およびこれに対する批判に基づいて、両者の思想を比較考察しました。その結果、両者は共通して「死の根源的な克服」という目標を掲げながらも、キリストの死と復活をどう理解するかにおいて思想的な相違があったことが明確になりました。本研究成果は7月17日に国際学術誌Studies in East European Thought(オンライン版)に公開されました。
この論文は、2024年3月にヴィリニュス(リトアニア)で開催された国際学会「レフ・カルサーヴィン:リトアニアにおけるロシア人哲学者の道」での発表内容を大幅に修正・補足し、Studies in East European Thought誌の特別号に投稿したものです。カルサーヴィンは、私の師である安岡治子東京大学名誉教授が注目していた思想家でしたが、私自身はこの学会をきっかけに初めて取り組むことになりました。本研究がカルサーヴィンやフョードロフのような素晴らしい哲学者が世界の哲学研究の中で認められてゆくための一助となることを願っています。