ASD者は、他者の顔や身体から感情や意図を読み取るのが難しいことが知られています。この困難は視覚情報の処理やコミュニケーション上の課題と関連すると考えられてきました。さらに、これまでの脳画像研究では、ASD者は「身体の部位」に反応する脳領域である外側側頭後部皮質(Extrastriate Body Area:EBA)や「顔」に反応する紡錘状顔領域(Fusiform Face Area:FFA)の活動が、TD者と比べて弱いという報告が多数あります。とくに模倣されるなど、社会的インタラクションが求められる場面では、これらの領域の活動に差があることが示されています。しかし、身体の「見え方」、すなわち視覚的に身体の部位をどのように区別しているのかについてはこれまで十分に検証されていませんでした。そのため、ASD者のコミュニケーションの難しさが視覚処理に起因するのか、それとも高次の情報処理にあるのかわかっていませんでした。
論文名:Visual Body Part Representation of the Lateral Occipitotemporal Cortex in Individuals with Autism Spectrum Disorder: A Univariate and Multivariate fMRI Study