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国立大学法人福井大学
広報センター
著書『子どものトラウマ治療〜傷ついた脳を回復する〜』
虐待、DV、ネグレクト、いじめ、過度な体罰──。これらの体験は、子どもの脳に「トラウマ」として深く刻まれます。
福井大学 子どものこころの発達研究センターでは、トラウマを抱えた子どもたちに早期の医療的介入を行い、子どもと養育者への臨床支援と、MRIなどの脳画像解析を組み合わせながら、トラウマから脳が“癒える過程”を明らかにしてきました。さらに、現場で実践されている治療法をもとに、トラウマ治療に関する簡易技法を開発してきました。
本書は、子どもが発するサインを的確に捉え、その回復に寄り添った支援や治療の重要性を問いかけます。トラウマに向き合う際には「正しい理解」が欠かせません。理解が不足していると、誤解や偏見を生み出し、トラウマを抱える子どもやその家族が社会から孤立してしまう恐れがあります。だからこそ、私たち一人ひとりが子どもの心の痛みに目を向け、理解を深め、支え合う姿勢を持つことが大切です。親世代から子世代、さらに孫世代へと繰り返されがちなマルトリートメント(不適切な養育)やいじめによる“トラウマの連鎖”を断ち切るための重要な一歩となります。
医療・教育・福祉の現場で子どもと関わるすべての方々、そして全ての大人にぜひ手に取っていただきたい一冊です。
■編集者メッセージ
子どものトラウマ治療は、子どもたちが再び安心して自己を表現できる環境を取り戻し、家族や社会の中でつながりを実感できる状態を目指すものです。治療や支援の道のりは時に困難を伴うこともありますが、その先には、希望があります。私たちは、この希望こそが共に目指すべきゴールであると信じています。
──福井大学子どものこころの発達研究センター 教授 友田 明美
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202506200922-O2-8N11v437】
執筆者一覧(下線は本学関係者)
はじめに ~子どものトラウマ治療のいま~ 杉山登志郎
第1章 いわゆる子どものトラウマとは何か?
A 傷ついた脳も回復する─マルトリとトラウマの関係と支援─ 友田明美
B 神経発達症(発達障害)とトラウマとの関係 水野賀史
C いじめの影響は深刻で,長期にわたっている 和久田 学
D 社会の価値感が生む教育虐待 武田信子
E トラウマとPTSDの違い 倉田佐和
F マルトリの生物学
1 エピジェネティクス 藤澤隆史
2 脳機能画像 マルトリによる脳の変化 滝口慎一郎
3 脳形態画像 マルトリによる脳の変化 牧田 快
第2章 マルトリの臨床的アセスメント
A マルトリによって起こる多彩な症状─子どもの場合─ 藤澤玲子
B マルトリによって起こる多彩な症状─大人の場合─ 若山和樹
C 複雑性PTSDの診断 鈴木 太
D 臨床に役に立つアセスメント,心理テストの活用法 篠崎志美
第3章 子どものトラウマにおける治療と最新情報を知る
A 治療総論 杉山登志郎
B インターネット認知行動療法 濱谷沙世
C TF-CBT(トラウマフォーカスト認知行動療法) 石島洋輔
D TSプロトコール 杉山登志郎
E 自我状態療法 杉山登志郎
F TFT(思考場療法) 森川綾女
G ホログラフィートーク 嶺 輝子
H 入院による治療 古橋功一
I 子どものトラウマに対するナラティブ・プレイセラピー 水島 栄
第4章 共同子育てという視点
A 施設養育のいま 明石秀美
B ペアレント・トレーニングによる子どもの実行機能改善 矢尾明子
C 子どもたちへの社会的スキル促進のための介入 山本知加
おわりに 友田明美
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202506200922-O1-629iCO1J】