英国における健康経営の歴史は? ヴィジョン・エンジニアリングの創業本社がある英国では、1940年頃から人間工学の研究が始まり、1949年には世界で初めてエルゴノミクスに特化した専門家組織 Ergonomics Research Society (ERS)が誕生しました。その後、有名なローベンス報告を踏まえて、1974年に労働健康安全法が制定され、行政組織 Health and Safety Commission(健康安全委員会、HSC)及びその執行機関 Health and Safety Executive(健康安全庁、HSE)が発足したことで、合理的に実行可能な限りにおいて、安全であり健康への危険のない機械設備などに対する機運が高まりました。なお、HSEは現在、より具体的に、業務による肩コリなどの「筋骨格系障害(MSD)の発生及び悪化リスクから就業者を護ること」を事業者に課しています。
エルゴノミック設計に切り替えるメリットは? 日本においても、厚生労働省が定めた「上肢障害の労災認定」の基準に、顕微鏡やルーペを使った検査作業(頸部、肩の動きが少なく姿勢が拘束される作業の例)が指摘されています。そのため、人間工学に基づいて設計されたアイピースレス顕微鏡などの検査機器・装置の導入による健康経営の推進が重要だと言えますし、導入や切り替えによって直接的な製品不良や見落としとそれによる再検査と行った目に見えるコストだけでなく、筋骨格系障害による生産性の低下や欠勤・休職といった目に見えないコスト(Cost Of Poor Quality、COPQ)の削減につながります。また、製造業を初めとした各業界のサプライチェーンが国境を越えて複雑化する中、英国のような水準で労働者の健康に対する配慮義務がある場合、完成品メーカーの責任がやがて議論される可能性があることは、既にフェアトレードやカーボンプライシングの前例から示唆されています。機器や装置を切り替える初期コストは高くても、中長期的な視点では投資に見合った効果があると言えるのではないでしょうか。