調理やアウトドアで便利なガスバーナー(いわゆる「ガストーチ」)ですが、粗悪な製品(主に海外製)での事故が多く発生しています。このような事故を防ぐため、2025年2月6日から新たにガストーチが「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律」の規制対象となりました。しかし、すでに購入済みの製品や、1年間の経過措置期間中に流通している製品の中には、安全性が劣っているおそれのある製品も存在していることから、引き続き事故の発生が懸念されます。独立行政法人製品評価技術基盤機構[NITE(ナイト)、理事長:長谷川 史彦、本所:東京都渋谷区西原]はガストーチの安全な使用方法について注意喚起を行います。

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 NITEに通知があった製品事故情報(※1)では、2019年度から2023年度までの5年間にガストーチの事故(※2)は129件ありました。そのうち、製品の不具合が関係する事故が7割(調査中の案件を除く)となっており、特に海外製のガストーチで製品不具合による事故が多く発生しています。
 手軽に使うことができ便利なガストーチですが、やけどを負ったり火災になったりする危険性がありますので、「購入時」及び「使用時」の気を付けるポイントを確認し、事故を未然に防ぎましょう。

 ◤ ガストーチ<購入時>の気を付けるポイント ◢
●PSLPGマークの表示があるか確認する。
(経過措置期間:2025年2月6日~2026年2月5日はマークがない製品の販売も認められています。)
●信頼できるメーカー・販売元かどうか確認する。
(国内の連絡先が明記されているか、装着するカセットボンベ等が指定されているか、理解できる取扱説明書があるかなど)

  ◤ ガストーチ<使用時>の気を付けるポイント ◢
●カセットボンベ等に装着する前に製品の点検を行い、装着後に異音や異臭などの異常がないか確認する。
●点火はカセットボンベ等を立てた状態で行う。
 大きく傾けて異常燃焼が生じた場合、直ちに立てた状態に戻す。

 
(※) 本文中の全ての画像は再現イメージであり、実際の事故とは関係ありません。
(※1)消費生活用製品安全法に基づき報告された重大製品事故に加え、事故情報収集制度により収集された非重大製品事故を含みます。
(※2)ガストーチが取り付けられたカセットボンベ(CB缶)やアウトドアボンベ(OD缶)で発生した事故も含みます。

 

事故の発生状況
 NITEが受け付けた製品事故情報のうち、2019年度から2023年度までの5年間に発生したガストーチの事故129件について、事故発生状況を以下に示します。

年度別の事故発生件数
 ガストーチの事故129件について、年度別の事故発生件数を図1に示します。5年間でリコール製品(※3)での事故も26件発生しており、全体の2割を占めています。そのうち、15件はリコールが開始された後に発生しており、お使いの製品がリコール対象となっていないか確認することが大切です。

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(※3)事業者が消費生活用製品による事故の発生及び拡大の可能性を最小限にすることを目的に行う、製品の回収、交換、点検、修理、注意喚起などのことをリコールと呼びます。本文では、経済産業省またはNITEで公表しているリコールの対象製品に限ります。

 
事故の被害状況
 ガストーチの事故129件における被害状況別の事故件数を表1に示します。事故の9割以上が火災事故になっており、やけどや周囲の物品が焼損するといった被害が多く発生しています。

表1 被害状況別の事故件数(※4)
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202502254667-O5-B4K3wRNn
(※4)()は被害者数、[]は火災件数。物的被害(製品破損または拡大被害)があった場合でも人的被害のあったものは、人的被害に区分している。また、人的被害(死亡・重傷・軽傷)が複数同時に発生している場合は、最も重篤な分類で事故件数をカウントし、重複カウントはしていません。
(※5)製品本体のみの被害(製品破損)にとどまらず、周囲の製品や建物などにも被害を及ぼすこと。

 
原因別の事故発生件数
 調査中の案件20件を除いた109件の事故について、原因別の事故発生件数を図2に示します。「製品に起因する」、「製品起因だが詳細原因は不明」といった製品の不具合が関係する事故が7割を占めています。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202502254667-O9-aFMJ7JeQ

「製品の不具合が関係する事故」の事象別の事故発生件数
 「製品に起因する」、「製品起因だが詳細原因は不明」といった製品の不具合が関係する事故に該当する76件について、事象別年度別の件数を表2に示します。これらの事故は、設計不良、製造不良、品質管理不足等といったことが要因となっています。特に、O(オー)リング(※6)の不具合によってガス漏れが生じ、引火したことによる事故が多数発生しています。

表2 「製品の不具合が関係する事故」の事象別の事故発生件数
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202502254667-O4-kw1F7M5j
(※6)ガス機器の燃料供給接続部分に使用される断面が円形の環型をした燃料漏れ防止用ゴムパッキン。

 
「製品の不具合が関係する事故」の製品購入先別の事故発生件数
 「製品に起因する」、「製品起因だが詳細原因は不明」といった製品の不具合が関係する事故に該当する76件について、製品の購入先及び製造・輸入事業者が判明したか否かの件数を表3に示します。インターネットで購入した製品による事故が多く、特に販売元が海外であった等により製造・輸入事業者が特定できなかった「事業者不明」の事故が多くなっています。

表3 「製品の不具合が関係する事故」の製品購入先別の事故発生件数
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202502254667-O3-l0okjeey

「製品の不具合が関係する事故」の生産地別の事故発生件数
 「製品に起因する」、「製品起因だが詳細原因は不明」といった製品の不具合が関係する事故に該当する76件について、製品の生産地別の件数を表4に示します。海外製のガストーチでの事故が目立っています。また、不明となっているのは、「事業者不明」のため生産地の詳細が確認できなかったものですが、その多くは事故が発生している海外製のガストーチと類似した製品でした。

表4 「製品の不具合が関係する事故」の生産地別の事故発生件数
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202502254667-O2-ZDlo1zOY

 
<購入時>に気を付けるポイント
PSLPGマークの表示があるか確認する。
 2025年2月6日から、国の定める安全に関する基準を満たしていることを第三者である登録検査機関(※7)が確認等したガストーチには、「◇(菱形)PSLPGマーク」が表示されることになりました。この基準の中で、ガス漏れが生じないかの気密性、高温や使用回数に耐えうるかの耐久性などが求められています。
 1年間(2025年2月6日~2026年2月5日)の経過措置が設けられていますが、2026年2月6日以降はマークが表示されていない製品の販売が禁止されます。PSLPGマークの近くに、製造・輸入事業者名と国に登録された検査機関名(略称や登録商標の場合もあります)が表示されているかもご確認ください。

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 なお、経過措置期間中は、PSLPGマークの表示がない(技術基準に合致しない)製品の販売も認められていますが、できるだけPSLPGマークまたはJIA認証(※8)マークが表示された製品の購入を推奨します。もし、これらのマークがない製品を購入する場合は、次のポイントを特に注意してください。
(※7)2025年2月6日に、ガストーチの登録検査機関として、一般財団法人日本ガス機器検査協会(JIA)が登録されました。
(※8)JIA独自の検査基準に基づいた認証制度。ガストーチによる事故の実態を踏まえ、業界団体では2020年11月にJIA認証(自主基準)を策定し、安全を担保する取り組みを開始していました。この基準に適合した製品にはJIAマークが表示されています。

 
信頼できるメーカー・販売元かどうか確認する。
 製品を選ぶ際には、以下の点をご確認ください。
 ・国内の連絡先が明記されているか
 ・装着するカセットボンベ等が指定されているか
 ・使い方が理解できる取扱説明書があるか
 製品の不具合が関係する事故の約半数が、製造・輸入事業者が不明です。特にインターネットでの購入では、事業者に問い合わせようとしても連絡先が不明な場合があります。品質管理や購入者への対応をしっかり行う事業者は、製品に責任を持つ者としてその名称や連絡先を明確にしているはずです。
 また、通常は、メーカーにおいて、ガストーチと指定のカセットボンベ等を装着した状態で安全に使用できるか考慮され、設計や品質管理が行われています。装着するカセットボンベ等が指定されていないガストーチは、そのような確認がされていないおそれがあります。
 その他、商品説明文などで日本語表記がおかしいもの、日本語の取扱説明書がないもの、他の製品と比較して極端に安価なものも注意が必要です。

 

<使用時>に気を付けるポイント
カセットボンベ等に装着する前に製品の点検を行い、装着後に異音や異臭などの異常がないか確認する。
 事故の原因の多くはガス漏れによるものです。中には、使用前に異変に気付きながらも使ってしまい、事故につながってしまっている事例もあります。使用する前に以下のとおり必ず点検を行い、ガス漏れが生じていないか確認してください。
 ①カセットボンベ等を装着する前に、接続部やバーナー部に異物が付着していないかを確認。

 ②火の元から離れた場所でカセットボンベ等を装着し、ボンベがガストーチに確実に固定されていることを確認。
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 ③ガスの漏れる音(「シュー」という異音)やガスの臭い(異臭)がしないかを確認。
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 装着後に異音や異臭などがある場合、ガスが漏れているおそれがあります。直ちに使用を中止してください。
 なお、ガストーチ及び接続するカセットボンベ等は、それぞれの製品の取扱説明書や本体表示に記載されている注意事項を確認し、指定された製品同士の組み合わせで使用するようにしてください。

点火はカセットボンベ等を立てた状態で行う。大きく傾けて異常燃焼が生じた場合、直ちに立てた状態に戻す。
 ガストーチには、カセットボンベ等を大きく傾けたり、逆さにしたりしても使用できるタイプの製品と、使用できないタイプの製品があります。大きく傾けて使用できないタイプの製品を傾けすぎると、異常燃焼が生じて大きく燃え上がるため、やけどなどのおそれがあります。
 適切な製品には、それぞれのタイプに応じた注意事項が取扱説明書に記載されていますので、取扱説明書を確認してください。もし、使用中に傾けて異常燃焼が生じた場合は、直ちにカセットボンベ等を立てた状態に戻してください。
 また、どちらのタイプの製品であっても点火する際に傾けていると異常燃焼が生じるおそれがあるため、点火はカセットボンベ等を立てた状態で行ってください。
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「NITE SAFE-Lite(ナイト セーフ・ライト」のご紹介
 NITEはホームページで製品事故に特化したウェブ検索ツール「NITE SAFE-Lite(ナイト セーフ・ライト)」のサービスを行っています。製品の利用者が慣れ親しんだ名称で製品名を入力すると、その名称(製品)に関連する事故の情報やリコール情報を検索することができます。
 ガストーチの事故の中には、リコールが開始された後に発生したものもあります。お持ちの製品がリコール対象になっていないか今一度ご確認ください。
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独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE) 製品安全センターの概要
 NITE 製品安全センターには、消費生活用製品安全法などの法律に基づき、一般消費者が購入する消費生活用製品(家庭用電気製品やガス・石油機器、身の回り品など)を対象に毎年1千件以上の事故情報が寄せられます。製品安全センターでは、こうして収集した事故情報を公平かつ中立な立場で調査・分析して原因究明やリスク評価を行っています。原因究明調査の結果を公表することで、製品事故の再発・未然防止に役立てています。

情報提供元: PRワイヤー
記事名:「 【注意喚起】事故原因の7割が製品に問題 ~ガス“漏れ”バーナーに新たな規制~