太平洋島嶼国の要求スタイルの変化 今、太平洋島嶼国の政治が大きく変化しつつあります。国を長年率いてきた、強い理念とリーダーシップを持つ政治家が次々と選挙で敗れて退場し、国民が直接メリットを感じられる現実的な政策を掲げた、新たなリーダーが登場してきました。この流れの中で、太平洋島嶼国のCOPなど国際会議での提案や要求も、強いリーダーによる気候変動緩和策を中心とした「理念先行型」から、適応のための具体策に舵を切りつつあります。前回のCOP27で、気候変動に起因する発展途上国の「損失と被害」の支援に特化した基金(いわゆる『ロスダメ基金「損失と損害(loss and damage)基金)」』の設立が合意されたことも、この傾向を後押しするものと考えられます。 「理念先行型」の訴えは、国際社会にインパクトを与え、太平洋島嶼国の存在感は増大しました。緩和対策では、多くの国の利害が一致するので太平洋島嶼国は団結しやすかったのですが、適応対策はそれぞれの国によって状況や求めるものが異なるため、団結して先進国に要求するという旧来の交渉スタイルは取りにくくなることが予想されます。各国はどのように国際交渉に臨むのでしょうか。