論文内容 【タイトル】 横断研究に基づいた日本人地域在住高齢者におけるチーズ摂取と認知機能の低さの逆相関に ついて (Inverse association between cheese consumption and lower cognitive function in Japanese community-dwelling older adults based on a cross-sectional study.)
【方法】 ①東京都板橋区在住の65歳以上の日本人高齢者男女を対象に、対面でのアンケートや機能的能力測定を通じて食品摂取や日頃の生活習慣、身体状態と認知機能の関係を評価する横断研究を実施しました。 ②チーズ摂取と認知機能に関して欠損のないデータが取得できた1,504名について、MMSE(Mini-Mental State Examination)※1スコアが23点以下を認知機能低下(LCF)として分類し、解析を進めました。 ③ロジスティック回帰分析※2の手法を用いて、LCFと関連する因子を分析しました。分析にあたり、チーズの摂取状況、年齢、身体機能、体格要因、既往歴、血圧、歯の残存本数、血液変数、尿失禁の頻度、牛乳の摂取頻度、食事多様性スコアの影響を統計的に調整しました。
【結果】 ① チーズ摂取者(週に一回以上チーズを摂取する人)はチーズ非摂取者と比較して通常歩行速度が速く、歯の残存本数が多く、血中の善玉コレステロール(HDLコレステロール)が高い値を示しました。 ② チーズ摂取者はチーズ非摂取者より牛乳を摂取している人の割合が高く、尿失禁の頻度は低く、さらに認知機能を評価する指標であるMMSEのスコアが高い値を示しました。 ③チーズ摂取と認知機能に関して欠損のないデータが取得できた1,504名についてMMSEスコアが23点以下を認知機能低下(LCF)として分類したとき、LCFに該当する方は調査対象者全体の4.6%程度(69名)を占め、この集団はMMSEスコアが23点よりも高い高齢者の集団と比較してふくらはぎの周囲径が小さく、通常の歩行速度が遅く、貧血の頻度が高いことがわかりました。 ④ロジスティック回帰分析の結果、LCFと関連する因子として、チーズの摂取状況、年齢、通常歩行速度、ふくらはぎの周囲径が重要であることが示されました(図)。