~大雨、強風に備え、被害を最小限に~

  独立行政法人製品評価技術基盤機構[NITE(ナイト)、理事長:長谷川 史彦、本所:東京都渋谷区西原]は、電気事業法に基づく電気工作物※1の事故情報データベースを用いて、2019年度から2021年度の3年間に発生した台風による電気事故※2を分析しました。その結果、全国の自家用電気工作物※3における台風起因の事故は、9月と10月に集中して発生しており、中でも太陽電池発電所の被害が一番多いことが明らかになりました。

 

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 近年においては、大型の令和元年東日本台風(台風19号)、令和元年房総半島台風(台風15号)による甚大な被害が確認されました。今秋は大型で強い台風が発生するという研究報告もあり、特に太陽電池発電所の設置者及び事業場の保安業務を行っている主任技術者等におかれましては、被害を最小限にするための予防点検や事前対策を行うなど、早期の段階で台風に備えておくことが大切です。

 

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(※1)発電、蓄電、変電、送電、配電または電気を使用するために設置する工作物のこと。

(※2)電気関係報告規則第3条及び第3条の2に掲げる電気事故。感電死傷事故、破損事故、物損事故(電気工作物の破損等により第三者の物件に被害を与えた事故)、波及事故(需要設備等で発生した事故が原因となり、電力会社の配電線及び配電線から受電している第三者のビルや工場等の電気設備を停電させる事故)などがあります。

(※3)主に大規模マンション、ビル、オフィス、工場等、電気を多く使用する施設で用いられる、高圧(600V以上)で受電する工作物を指します(電気事業で用いられるものを除く。)。

 

台風による電気事故の分析結果

1.台風起因の事故発生状況

 全国の自家用電気工作物における台風起因の事故は、2019年度から2021年度の3年間で45件報告されています。発生月別に見ると、9月と10月に集中しており、全体の約93%に相当する42件の事故が発生。例年、台風が多く観測される時季に、関東地方や東北地方を中心に事故が起こっていたことが分かりました(図3)。

 設備別に見ると、発電設備※3(太陽電池・風力・水力発電所)での事故が多く、そのうち37件と、太陽電池発電所が最も被害を受けています。その内訳(事故種類)を見ると、太陽電池パネル、架台、パワーコンディショナなどの破損事故/物損・破損事故が33件(全体の約73%)を占めています(図4、図5、図6)。

 

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(※4)太陽電池発電所、風力発電所、水力発電所等で電気を発電するために設置する電気工作物。太陽電池パネル、風力タービン、水車などの装置と、関連するPCSや発電機等の設備のこと。

(※5)強風によってパネルと架台が破損した等、同一の事故の中で複数の機器が破損した場合、パネル(強風)、架台(強風)それぞれを1件としてカウントしています。

 

2.台風起因の事故被害状況

 2019年度から2021年度に発生した台風起因の事故45件について、台風の特性(大雨による被害、強風による被害)別に被害状況を見ても、太陽電池発電所が最も被害を受けていたことが分かります(図7)。

いわゆる「風台風」と「雨台風」では、被害状況にも違いが見られます。令和元(2019)年は、この特性の異なる2つの台風が相次いで上陸。風台風の「令和元年房総半島台風(台風15号)」では強風に伴う送電線の鉄塔倒壊や配電線の損傷などによる停電被害が、雨台風の「令和元年東日本台風(台風19号)」では豪雨に伴う河川氾濫による浸水被害等が発生しました(図8)。

 

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3.台風起因の事故事例

令和元年房総半島台風(風台風)の事例  事故発生年月 2019年9月(関東地方)

【被害の状況】太陽電池発電所、電気工作物の破損等による物損

太陽電池発電所の太陽電池パネル約200枚が強風により破損した。また、その一部が発電所構外へ飛散した。※6

【事故の原因】

台風通過時に、太陽電池パネル及び架台等の支持物が設計基準を上回る強風を受けたことで、太陽電池パネルが架台から外れて破損し、飛散したものと推定される。

 

(※6)パネル等が飛散した場合、他者に被害を与える可能性があることから、電気関係報告規則第3条及び第3条の2に掲げる電気事故として当該管轄する地域を管轄するの産業保安監督部に報告する必要があります。

 

令和元年東日本台風(雨台風)の事例  事故発生年月 2019年10月(関東地方)

【被害の状況】太陽電池発電所、電気工作物の破損

太陽電池発電所の太陽電池パネル・支持物(約80kW分)及びパワーコンディショナが構内法面の土砂崩れによって損壊した。

【事故の原因】

台風の豪雨によって構内の法面で土砂崩れが発生し、崩れた土砂が太陽電池パネル・支持物及びパワーコンディショナを押し流すなどして破損事故に至ったものと推定される。

 

雨台風の事例 事故発生年月 2021年9月(関東地方)

【被害の状況】太陽電池発電所、電気工作物の破損

太陽電池発電所のパワーコンディショナのインバータ冷却ファン内部へ水分が浸入し、ファン内部で地絡を発生させた。

【事故の原因】

台風の豪雨によって屋外収納盤の天面から雨水が内部へ浸入し、更に収納盤内部に設置されたパワーコンディショナ本体の天井部換気口を介してインバータ冷却ファン内部にも水分が浸入したため、ファン内部で地絡が発生した。

 

■事故を防ぐためのポイント

4.台風起因の事故を未然に防ぐために

未然防止に有効と考えられる対策を以下に示します。

台風起因の事故を未然に防ぐためには、台風の特性(大雨と強風)に応じた対策を講じることが重要です。設置者及び事業場の保安業務を行っている主任技術者等におかれましては、これから台風による事故のリスクが高まる時期を迎えるにあたり、未然防止に係る取組の強化をお願いいたします。

 

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(参考リンク)

※「2023年度夏季の自然災害に備えた電気設備の保安管理の徹底について」(経済産業省)

https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/oshirase/2023/05/20230531-2.html

※「建築物における電気設備の浸水対策」(経済産業省)

https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/electric/detail/shinsuitaisaku.html

※「災害・防災関連情報」(経済産業省関東経済産業局)

https://www.kanto.meti.go.jp/saigai_kanren/index.html

※「台風接近前の飛来物対策のお願い」(中部近畿産業保安監督部)

https://www.safety-kinki.meti.go.jp/denryoku/2020/hiraibutsu.html

※「台風情報」(気象庁)

https://www.jma.go.jp/bosai/map.html#5/23.685/120.015/&elem=root&typhoon=all&contents=typhoon

※「太陽光発電システムの水害時の感電の危険性について(ver.02)」(太陽光発電協会)

https://www.jpea.gr.jp/news/533/

 

 

参考情報

詳報公表システムをご利用ください

独立行政法人製品評価技術基盤機構は、2022年1月から「詳報公表システム」の運用を開始しています。これは、電気事業法に基づく電気工作物に関する全国の事故情報(詳報)を一元化した国内初のデータベースで、2020年度からの事故情報を順次公開しています。詳報公表システムは、電気事業者をはじめ、どなたでもご自由にお使いいただけます。事故情報を条件やキーワードで簡単に検索することができ、抽出されたデータはCSVファイルとしてダウンロードすることも可能です。

 

詳報公表システム >> https://www.nite.go.jp/gcet/tso/kohyo.html

 

 

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NITE 電力安全センターについて

 NITE電力安全センターは、経済産業省(原子力発電設備等以外を所掌)からの要請を受け、電気保安行政(電気工作物の工事、維持及び運用における安全を確保するため行政活動)を技術面から支援するために、2020年4月、電気保安業務の専従組織として発足しました。現在、NITEがこれまで培ってきた知識や経験を活用し、経済産業省や関係団体と連携しながら、電気保安の維持・向上に資するさまざまな業務に取り組んでいます。

 

NITE電力安全センターの業務紹介 >>https://www.nite.go.jp/gcet/tso/index.html

情報提供元: PRワイヤー
記事名:「 9・10月は台風による太陽電池発電所の被害に注意!