EYは、「2023年度版 EY M&A Firepowerレポート(第11号)」を発表しました。本レポートによると、2022年1月から11月までの世界のライフサイエンス企業の合併・買収(M&A)取引額は総額1,050億米ドルであり、前年2021年の取引総額から大幅に減少しました。しかし、年末にかけてジョンソン・エンド・ジョンソンおよびアムジェンの両社が共に数十億ドル規模の買収を実施したことにより、取引総額は急激な上昇に転じました。業界は記録的な水準のファイヤーパワー(企業のM&A実行能力を貸借対照表の健全性に基づいて測定したEY独自の指標)を有するものの、2022年には多くの企業がM&Aを見合わせる選択を取りました。
EY グローバルの Life Sciences DealsリーダーのSubin Baralのコメント: 「バイオ医薬品企業とメドテック企業は、2022年の大半を通してM&Aに対して慎重な姿勢をとってきましたが、必要なディールの締結は依然として行っています。M&Aを行うための資金調達は、金利やインフレ率の上昇のため、より厳しい状況になっています。また、米国では、「インフレ削減法(IRA)」が成立し、米連邦取引委員会(FTC)が不公正な競争に対する法執行を強化させるなど、法規制の影響もまた障壁となっています。しかし、ライフサイエンス企業は大いに活用できるファイヤーパワーを有しているため、自社の戦略に見合ったディールがあれば、M&Aをためらうことはないでしょう。 より長期的な視点に立つと、私たちは2022年を嵐の前の静けさだったと振り返ることになるかもしれません。ライフサイエンス企業は、自社のポートフォリオに新しいイノベーションを追加するためだけでなく、オペレーションモデル全体をより良いものへとトランスフォームできるテクノロジーツールやデータツールにアクセスするために、今後1年の間にファイヤーパワーを解き放つ可能性があります。 このイノベーション潮流の高まりの下、ライフサイエンス企業は、成長を確実にすること、将来の発展につながるビジネスモデルを確立することを目指しています。そんな中で、M&Aが戦略的役割の中心的な位置を占める必要があることは、言うまでもないでしょう」
EY Japan ヘルスサイエンス・アンド・ウェルネスリーダー EY新日本有限責任監査法人 パートナーの矢崎 弘直(やざき ひろなお)のコメント: 「本レポートでも指摘の通り、2022年はライフサイエンス企業にとってM&Aは前年比大幅減少になったものの、12月にいくつかの大型買収案件で復調の兆しがあります。 日本のライフサイエンス企業にとっても、新型コロナウイルス感染症、地政学的リスク、円安などの影響からM&Aは下火の傾向が続いているものの、年度末に大手医薬品企業の大型買収もあり、上り調子になることが期待されています。今後も大手、中堅を中心に“選択と集中”の戦略が進められることが予想され、M&Aやライセンス取引がその手段として積極的に活用されることになるでしょう。新たなパイプラインの取得に加え、グローバル展開、開発コストのセーブ、サプライチェーンの構築等が今後のキーワードになりそうです」
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