金沢大学の研究者を中心とした本研究グループは,3次元原子間力顕微鏡(3D-AFM)(※2)と分子動力学シミュレーションを用いて,液中におけるCNC繊維の表面構造やその表面の水和構造を原子レベルで明らかにしました。単一のCNC繊維の表面構造は,ハニカム(蜂の巣状)やジグザグの構造が並んだ結晶状態になっていましたが,その表面の一部には結晶構造が乱れた非結晶領域が不規則に点在する欠陥構造が存在していることが確認されました。福間剛士教授は,「これは,再生可能ナノ材料や化学製品へのバイオマス変換に関連するCNC分解メカニズムの理解のための重要な成果です。」と述べています。また,超分子材料のCanada Research Chair(註)であり,本論文の共著者であるカナダ・ブリティッシュコロンビア大学(UBC)のマーク・マクラクラン教授は,「本研究のように天然の結晶構造の表面や欠陥を可視化することは,その材料を用いた応用研究開発を進める上で大変重要です。これは,金沢大学ナノ生命科学研究所における国際共同研究の優れた研究例の一つです。」と述べています。
(註)Canada Research Chair (Program):カナダの国家的研究開発戦略の中心として2000年にカナダ政府によって創設された非常に権威ある称号(プログラム)。カナダの研究機関に在籍する世界的に評価の高い研究者をChairholderとして選出し,研究助成金を提供するもの。
本研究は,文部科学省世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)事業,日本学術振興会科学研究費助成事業(21H05251, 20H00345, 19K22125, and 20K05321),Discovery Grant(F16-05032,NSERC,カナダ),The Academy of Finland’s Flagship Programme(318890, 318891 and 314862,フィンランド)の支援を受けて実施されました。
【掲載論文】 雑誌名:Science Advances 論文名:Molecular insights on the crystalline cellulose-water interfaces via three-dimensional atomic force microscopy (3次元原子間力顕微鏡によるセルロース結晶/水界面に関する分子スケール研究)
著者名:Ayhan Yurtsever*, Pei-Xi Wang, Fabio Priante, Ygor Morais Jaques, Keisuke Miyazawa, Mark J. MacLachlan, Adam S. Foster, Takeshi Fukuma*(Ayhan Yurtsever,Pei-Xi Wang, Fabio Priante,Ygor Morais Jaques,宮澤佳甫,Mark J. MacLachlan,Adam S. Foster,福間剛士)