【今後の展望】 本研究では、リアルワールドエビデンス研究として日常診療から得られる医療ビッグデータを活用して、糖尿病治療薬DPP-4阻害薬の使用により膵癌の発症リスクが上昇しないことを明らかにしました。このような研究手法は、DPP-4阻害薬以外の糖尿病治療薬はもちろん、他疾患の治療薬の安全性を評価することにも有効と考えられます。本研究では、レセプトや健診データをもとに解析を行いましたが、近年注目される個人の健康・医療・介護に関するデータを一元的に保存するPHR(Personal Health Record)が普及すれば、医療機関での採血検査や画像検査のデータはもちろん、自宅での血圧や血糖、体重などのデータ、食事や運動のデータも含め、AI等を用いたデータ駆動型研究を行うことで治療薬の安全性や有効性の確認のみならず、有効かつ安全に治療薬を用いる方法を明らかにすることも可能になると考えています。
【論文情報】 雑誌名:Journal of Diabetes Investigation 論文タイトル:Association of dipeptidyl peptidase-4 inhibitor use and risk of pancreatic cancer in individuals with diabetes in Japan 著者:Kubota S, Haraguchi T, Kuwata, H, Seino Y, Murotani K, Tajima T, Terashima, G, Kaneko, M, Takahashi Y, Takao K, Kato T, Shide, K, Imai S, Suzuki A, Terauchi Y, Yamada Y, Seino Y, Yabe D DOI: 10.1111/JDI.13921