2022年6月16日
ギリアド・サイエンシズ株式会社

sacituzumab govitecan-hziy、多くの治療歴を有する HR陽性HER2陰性の転移性乳がん患者さんの無増悪生存期間を34%改善 
第III相TROPiCS-02試験において、医師が選択した化学療法と比較して、 約3倍の患者さんが1年後の無増悪生存を達成
最初の中間解析で、全生存期間において良好な傾向を示し、 患者さんの追跡調査を継続
患者報告アウトカム(PRO)解析から、sacituzumab govitecan-hziyは 医師が選択した化学療法より生活の質(QOL)向上を示す 

ギリアド・サイエンシズ(本社:米カリフォルニア州フォスターシティ、ナスダック:GILD、以下「ギリアド」)は、6月4日、内分泌療法とCDK4/6阻害剤および2~4種類の化学療法による治療歴を有するホルモンレセプター(HR)陽性HER 2陰性の転移性乳がん患者さんを対象に、医師が選択した化学療法(TPC)との比較によりsacituzumab govitecan-hziyを評価する第III相TROPiCS-02試験の初期解析において、肯定的な結果が得られたことを発表しました。

本試験では、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を達成し、疾患進行または死亡リスクにおいて統計的、臨床的に有意な34%の低減が認められました(PFS中央値:5.5カ月対4カ月、ハザード比[HR]=0.66、95%CI:0.53~0.83、p<0.0003)。主な副次評価項目である全生存期間(OS)に関する最初の中間解析では改善傾向が認められましたが、現時点ではデータとして不完全であり、患者さんは引き続きOSの解析対象となります。今回の結果は、6月4日(土)の2022年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会での記者発表および口演発表(抄録番号 LBA1001)において紹介される予定です。

本プレスリリースはマルチメディアに対応しています。プレスリリースの全文はhttps://www.businesswire.com/news/home/20220603005437/en/をご参照ください。

本試験1年目では、TPC治療を受けた患者さんに比べて、sacituzumab govitecan-hziyを投与された患者さんにおいて、3倍の無増悪生存が認められました(21%対7%)。過去に転移性疾患に対する3レジメン以上の化学療法歴を有する患者さん(HR=0.70、CI:0.52~0.95)、内臓転移が認められた患者さん(HR=0.66、CI:0.53~0.83)および高齢患者さん(65歳以上、HR=0.59、CI:0.38~0.93)を含む主なサブグループのsacituzumab govitecan-hziy 群におけるPFSの改善率は一貫していました。

米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校、総合がんセンターの乳腺腫瘍学・臨床試験教育医学教授兼ディレクターのホープ・ルーゴ医学博士(Dr. Hope Rugo)は、次のように述べています。「HR陽性HER 2陰性乳がんの患者さんのほとんどの症例において、内分泌療法に対する耐性は避けられません。そのため標準治療は、奏効率、疾患コントロールおよび生活の質(QOL)の低下を伴う段階的な単剤化学療法に限られます。TROPiCS-02試験では、複数の化学療法後に疾患進行が認められた多くの治療歴を有する転移性乳がん患者さんを登録しました。これらの治療選択肢が限られた患者さんにおいて、臨床的に疾患進行または死亡リスクの低減が認められたことは特筆すべきことです。これらの患者さんにとって、sacituzumab govitecan-hziyは、今後重要な治療選択肢となり得るでしょう」

副次評価項目のひとつである、EORTC QLQ-C30調査票を用いて事前に規定したQOL解析においても、sacituzumab govitecan-hziyはTPCと比較して優位性を示し、意義のあるメリットをもたらしました。また評価可能集団において、TPC投与群(n=207)と比べて、sacituzumab govitecan-hziy投与群(n=234)では、健康状態および倦怠感の改善が確認されました。

ギリアドのオンコロジー部門の治療領域責任者であり、上級副社長のビル・グロスマン(Bill Grossman, MD, PhD)は、次のように述べています。「私たちはsacituzumab govitecan-hziyを通じて、より多くの選択肢を必要とする、治療歴のあるHR陽性HER2陰性の転移性乳がん患者さんなど、がんと共に生きる人々に対する治療の変革に貢献するという大望を抱いています。アンメット・メディカル・ニーズが高い患者さんに対して、sacituzumab govitecan-hziyがどのように貢献できるかをさらに理解していくために、今後の規制当局との協議に期待しています」

sacituzumab govitecan-hziyの安全性プロファイルは過去の試験と一貫しており、この患者集団において、安全性に関する新たな懸念は確認されませんでした。TPCと比較して、最も頻繁にみられたグレード3以上の副作用は、好中球減少症(51%対38%)、下痢(9%対1%)、白血球減少症(9%対5%)、貧血(6%対3%)、倦怠(6%対2%)および発熱性好中球減少症(5%対4%)でした。

Sacituzumab govitecan-hziyは、HR陽性HER 2陰性の転移性乳がんに対して承認されておらず、本適応症について安全性および有効性は確立されていません。Sacituzumab govitecan-hziyには重度または生命を脅かす好中球減少症および重度の下痢に関する枠組み警告があります。その他の重要な安全性情報については、後述をご参照ください。

HR陽性HER2陰性の転移性乳がんについて
ホルモン受容体陽性/ヒト上皮成長因子受容体2陰性(HR+/HER 2-)乳がんは、乳がんの中で最も多いタイプで、全新規症例の約70%を占め、毎年、世界中で40万人近くが新たに診断されています。早期乳がんのほぼ3例のうち1例の患者さんが最終的に転移性となり、HR陽性HER 2陰性の転移性乳がん患者さんの5年相対生存率は30%です。HR陽性HER 2陰性の転移性乳がん患者さんは、内分泌療法に耐性を示すようになるため、主な治療選択肢は単剤化学療法に限定されます。単剤化学療法を受けた患者さんの予後は依然として良好ではありません。

TROPiCS-02試験について
TROPiCS-02試験は、内分泌療法とCDK 4/6阻害剤および2~4種類の化学療法による治療歴のあるHR陽性HER 2陰性の転移性乳がん患者さん543名を、医師が選択した化学療法(エリブリン、カペシタビン、ゲムシタビン、ビノレルビン)またはSacituzumab govitecan-hziyに1対1の割合で無作為に割り付けた国際共同、多施設、非盲検、第III相試験です。主要評価項目は、化学療法を受けた患者さんと比較し、Sacituzumab govitecan-hziyを投与された患者さんにおける、盲検独立中央判定(BICR)による固形がんの治療効果判定規準(RECIST 1.1)に基づくPFSとしました。副次評価項目には、OS、全奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、クリニカルベネフィット率および安全性、忍容性、生活の質(QOL)が含まれます。本試験では、米国臨床腫瘍学会(ASCO)および米国病理学会(CAP)の基準に従い、免疫組織化学(IHC)スコアが0、IHC法1+、またはIHC法 2+でin situハイブリッド形成法(ISH)検査が陰性の場合をHER 2陰性と定義しました。TROPiCS-02試験の詳細については、https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03901339をご参照ください。

Sacituzumab govitecan-hziyについて
Sacituzumab govitecan-hziyは、ファースト・イン・クラスのTrop-2を標的とした抗体薬物複合体です。Trop-2は、乳がんおよび膀胱がんの90%以上を含む複数の腫瘍で高発現する細胞表面抗原です。Sacituzumab govitecan-hziyは、トポイソメラーゼI阻害剤であるSN-38のペイロードを独自の加水分解性リンカーで抗体に結合できるよう意図的に設計されています。この独自の組み合わせにより、Trop-2発現細胞と微小環境の両方に強力な活性をもたらします。

Sacituzumab govitecan-hziyは、2種類以上の全身療法歴があり、そのうち少なくとも1種類は転移性疾患に対する治療歴を有する切除不能な局所進行性または転移性トリプルネガティブ乳がん(TNBC)の成人患者さんの治療薬として、35カ国以上で承認されており、世界各国で規制当局による複数の審査が行われています。米国において、Sacituzumab govitecan-hziyは、プラチナ製剤を含む化学療法とプログラム細胞死受容体-1(PD-1)またはプログラム細胞死リガンド-1(PD-L 1)阻害剤による治療歴のある局所進行性または転移性尿路上皮がん(UC)の成人患者さんに対する治療薬として、迅速承認制度に基づき承認されました。

また、他のTNBC、転移性UC、ホルモン受容体陽性/ヒト上皮成長因子受容体2陰性(HR+/HER 2-)の転移性乳がん、転移性非小細胞肺がん(NSCLC)、転移性小細胞肺がん(SCLC)、頭頸部がん、および子宮内膜がんを含むTrop-2が高発現するさまざまな種類の腫瘍に対する治療薬として開発が進められています。

米国におけるSacituzumab govitecan-hziyの適応について
米国では以下の治療が適応とされています。
●2種類以上の全身療法歴があり、そのうち1種類以上は転移性疾患に対する治療歴を有する、切除不能な局所進行性または転移性TNBCの成人患者さん
●プラチナ製剤を含む化学療法およびプログラム細胞死タンパク質1 (programmed death receptor-1, PD-1)阻害剤、またはプログラム細胞死リガンドL1 (programmed death-ligand 1, PD-L 1)阻害剤の投与歴がある局所進行または転移性UCの成人患者さん。本適応症は、奏効率および奏効期間に基づき迅速承認されました。本適応症の承認を継続するには、検証的試験で臨床ベネフィットを検証し、説明することが条件となります。

米国におけるSacituzumab govitecan-hziyに関する重要な安全性情報
枠組み警告:好中球減少症および下痢
●重度または生命を脅かす好中球減少症が生じる可能性があります。好中球絶対数が1500/mm3以下の場合や発熱性好中球減少の場合はSacituzumab govitecan-hziyの投与を中止してください。治療中は定期的に血球数を測定してください。二次予防のためにG-CSFを検討してください。発熱性好中球減少症の患者さんには、遅滞なく感染症治療を開始してください。
●重度の下痢が生じる可能性があります。下痢が生じた場合には、患者さんの様子を観察し、必要に応じて水分と電解液を投与してください。重症度を問わず初期の下痢に対して、禁忌でなければアトロピンを投与し、遅発性の下痢の発現時には、感染性の原因を評価し、陰性の場合は速やかにロペラミドの投与を開始してください。重度の下痢が発生した場合は、グレード1以下になるまでSacituzumab govitecan-hziyの投与を中断し、その後は投与量を減らしてください。

禁忌
●Sacituzumab govitecan-hziyに対する重度の過敏症反応

警告および使用上の注意
好中球減少症:重度、生命を脅かす、または致命的な好中球減少症が発生する可能性があり、投与量の変更が必要になる場合があります。Sacituzumab govitecan-hziyで治療を受けた患者さんの61%に好中球減少症、47%の患者さんにグレード3~4の好中球減少症、7%の患者さんに発熱性好中球減少症が認められました。いずれかのサイクルの第1日目に好中球絶対数が1500/mm3以下の場合、またはいずれかのサイクルの第8日目に好中球数が1000/mm3以下の場合、sacituzumab govitecan-hziyの投与を中止してください。発熱性好中球減少が発生した場合は、sacituzumab govitecan-hziyの投与を中止してください。

下痢:sacituzumab govitecan-hziyを投与された全患者さんの65%に下痢の症状がみられました。12%の患者さんにおいて、グレード3~4の下痢が認められました。1名の患者さんに下痢の後の腸管穿孔がみられました。好中球減少性大腸炎は0.5%の患者さんにみられました。グレード3~4の下痢が認められた場合、sacituzumab govitecan-hziyの投与を中止し、グレード1以下に回復した時点で投与を再開してください。発現時には感染性の原因を評価し、陰性の場合は速やかに初回に4mg、その後は下痢のたびに2mg、最大で1日16mgまでロペラミドを投与してください。下痢が治まってから12時間後にロペラミドを中止してください。臨床的に必要であれば、追加の支持療法(例:水分と電解液の補給)を受けることができます。治療に対して過剰なコリン作動性反応を示す患者さんは、その後の治療のために適切な前投薬(例:アトロピン)を受けることができます。

過敏症および注入に伴う反応:sacituzumab govitecan-hziyで、生命を脅かすアナフィラキシー反応を含む重篤な過敏症反応が発現しています。重篤な徴候・症状には、心停止、低血圧、喘鳴、血管浮腫、腫脹、肺臓炎、皮膚反応などがあります。投与後24時間以内に、37%の患者さんにおいて過敏症反応が発現しました。グレード3~4の過敏症は患者さんの2%に発現しました。sacituzumab govitecan-hziy投与の永続的な中止に至った過敏症反応の発現率は0.3%でした。アナフィラキシー反応の発現率は0.3%でした。前投薬が推奨されます。投与中および投与終了後少なくとも30分間は、過敏症および注入に伴う反応について患者さんを注意深く観察してください。このような反応を治療するための薬や緊急用の器具をすぐに使用できるようにしてください。注入を伴うグレード4の反応がみられた場合は、sacituzumab govitecan-hziyの投与を永続的に中止してください。

悪心および嘔吐:sacituzumab govitecan-hziyの投与を受けた全患者さんの66%に悪心が発現し、このうち4%にグレード3の悪心がみられました。39%の患者さんに嘔吐が認められ、このうち3%の患者さんにグレード3~4の嘔吐がみられました。化学療法誘発性の悪心・嘔吐(CINV)の予防のために、2剤または3剤の併用療法(例:デキサメタゾンと5-HT3受容体拮抗薬またはNK1受容体拮抗薬のいずれか、および適応となる他の薬剤)で前投薬するようにしてください。グレード3の悪心またはグレード3~4の嘔吐に対してはsacituzumab govitecan-hziyの投与を中止し、グレード1以下に回復した時点で追加の支持療法を用いて再開してください。臨床的に必要な場合には、制吐剤およびその他の支持療法を追加することができます。全ての患者さんに対し、悪心と嘔吐の予防および治療に関する明確な指示とともに、自宅で服用する薬剤を処方してください。

UGT1A1活性の低下した患者さんにおける副作用リスクの上昇:ウリジン二リン酸-グルクロノシルトランスフェラーゼ1A1(UGT1A1)*28対立遺伝子がホモ接合体の患者さんにおいて、好中球減少症、発熱性好中球減少症および貧血のリスク、sacituzumab govitecan-hziyによるその他の副作用のリスクも高くなる可能性があります。グレード3~4の好中球減少症の発現率は、UGT1A1*28対立遺伝子がホモ接合体の患者さんで67%、UGT1A1*28対立遺伝子がヘテロ接合体の患者さんでは46%、野生型対立遺伝子がホモ接合体の患者さんでは46%でした。グレード3~4の貧血の発現率は、UGT1A1*28対立遺伝子がホモ接合体の患者さんでは25%、UGT1A1*28対立遺伝子がヘテロ接合体の患者さんでは10%、野生型対立遺伝子がホモ接合体の患者さんでは11%でした。UGT1A1の活性の低下が認められた患者さんについては、副作用を注意深く観察してください。UGT1A1の機能低下を示す可能性がある、または急性の早期発症または異常に重度の副作用が認められた患者さんにおいては、観察された副作用の発現、持続時間および重症度の臨床的評価に基づいて、sacituzumab govitecan-hziyの投与を中断、または永続的に中止してください。

胚・胎児への毒性:その作用機序から、妊婦に投与すると催奇形性および/または胚・胎児致死を引き起こす可能性があります。sacituzumab govitecan-hziyは遺伝毒性成分であるSN-38が含まれており、急速に分裂する細胞を標的としています。妊婦や妊娠可能な女性には、胎児への潜在的なリスクについて説明してください。妊娠可能な女性には、sacituzumab govitecan-hziyの投与中および最終投与後6カ月間は有効な避妊法を使用するよう指導してください。妊娠可能な女性パートナーを持つ男性患者には、sacituzumab govitecan-hziyの投与中および最終投与後3カ月間は有効な避妊法を使用するよう指導してください。

副作用
ASCENT試験(IMMU-132-05)において、最も多くみられた副作用(発現率25%以上)は、倦怠、好中球減少症、下痢、悪心、脱毛症、貧血、便秘、嘔吐、腹痛、食欲減退でした。1%以上の頻度で認められた重篤な副作用(SAR)は、好中球減少症(7%)、下痢(4%)、肺炎(3%)でした。27%の患者さんにおいてSARが報告され、5%の患者さんが副作用により治療を中止しました。ASCENT試験で最も多く認められたグレード3~4の臨床検査値異常(発現率25%以上)は、好中球数、白血球数、リンパ球数の減少でした。

TROPHY試験(IMMU-132-06)において、最も多くみられた副作用(発現率25%以上)は、下痢、倦怠、好中球減少症、悪心、感染症、脱毛、貧血、食欲減退、便秘、嘔吐、腹痛、発疹でした。5%以上の頻度で認められたSARは、感染症(18%)、好中球減少症(12%、うち発熱性好中球減少症は10%)、急性腎障害(6%)、尿路感染(6%)、敗血症または菌血症(5%)でした。SARは44%の患者さんで報告され、10%が副作用により治療を中止しました。TROPHY試験で最も多かったグレード3~4の臨床検査値異常(発現率25%以上)は、好中球数、白血球数、リンパ球数の減少でした。

薬物相互作用
UGT1A1阻害剤:UGT1A1阻害剤とsacituzumab govitecan-hziyを併用すると、SN-38の全身曝露量が増加する可能性があるため、副作用の発現率が高まる可能性があります。UGT1A1阻害剤とsacituzumab govitecan-hziyの併用は避けてください。

UGT1A1誘導剤:UGT1A1誘導剤を併用している患者さんにおいて、SN-38への曝露量が大幅に減少する可能性があります。UGT1A1誘導剤とsacituzumab govitecan-hziyの併用は避けてください。

枠組み警告文を含む完全な処方情報を参照してください。

情報提供元: PRワイヤー
記事名:「 sacituzumab govitecan-hziy、治療歴を有するHR陽性HER2陰性の転移性乳がん患者の無増悪生存期間を34%改善