新材料の特性予測の精度向上を実現するために、次の実験を適切に選択

2021/9/29
国立研究開発法人 物質・材料研究機構 (NIMS)・〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1
Science and Technology of Advanced Materials: Methods誌

Science and Technology of Advanced Materials: Methods誌 プレスリリース

配信元:国立研究開発法人 物質・材料研究機構 (NIMS)・〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1
Date: 29 September 2021

最先端材料科学研究:適切な実験計画で機械学習による材料特性予測の精度を向上

(Tsukuba 29 September 2021) 新材料の特性予測の精度向上を実現するために、次の実験を適切に選択

論文情報
タイトル:Experimental design for the highly accurate prediction of material properties using descriptors obtained by measurement
著者:Ryo Tamura*, Yuki Takei, Shinichiro Imai, Maki Nakahara, Satoshi Shibata, Takashi Nakanishi &Masahiko Demura
* Materials Open Platform for Chemistry, National Institute for Materials Science (NIMS), 1-1
Namiki, Tsukuba, Ibaraki, 305-0044, Japan (E-mail: TAMURA.Ryo@nims.go.jp)
引用:Science and Technology of Advanced Materials: Methods Vol. 1 (2021) p. 152
URL:  https://doi.org/10.1080/27660400.2021.1963641(オープンアクセス)

材料の強度や脆さといった材料特性を機械学習で予測する際に、少ない材料作製回数で、予測精度を良くできるAI技術を開発した。
Science and Technology of Advanced Materials: Methodsに、物材機構の田村亮ら、および、旭化成、三菱化学、三井化学、住友化学の研究者が、この新しいアプローチを、論文 Experimental design for the highly accurate prediction of materials properties using descriptors obtained by measurement に共著発表した。

これまでのマテリアルズ・インフォマティクス研究は、材料組成や加工プロセス(温度や圧力など)のパラメータから材料特性を機械学習で予測することで、材料開発を加速してきた。一方で、プロセス加工後の構造が材料特性に強く影響する場合、より良い予測を実現するには、構造情報を提供するX線回折(XRD)や示差走査熱量測定(DSC)等の測定データの利用が有効となる。これらの測定データは、実際にプロセス加工した材料に対して測定しないと取得できないため、新しい手法を開発する必要があった。

本研究では、XRDやDSCのデータを用い、なるべく少ない材料作製回数で正確に材料特性が予測できるように、次に作製する材料を適切に選定するAI技術を開発した。本技術を利用して正確な予測が実現できると、材料の「構造」と「特性」の関係が明らかになり、特性の発現起源の明確化・材料開発指針の迅速化が可能となる。本技術の有用性を確認するために、一例としてポリオレフィンを対象材料とした。その結果、判断基準を持たず、無作為に材料作製を進める場合と比べて、開発したAI技術を利用することで材料作製回数を少なくしても機械学習の予測精度を良くできることを示した。
著者らのAIによる実験計画は、測定の容易な実験データを用いて、測定の困難な特性データを予測する際の予測精度を高めることもできる。さらに、本手法は機械学習による正確な予測を実現するために必要な実験回数を削減できるため、近年注目されている実験自動化技術と組み合わせることで、材料開発の高速化に貢献できる、と著者らは述べている。

著者らのチームは、現在、この技術をさらにより良くするために日本の化学メーカーと協力し手法開発を続けている。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202109290858-O1-fTQ8aPG8

図の説明:XRDやDSCのデータを用い、なるべく少ない材料作製回数で正確に材料特性が予測できるように、次に作製する材料を適切に選定するAI技術を開発した。これは、新材料の設計や既知材料の新しい用途を見出す、といったことに有用である。

 
論文情報
タイトル:Experimental design for the highly accurate prediction of material properties using descriptors obtained by measurement
著者:Ryo Tamura*, Yuki Takei, Shinichiro Imai, Maki Nakahara, Satoshi Shibata, Takashi Nakanishi &Masahiko Demura
* Materials Open Platform for Chemistry, National Institute for Materials Science (NIMS), 1-1
Namiki, Tsukuba, Ibaraki, 305-0044, Japan (E-mail: TAMURA.Ryo@nims.go.jp)
引用:Science and Technology of Advanced Materials: Methods Vol. 1 (2021) p. 152

最終版公開日:2021年9月28日
本誌リンク https://doi.org/10.1080/27660400.2021.1963641(オープンアクセス)
Science and Technology of Advanced Materials: Methods (STAM Methods) 誌は、国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS)とEmpaが支援するオープンアクセスジャーナルです。

企画に関する問い合わせ: stam-methods@ml.nims.go.jp

情報提供元: PRワイヤー
記事名:「 最先端材料科学研究:適切な実験計画で機械学習による材料特性予測の精度を向上