老後資金準備の為のiDeCo活用を例え話に
日頃から運動不足を感じていたAさんは、近所の公園にジョギングコースがあるのを発見したので、思い切って走ってみようと思いました。
Aさんは友人のBさんに対して、この話をしたところ、Bさんも日頃から運動不足を感じていたため、Aさんと一緒に走ってみようと思いました。
二人はジョギングをする日時を決めたのですが、Bさんは直前になって走るのが面倒になってしまい、Aさんとの約束を断ったのです。
ただAさんはやる気になっていたため、ジョギングコースのスタートラインにひとりで向かいました。
この話の中に登場する
「運動不足」を、「老後資金の不足」に置き換え
「ジョギング」を「老後資金の準備」に置き換える
と、次のようになると思います。
スタートラインに立つ意欲がないと、老後資金の情報は役に立たない
現在は公的年金に対する不安が広がっているため、お金に関する雑誌やウェブサイトを見ると、「老後資金は○○円準備しよう」や、「老後資金は○○を活用して準備しよう」などといった情報が、よく掲載されております。
2017年1月から今まで加入資格のなかった公務員や専業主婦も、個人型の確定拠出年金(以下では愛称に決まった「iDeCo」で記述)に加入できるようになったので、最近はこの制度の情報が多いように感じます。
こういった情報はAさんのように、ジョギング(老後資金の準備)するためのスタートラインに立つ意欲を持った方には、とても価値があると思います。
しかしBさんのように、運動不足(老後資金の不足)を感じているけれども、ジョギング(老後資金の準備)するためのスタートラインに立つのをためらっている方には、あまり価値があるとは思えないのです。
その理由として情報を入手しても、何も行動を起こさなければ、その情報が役に立つ場面が来ないからです。
ですからBさんのような方が当面に必要なのは、ジョギング(老後資金の準備)するためのスタートラインに立つきっかけや、意欲を与えてくれる情報であり、手段だと考えております。
事業主もiDeCoの掛金を拠出できる「小規模事業主掛金納付制度」
現行のiDeCoで掛金を拠出できるのは、それに加入している本人だけになります。
しかし法改正が実施されたため、企業年金を導入していない従業員数が100名以下の小規模事業主は、iDeCoに加入している従業員が掛金を拠出する際に、それに上乗せして、掛金を拠出できるようになります。
これは「小規模事業主掛金納付制度」と呼ばれ、従業員の福利厚生のために、企業年金を導入したいけれども、そのための手続きなどを負担に感じる中小企業の事業主を、支援する制度です。
2018年5月までには詳細が決定され、本格的にスタートする予定になっております。
事業主による上乗せの開始が、iDeCoに加入するきっかけになる
このような小規模事業主掛金納付制度が、お勤め先の会社で導入されたなら、積極的に利用すべきだと思います。
その理由として事業主による上乗せの拠出の開始が、iDeCoに加入するきっかけになるからです。
また事業主による上乗せの拠出により、運用する資金が大きくなれば、その分だけ老後資金が貯まりやすくなるからです。
自分のお金が使われると、老後資金の準備に対する意欲が高まる
お勤め先の会社が企業型の確定拠出年金を導入している場合、その掛金を拠出するのは、原則として事業主になります。
ただ会社によっては「マッチング拠出」という制度が設けられ、従業員も掛金を拠出できるようになっているのです。
もしお勤め先の会社が、この制度を導入しているのなら、積極的に利用すべきだと思います。
その理由としてマッチング拠出のために、自分のお金が使われるようになると、それを無駄にしたくないという気持ちが生じて、老後資金の準備に対する意欲が高まるからです。
例で解説 日本人の几帳面さが、英語の習得を妨げている
少し前にテレビを見ていたら、ある英会話講師の方が、日本人が他国の方より、英語が苦手な理由について解説しておりました。
それによると日本人は几帳面なため、文法ミスのない英語を話す必要があると思っているので、十分に文法を習得するまで、英語で積極的にコミュニケーションをしないそうです。
一方で他国の方は、そういった意識が弱いため、十分に文法を習得する前から、英語で積極的にコミュニケーションをしており、そういった経験を通じて、英語が話せるようになるそうです。
とにかく始めてみることが、老後資金の準備に対する意欲を高める
iDeCoも英語と同じように、十分に知識を習得してから始めるのではなく、基本的な知識を習得したら、とにかく始めてみることが大切だと思います。
その理由としてiDeCoの掛金を拠出するために、自分のお金が使われるようになると、上記のマッチング拠出と同じように、それを無駄にしたくないという気持ちが生じて、老後資金の準備に対する意欲が高まるからです。
またiDeCoを通じて、例えば日経平均株価に連動した値動きをするインデックスファンドを購入すると、今まで興味がなかった経済のニュースなどが気になるようになり、特に勉強するつもりはなくても、投資に関する知識が身に付くからです。
納得できない点は変更でき、掛金の拠出はいつでも止められる
十分に知識を習得していないのは不安かもしれませんが、iDeCoを始めるにあたって、自分で決めないといけない運営管理機関(窓口となる金融機関)、掛金の金額、運用商品については、納得できなければ後で変更できます。
またiDeCoの掛金を拠出するだけの、金銭的な余裕がなくなった場合には、いつでも掛金の拠出を止められます。
すでに拠出した掛金は原則として、障害状態になったり、死亡したりしないかぎり、最低でも60歳にならないと引き出せません。
ただ国民年金の保険料の納付を免除され、iDeCoの加入資格がなくなった時には、その他の要件を満たすことにより、脱退一時金として引き出せる場合があります。
早く始めた方が、税制上の優遇を長期に渡って受けられる
iDeCoに加入できるのは、現在は60歳までになっており、また拠出できる掛金にも、一定の上限が設けられております。
そのため早く始めた方が、iDeCoによる税制上の優遇を長期に渡って受けられ、こういった点もとにかく始めてみることが、大切な理由になるのです。
このようにiDeCoの基本的な知識を習得したら、それを始めるためのスタートラインに立ち、詳細については走りながら考え、走りながら学ぶくらいの方が、老後資金は貯まっていくような気がするのです。(執筆者:木村 公司)
情報提供元: マネーの達人