年金収入や低収入で蓄えが中々出来ない方、突然の介護で退職を余儀なくされ、年収の減少や失業で生活が困窮する方、介護と金銭問題は隣り合わせです。
蓄えや収入がなく必要な介護サービスが利用できなかったり、介護サービスにお金がかかりすぎてしまい生活が苦しくなるケースは少なからずあります。
そんな場合、どのような制度があるのでしょうか?
今回は厚生労働省が実施している公的な貸付制度と、それを受ける前の段階で金銭問題を解決できる制度を合わせて紹介したいと思います。
生活福祉資金貸付制度
「生活福祉資金貸付制度」は、低所得者や高齢者、障害を抱える方の生活を経済的に支えると共に、在宅福祉と社会参加の促進を図る事を目的としています。
この貸付制度は後述する「生活困窮者自立支援制度」と連携しています。貸付の対象となるのは以下の世帯です。
・ 低所得世帯 … 必要な資金を他から借り受ける事が困難な世帯(市町村民税非課税程度)
・ 障害者世帯 … 身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた者等の属する世帯
・ 高齢者世帯 … 65歳以上の高齢者の属する世帯
この制度には様々な貸付資金の項目がありますが、介護に関する貸付は「福祉資金」に分類されます。
「介護サービス、障害者サービス等を受けるのに必要な経費及びその期間中の生計を維持するために必要な経費」であれば以下の通りとなります。
貸付上限の目安
介護サービスを受ける期間が1年を超えないときは170万円
1年を超え1年6か月以内で世帯の自立に必要なときは230万円
据置期間
貸付けの日(分割交付の場合には最終貸付日)から6月以内
償還期間/期限
5年/据置期間経過後20年以内
連帯保証人を原則必要としますが、連帯保証人を立てない場合も貸付は可能です。
その場合は貸付金利子が変わります。
・ 連帯保証人を立てる場合 … 無利子
・ 連帯保証人を立てない場合 … 年1.5%
(参考元:全国社会福祉協議会)
生活困窮者自立支援制度
「生活困難者自立支援制度」とは、平成27年度4月から施行された制度です。
様々な事情があって就職や自立した生活が困難な方の生活全般を包括的に支えるために作られました。
仕事や居住、家計等、様々に複雑・深刻化してしまった暮らしを改善し、自立した生活を再開できるように助ける目的があります。
相談者の生活や就労状況、家庭内の状況を把握し、改善すべき部分や支援が必要な部分を担当者と話し合います。
金銭的な部分をただ支援してくれるものではなく、費用不足や生活が困難になった根本的なところからの解決を手助けし、相談の結果必要があれば公的な貸付のあっせん等も行ってもらえます。
生活保護受給に至る前段階での自立生活を目指しているので、まずはこちらの制度を利用して経済状況や生活状況の改善を目指すのが良いかもしれませんね。(参考元:厚生労働省)
生活保護制度
「生活保護制度」は、生活に困窮する方に対してその程度に応じて必要な保護を行う制度です。
最低限度の生活を保障すると共に、社会的自立を助長する事を目的としています。
対象は世帯単位となり、世帯全体での生活能力等が審査されます。
預貯金がある場合はまずはそれを生活費に充当することとし、生活に利用していない土地や家屋がある場合は売却をし生活費に当てる事とされています。
就業につく事が可能な方は能力に応じて就業することとし、年金や手当てなどを受けている場合はそれを生活費や介護費用に当てる事を前提としています。
また、親族から援助が受けられる場合等は援助を受ける事を優先とし、これらの世帯収入と厚生労働大臣の定める基準で計算される「最低生活費」を比較し、収入が最低生活費に満たない場合は生活保護制度が適用されます。
生活保護受給が確定した後に介護施設への入居を検討する場合、生活保護受給者の受け入れが可能か確認することも大切です。(参考元:大阪市)
お住いの地域の社会福祉協議会の活動もぜひのぞいてみてください。安心材料になります。(社会福祉協議会一覧)
まとめ
「生活困窮者自立支援制度」と「生活保護制度」は直接的に金銭を貸す制度ではありませんが、就業が難しい方や身寄りの無い高齢者の救済になっています。
担当のケアマネージャーに相談をし、状況を一つずつ整理する事でどの制度を使えば良いのか見てくる事でしょう。
必要と判断した場合、各制度の担当者へと取次ぎもしてもらえます。
借りる事は簡単かもしれませんが、出費が減らない現状でそれを返済していく事や、借金をしている状態での生活は気持ちも落ち着かないはずです。
借りる前に制度に頼り、今後の生活を安定した良いものに少しずつ変えていく事が重要ではないでしょうか。(執筆者:佐々木 政子)
情報提供元: マネーの達人