春のお彼岸が過ぎましたが、お寺にお墓参りに行かれた方もいらっしゃると思います。
ところで「坊主丸儲け」という言葉は、かなり古くから使われていますが、現在では税金がとられないというイメージから使われていることが多いようです。
非課税の特典を受けていることは確かですが、それでも営む事業によっては課税され、税務調査で追徴課税をうけることすらあります。
宗教法人等の非課税
株式会社などの法人は、利益を得て所得が発生した場合、法人税や法人地方税(以下「法人税等」)を納める義務があります。
ただし法人格を持つお寺や神社で、宗教法人として認証をうけた法人の事業に関しては、基本的に非課税になります。
これは公益法人、NPO法人、非営利型の一般法人(一般の法人という意味ではなく一般社団法人と一般財団法人の意味)、町内会・PTAなどの任意団体(法人格を持たない団体)においても同様です。
非課税の事業は公益事業と呼ばれます。
もっとも宗教法人や公益法人・NPO法人の設立に関しては、株式会社等より手続きが煩雑で厳しいチェックがあります。
収益事業(34事業)は課税される
宗教法人等であっても、下記の34事業を営んだ場合は、法人税等の課税対象となります。
1. 物品販売業 18. 代理業
2. 不動産販売業 19. 仲立業
3. 金銭貸付業 20. 問屋業
4. 物品貸付業 21. 鉱業
5. 不動産貸付業 22. 土石採取業
その他の飲食店業 23. 浴場業
6. 製造業 24. 理容業
7. 通信業 25. 美容業
8. 運送業 26. 興行業
9. 倉庫業 27. 遊技所業
10. 請負業 28. 遊覧所業
11. 印刷業 29. 医療保健業
12. 出版業 30. 技芸教授業
13. 写真業 31. 駐車場業
14. 席貸業 32. 信用保証業
15. 旅館業 33. 無体財産の提供業
16. 料理店業 34. 労働者派遣業
17. 周旋業
お寺が駐車場を持っていて代金をもらっていたり「31. 駐車場業」、モノを売っていたり「1. 物品販売業」すれば課税対象になります。
物販については、宗教活動とは関係ないグッズ・お土産や、寺で無くても買える線香・ろうそく等の販売は課税されます。
私の知っているお寺で、インストラクターをお迎えしてヨガ教室をやっているところもありますが、「30. 技芸教授業」として課税対象となると考えられます。
収益事業にかかった経費は、課税対象の収益から差し引いて所得計算することが可能です。
また「坊主」個人が(寺からの給与を含めて)所得を得ていれば、これは所得税・住民税の課税対象です。
宗教法人も税務調査され申告漏れ指摘されることも
前述の駐車場に関する所得や線香の販売に関して、収益事業として申告していなかったために、申告漏れを指摘された宗教法人があります。
この宗教法人は1億円規模の追徴課税を受けることになりました。
また精進料理の材料費は、収益事業にかかるもの(希望する参拝者用)であれば収益事業の経費にできますが、宗教活動に係るもの(法要を受けた参拝者対象)まで入れて経費過大計上となり、申告漏れを指摘された宗教法人もあります。
宗教法人の財産を私的流用し、その分が給与(個人に対して法人からの利益供与)とみなされて源泉所得税(給与天引きの所得税)を追徴課税されたケースもあります。
源泉所得税は宗教法人以外の一般企業でも問題になりますが、宗教法人や公益法人など収益事業のみ課税される法人は、源泉所得税を重点的に調査されます。
宗教法人は、収益事業と公益事業を区分して経理・決算を行う必要があるため、丸儲けに見えて結構複雑な事務処理を要求されるのです。(執筆者:石谷 彰彦)
情報提供元: マネーの達人