豊洲市場への移転延期や中止が価格下落要因に






昨年夏の小池都知事誕生によって明らかになったとも言える豊洲市場の汚染問題は、良くも悪くも今後の東京湾岸エリアの不動産価格を大きく振れさせる可能性があります



悪い面では、最新の地下水調査で、過去8回の調査と比べ環境基準を大幅に上回る有害物質が検出されたことにより、豊洲市場への移転延期の長期化や中止の懸念があることです。



マイナスに働くと思われる汚染対策・情報公開問題




また、東京ガスの工場跡地である豊洲市場の敷地で十分な汚染対策が行なわれてきたのかどうかについて、情報公開を含む都の体質に疑念を持たれていることが解決を更に遅らせていると言えます。



こうした状況を受けて、豊洲市場の敷地内で開設予定の観光施設が開業を延期したことも、これまで上昇傾向が続いていた豊洲エリアの不動産価格にマイナスに働くと思われます



今後においては、地下水の調査結果次第ですが、都が他の移転先を検討するような事態になれば、交通網や商業施設の整備見直しにより、周辺の埋立地の佃、月島、勝どき、晴海、東雲、有明の魅力も低下し、当然キャピタルゲイン狙いの投資家は売りに転じるでしょう





不動産価格が鎮静化すれば、実需層にはメリットも


一方、良い面としては、東京オリンピックを材料に実力以上に上昇してきた不動産価格が沈静化し、「職住近接」志向の実需層が、再びリーズナブルな価格でマンションを取得出来る機会が生まれることです。



結婚して子供が出来ても夫婦共働きが当たり前の時代において、湾岸エリアの立地や充実した保育所などは他に代え難いものがあるなか、国内外の富裕者層の買いで坪単価250~300万円まで上昇したマンション価格は、実需層にとって手が届きにくい水準となっています。



今後の需給動向を見ると、供給面ではこのエリアの中心を占めるタワーマンションの既分譲戸数が約4万戸に達しており、今後数年間で新たに2万戸超の建設が予定されています









予想に反して早期に進展すれば良い面と悪い面は逆転する可能性あり


今後建設予定のタワーマンションは、不動産会社の土地の仕入れ値が高く、簡単に値下げできないとの見方があります。



しかし、豊洲市場問題が長引けば、中古市場の値下がりに引きずられる形で修正を余儀なくされるでしょう



無論、予想に反して豊洲移転が早期に進展すれば、上記の良い面と悪い面は逆転する可能性が高くなるでしょう。



いずれにせよ、豊洲市場問題の行方が、今後の東京湾岸エリアの不動産価格を大きく振れさせるカギを握っていると見ておいた方が良いでしょう。(執筆者:青沼 英明)



情報提供元: マネーの達人
記事名:「 豊洲市場汚染による「東京湾岸エリア」の不動産価格への影響は?