基礎年金3割底上げの裏側――会社員にとっての衝撃的な影響とは?
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一見すると良いニュース、しかし会社員には最悪の事態?

2024年11月25日に報道された「基礎年金3割底上げ案」。このニュースを聞いて、多くの人は「年金が増えるなら良いことでは?」と思うかもしれません。しかし、この制度の本当の仕組みを知ると、決して良いことではないことがわかります。特に会社員にとっては大きな負担増になる可能性があるのです。

まず、日本の年金制度には大きく分けて「国民年金」と「厚生年金」の2つがあります。

  • 国民年金:自営業者、フリーランス、パート・アルバイト、無職の人が加入する年金。

  • 厚生年金:会社員や公務員が加入する年金。会社が保険料を半分負担するため、会社員の方が支払い額は多いが、その分将来的に受け取れる額も多い。

今回の「基礎年金3割底上げ案」とは、将来的に国民年金の受給額が減る予定だったところを、現在の水準で維持することで、結果的に3割増しの給付となるというものです。一見すると「国民年金をもらう人にとっては良い改革」に見えますが、実際のところ、その財源がどこから来るのかが問題になっています。

国民年金受給者の「増額」の真実

この改正によって、国民年金を受け取る人の受給額が本当に増えるわけではありません。

本来、現在の制度のままでは国民年金の受給額は今後も下がり続ける予定でした。これを、2036年度の水準で維持しようというのが今回の改正の狙いです。つまり、将来的に本来減るはずだった額を減らさないだけであり、「年金が増える」わけではなく、「減るはずだった分を減らさない」だけなのです。

厚生年金の受給者に襲いかかる負担増

一方で、厚生年金を受け取る会社員にとっては大きなデメリットがあります。なぜなら、この「国民年金の給付水準維持」のための財源を、厚生年金の積立金の一部から捻出することが検討されているからです。つまり、厚生年金の積立金を使って国民年金を補填するという仕組みになります。その結果、将来的に厚生年金の給付水準が引き下げられる可能性が高いのです。

たとえば、現在の制度では会社員が毎月もらえる厚生年金が20万円だったとしましょう。この「基礎年金3割底上げ案」によって、その20万円から7,000円ずつ引かれる形になり、実際に受け取れる年金は毎月19万3,000円に減る可能性があるのです。

さらに、この削減は65歳から100歳までの35年間続くため、合計すると約294万円もの年金が減る計算になります。つまり、国民年金受給者の給付水準を維持するために、厚生年金受給者の年金が削られるという仕組みなのです。

国民年金・厚生年金はどちらも中長期的に減っていく

ここで重要なポイントは、国民年金も厚生年金も、将来的には減少する傾向にあるということです。

  • 国民年金は、日本の高齢化と少子化の影響で、財政的に厳しい状態が続いています。本来、2057年まで受給額が下がる見通しでしたが、今回の改正では2036年度の水準で維持しようとしています。しかし、それ以降の年金財政が安定する保証はありません。

  • 厚生年金もまた、支える若年層の減少によって受給額が減少する可能性があります。現在でも、支払った保険料に対するリターンは以前より悪化しており、「将来的にはさらに受給額が下がる」と見込まれています。

つまり、今回の改正は「国民年金の減少を一時的に止めるために、厚生年金の財源を使う」というだけであり、年金財政の根本的な解決策ではありません。中長期的には、年金全体が縮小する流れは変わらないのです。

106万円の壁撤廃――厚生年金加入を促すためのプロパガンダ

さらに、この基礎年金の底上げ案と密接に関係しているのが「106万円の壁撤廃」です。これは、パート・アルバイトなどの低所得層を社会保険に加入させることを目的とした改正案で、週20時間以上働く人はすべて社会保険に加入させるというものです。

もともと、社会保険(厚生年金+健康保険)への加入には条件がありました。従来の制度では、以下の4つの条件を満たした場合にのみ、社会保険に加入しなければなりませんでした。

■従来の社会保険加入条件

✅ 事業所の規模 → 従業員51人以上の会社
✅ 給与の額 → 月8万8,000円以上
✅ 労働時間 → 週20時間以上
✅ 雇用期間 → 2か月以上の見込み

しかし、新制度ではこれらの条件のうち、「事業所の規模」「給与の額」「雇用期間」が撤廃され、以下のように変わります。

■新制度の社会保険加入条件

労働時間 → 週20時間以上(この条件だけが残る)

つまり、今まで「小さな会社で働いているから」「給与が少ないから」「短期間の仕事だから」といった理由で社会保険に加入しなかった人も、週20時間以上働いていれば自動的に厚生年金に加入しなければならなくなるのです。

参考:新旧の社会保険加入条件の比較

従来の制度

新制度(案)

事業所の規模

51人以上

撤廃

給与の額

88,000円/月 以上

撤廃

労働時間

週20時間以上

週20時間以上

雇用期間

2か月以上

撤廃

この制度改正によって、政府は「厚生年金加入者 vs 未加入者」という対立構造を作り、次のような世論を誘導しようとしているものと思われます。

  • 「厚生年金に入らない人はズルをしている」

  • 「厚生年金に加入しない人のせいで、会社員の負担が増えている」

  • 「全員が厚生年金に加入すれば、公平になる」

こうした意識を社会に広めることで、未加入者を悪者のように見せ、最終的に「全員を強制的に厚生年金に加入させる」方向へ持っていこうとしている可能性があるのです。

新NISAを活用し、資産を守る

では、このような状況の中で、会社員はどのように資産を守ればよいのでしょうか?その答えの一つが「新NISAの活用」です。

新NISAは、年間360万円、生涯1,800万円の非課税投資枠を持ち、非課税期間が無期限という点で、アメリカのRoth IRAと比べても圧倒的に使いやすい制度です。

この新NISAを活用することで、自分自身の資産を国に頼らずに増やすことが可能になります。たとえば、生涯投資枠の1,800万円を使い切り、年利5%で運用すると、30年後には約7,800万円まで増える計算になります。つまり、新NISAを活用するだけで、国の年金制度に依存せずに、自分の将来の資産を形成できるのです。

政治に関心を持つことの重要性

しかし、資産を守るためには、ただ投資をするだけではなく、政治にも関心を持つことが不可欠です。なぜなら、今回の「基礎年金3割底上げ案」のように、政府の制度変更によって、私たちの生活や老後資金に直接影響を与えることがあるからです。

例えば、今回の制度を知らなければ、

  • 「自分の厚生年金が減るなんて知らなかった」

  • 「国民年金が3割増えるって言っていたから安心していた」

  • 「気づいたときには年金が減っていて、老後の生活が苦しくなった」

という状況になりかねません。

一方、こうした情報を知っていれば、

  • 「厚生年金の削減を見越して、自分で資産形成をしておこう」

  • 「新NISAをフル活用して、年金の不足を補う準備をしよう」

  • 「政府の政策が変わる可能性も考えながら、将来の計画を立てよう」

と、事前に対策を考えることができます。

知っているか知らないかで、取れる行動は大きく変わります。情報を知らないと、ただ国の制度変更に振り回され、行き当たりばったりの人生になってしまうのです。

まとめ:勉強しないと搾取される時代

私たちは「知らない」というだけで損をする時代に生きています。政府は必ずしもすべての情報を分かりやすく伝えてくれるわけではなく、報道の見出しだけを見ると「良い制度のように見える」ことも少なくありません。

しかし、実際の仕組みを調べてみると、負担を強いられるのは会社員であり、年金財政は中長期的には悪化し続けることが分かります。こうした情報を知り、対策を考えられるかどうかが、将来の生活を左右するのです。「国に頼るのではなく、自分で学び、自分で対策を考える」ことが、これからの時代を生き抜く上で最も重要になってくるでしょう。

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情報提供元: マネーの達人
記事名:「 基礎年金3割底上げの裏側――会社員にとっての衝撃的な影響とは?