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会社勤めしている人は年末になると何かと忙しく、経理や事務の方は「年末調整」の準備に追われることでしょう。
今回が初めての年末調整という新入社員の方もいるかもしれません。
そこでこの記事では、年末調整についてできるだけわかりやすく解説するので、参考にしてください。
画像元:イオン銀行
「年末調整」とは、最終的な年税額を年末に計算して精算する手続きのことです。
従業員の所得税は、毎月の給与・賞与などが支給される際にそこから控除(源泉徴収)されています。
しかし、毎月の給与控除額の合計と本来の年税額が一致しないケースも少なくありません。
1年分の収入が確定した時点で正確な所得税額を計算し、以下の方法で過不足を精算するのが年末調整です。
・本来の年税額の方が多い→追加で徴収される
・毎月の給与控除額の合計の方が多い→払い過ぎた分が還付される
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日本では、会社がその支払い金額から所得税を天引き(徴収)して国に納付しており、これを「源泉徴収制度」といいます。
元々は年末調整がなく、従業員全員が確定申告を行っていましたが、税務署が混雑したり申告忘れが増えたりしたため、1940年に所得税に対して導入されました。
源泉徴収により、従業員の負担が軽減されたというわけです。
画像元:ジョブメドレー
年末調整の対象となっているのは、原則として勤務先に「扶養控除等申告書」を提出している人です。
条件を満たしていれば、正社員だけでなくパート・アルバイトの人も年末調整の対象となります。
画像元:国税庁
年末調整をしないと、源泉徴収されている年収103万円以下の人は、毎月の給与控除額の合計の方が多くても還付金を受け取れません。
源泉徴収されている年収103万円以上で年末調整をしない人は、所得税の納付義務が発生して確定申告の必要があります。
確定申告も忘れてしまうと年率7.3%の延滞税(2か月超過分は年率14.6%)が発生する可能性もありますので、注意してください。
画像元:ジョブメドレー
年末調整では、給与の総額から課税対象とはならない「控除」を差し引いた後の金額に対して、所得税が発生します。
申告できる控除を最大限申告すれば、税金を多く徴収されずに済むというわけです。
年末調整で受けられる控除は、以下の14種類です。
細かい所得金額などは割愛して、控除の対象者だけ記載します。
・扶養控除:養っている親族がいる人
・障害者控除:納税者本人・配偶者・扶養親族が所得税法の障害者に該当する場合
・勤労学生控除:学校や職業訓練校などの学生・生徒
・寡婦控除:夫と離婚後婚姻しておらず、合計所得金額500万円以下で扶養親族がいる人など
・ひとり親控除:婚姻をしていないか配偶者の生死が明らかでない人で要件を全て満たす人
・基礎控除:合計所得金額に応じて差し引かれる(2,400万円以下で48万円)
・配偶者(特別)控除:合計所得金額が1,000万円以下で配偶者の収入が一定以下の場合に差し引かれる
・所得金額調整控除:収入850万円超で本人が特別障害者、23歳未満の扶養親族がいる、配偶者か扶養親族が特別障害者のいずれかに該当する人など
・社会保険料控除:納税者が直接払った国民年金、国民年金基金の掛金について受けられる(給与から天引きされる社会保険料を除く)
・小規模企業共済等掛金控除:経営者向けの退職金共済制度で掛金を支払った分について受けられる
・生命保険料控除:生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を支払った場合に受けられる
・地震保険料控除:地震保険の保険料を払った場合に金額に応じて受けられる
・住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除):住宅ローンなどを利用してマイホームの新築や増改築をおこなった場合に受けられる控除
自分に適用できそうな控除がないか、しっかりチェックしましょう。
年末調整自体は会社が行ってくれるのですが、その際に従業員は最大4種類の申告書を提出しなければなりません。
その際の添付書類などもありますので、上述の14種類の控除と突き合わせてご覧ください。
「給与所得者の扶養控除等の(異動)申告書」では、扶養控除、障害者控除、勤労学生控除、寡婦控除、ひとり親控除を申告できます。
年末調整の対象者全員が提出する必要があり、以下に該当する人は追加の添付書類も提出しなければなりません。
・学生→学生であることを証明する書類
・基礎控除、配偶者(特別)控除及び所得金額調整控除を受けようとする従業員:親族関係書類及び送金関係書類
令和6年からは「簡易対応様式」という新たな申告書も登場し、配偶者や扶養親族に住所や所得などの変更がない場合は、記入項目を大幅に減らせます。
「給与所得者の基礎控除、配偶者(特別)控除及び所得金額調整控除申告書」という長ったらしい名前の申告書は、3つの控除が1つにまとめられています。
ちなみに令和6年には懐かしの「定額減税」も行われた影響で、「令和6年分基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼年末調整に係る定額減税のための申告書兼所得金額調整控除申告書」という、嫌がらせとしか思えない名称になりました。
テストには出ないので、覚える必要は全くありません。
基礎控除、配偶者控除、配偶者特別控除、所得金額調整控除を申告できます。
年末調整において基礎控除、配偶者(特別)控除及び所得金額調整控除を受けようとする従業員は、提出しなければなりません。
「給与所得者の保険料控除申告書」では、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除を申告できます。
年末調整において保険料控除を受けようとする従業員は、提出しなければなりません。
その際、保険会社などが発行する証明書が必要となりますが、電子データでの添付も認められています。
今年から「あなたとの続柄」欄が削除され、少しシンプルになりました。
「住宅借入金等特別控除申告書」では、住宅借入金等特別控除の申告ができます。
年末調整で対応できるのはローン2年目以降で、1年目は確定申告が必要です。
借入先が発行した「住宅取得資金にかかる借入金の年末残高等証明書」を参照し、金額を記載しましょう。
節税するためには年末調整が欠かせません。
よく分からないことも多い年末調整ですが、よくある質問を回答とともにまとめました。
一般的に、11月下旬~12月が年末調整の書類の提出期限となっています。
控除に必要な添付書類が10月頃から届くこと、控除内容が合っているかなどの確認を行うことがその理由です。
翌年1月を過ぎると、万が一間違いがあっても会社側での修正ができず、従業員自身で確定申告をしなければなりません。
転職先(新しい会社)で年末調整を行ってください。
退職すると前の会社から源泉徴収票が送られてきますので、それを転職先に提出して手続きします。
ただし、12月入社で12月中に転職先で給与の支払いがなければ転職先で年末調整されず、前の会社の年末調整は自分で確定申告しなければなりません。
画像元:マネーフォワード
年末調整をしていれば、確定申告の必要がないケースが多いです。
ただし、以下に該当する人は確定申告が必要となりますので、注意してください。
・年末調整を忘れた
・副業で20万円以上の収入がある
・給与が2,000万円以上
・医療費控除、寄附金控除、雑損控除、青色申告特別控除も申告したい
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ふるさと納税については、年末調整で所得控除を行うことができません。
「ふるさと納税ワンストップ特例制度」の対象でない場合は、確定申告をしてください。
所得税の納税義務がない年収103万円以下のアルバイトは、基本的に年末調整の必要がありません。
ただし、以下に該当する人は年末調整が必要です。
・1年間に1度でも月給が8万8,000円以上になった
・「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出して源泉徴収されている
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控除を知らずに控除を受けられなかった人も、5年以内であれば、還付申告することで払い過ぎた税金を戻せます。
「所得税の更正の請求書」に必要事項を記入し、該当年の証明書を添付して所轄の税務署に提出してください。
年末調整は、おおむね11月~12月に行われますが、従業員の多い会社は早めに、従業員の少ない会社は遅めに手続きをする傾向です。
従業員がすることは会社に申告書を提出することですが、そのためには添付書類が必要なケースもあります。
保険会社などが発行する証明書、金融機関の残高証明書などを準備し、年末調整に備えてください。
国税庁のサイトから年末調整の申告書の入力用ファイル(PDF)をダウンロードできるので、作っておくのもいいでしょう。
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