【年金だけでは余裕ない】生活費を確保する「公的リバースモーゲージ」 不動産担保型生活資金の利用法
不動産担保型生活資金は、年金だけでは余裕がない生活費を確保する方法として注目されています。
ただし、さまざまな要件があるので、誰でも利用できるわけではありません。
そこで、不動産担保型生活資金の概要や利用条件、注意すべきポイントなどについて解説します。
不動産担保型生活資金とは
住み慣れた自宅に住み続けたいという高齢者の方を対象とした不動産を担保として生活資金を貸し付ける制度です。
国が生活福祉資金貸付制度の一つとして制度化したもので、全国各地の社会福祉協議会が運営しています。民間でお金を借りるのは不安だという高齢者に向いているかもしれません。
自宅があっても生活資金に余裕がない場合、不動産を担保にして、生活費を月々借り入れます。
そして、借り受けた高齢者が死亡、または契約終了後に対象の不動産を処分して返済します。民間のリバースモーゲージに似ていることから「公的リバースモーゲージ」とも言われています。
ただし、自宅のある高齢者であれば誰でも利用できるわけではなく、対象が限られています。
以下の事項すべてに該当する高齢者世帯です。
・ 借入申込者が単独で所有、または配偶者との共有する不動産に居住していること
・ 不動産に利用権や担保権が設定されていないこと
・ 配偶者またはその親以外の同居人がいないこと。かつ、世帯の構成員が原則として65歳以上であること
・ 世帯が市町村民税の非課税世帯または低所得世帯であること
・ 暴力団員が属する世帯ではないこと
不動産担保型生活資金の概要
不動産担保型生活資金の貸付内容と償還期限については、以下のようになります。
貸付限度額：土地の評価額の70%で評価額は1,500万円以上
貸付期間：借受人の死亡時までの期間または貸付元利金が貸付限度額に達するまでの期間：貸付額：1月あたり30万円以内の額を3か月分ごとにまとめて貸付
貸付利子：年利3%または毎年4月1日時点の長期プライムレートのいずれか低い利率
償還期限：借受人の死亡など貸付契約の終了後、措置期間が3か月あり、償還期限となる。
償還期限を過ぎた場合は、償還完了までの間、延滞利子（年3.0％）が発生する
償還の担保措置：居住する不動産に根抵当権等を設定。推定相続人の中から連帯保証人1名を選任
下記の図は、不動産担保型生活資金の仕組みで、問い合わせや申込みは各地の社会福祉協議会になります。
≪画像元：神奈川県社会福祉協議会≫
不動産担保型生活資金の注意点
不動産担保型生活資金については、対象者の要件の他にもさまざまな注意点がありますので、利用する場合は、よく考えることが肝要です。
注意点1：使い道は生活資金に限定
不動産担保型生活資金は、生活資金に限定されています。
したがって、介護が必要になって介護施設に入居した場合にその費用に充てることはできません。
注意点2：土地の評価によって貸付限度額が変わる
不動産担保型生活資金は、貸付期間中3年ごとに評価を行います。
従って、土地の評価額が下がると融資限度額も下がってしまいます。
注意点3：金利が上がる可能性がある
不動産担保型生活資金の貸付利率は、年3％または毎年4月1日時点の長期プライムレートのいずれか低い利率です。
長期プライムレートが上昇した場合、金利が上がってしまいますので注意しましょう。
注意点4：契約者である夫が死亡した場合、妻が家に住めなくなってしまう可能性がある
夫婦で自宅に住んでいて、貸付限度額に達した後に夫が死亡した場合、契約は終了となります。
その場合、自宅を売却して借りているお金を返さなければいけないので、妻は住み続けることができなくなります。ただし、貸付限度額に達していない場合は、住み続けることは可能です。
不動産担保型生活資金と民間のリバースモーゲージの違い
最近よく耳にするリバースモーゲージですが、その意味は「逆の住宅ローン」になります。
住宅ローンは、初めに一括でお金を借りて家を建て、その後分割して返済します。
ところが、リバースモーゲージはその逆で、自宅を担保に月々お金を借り入れる仕組みです。公的リバースモーゲージと言われている不動産担保型生活資金と主に金融機関が扱っている民間のリバースモーゲージの違いについて知っておきましょう。
1つ目に違いは、対象者です。
不動産担保型生活資金の対象者は65歳以上の市町村税非課税世帯または低所得者です。
民間のリバースモーゲージは、65歳未満でも低所得者以外でも利用できます。2つ目は、対象となる建物です。
不動産担保型生活資金は、一戸建てのみですが、民間のリバースモーゲージはマンションも対象となります。3つ目は、対象建物の評価基準です。
不動産担保型生活資金は、評価額1500万円以上が条件ですが、民間のリバースモーゲージは評価基準より低くても借りることができます。4つ目は、資金の使い道です。
不動産担保型生活資金は、生活資金に限られていますが、民間のリバースモーゲージは制限が緩く、旅行や介護施設の入居資金にも充てることができます。
長い目で考えましょう
老後の生活資金に不安がある場合は、住み続けながら自宅を担保にお金を借りられる不動産担保型生活資金は、高齢者にとって助けとなる資金です。
しかし、所得に制限があり、ある程度の年金を受給している場合は、利用できません。
さらに使い道も生活資金に限られています。不動産担保型生活資金を借りる場合は、社会福祉協議会でよく相談をして長い目で考えることをおすすめします。
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