- 週間ランキング
国税庁は、令和6年6月21日に令和5年度の査察調査の実績を公表しました。
マルサのガサ入れは1年間でどれくらい実施されているのか、一般人のところにも来るのか?
マルサ(査察)が調査対象とする事案は時代によって変化しておりますので、今回は国税庁が発表した資料(※)を基に、マルサが重点的に調査している事案と、取り締まりを行った事案を紹介します。
※令和5年度 国税庁 査察の概要(pdf)
消費税は、売上に係る消費税から、仕入れに係る消費税を差し引いた額を納めることになります。
売上よりも仕入れに係る消費税の方が大きい場合、確定申告をすることで税金が還付になることがありますが、還付申告自体に問題は特にありません。
しかし、消費税の仕入税額控除制度や輸出免税制度を悪用し、不正行為により消費税の還付を受ける事業者等もいることから、不正受還付事案に対して査察調査を実施しています。
摘発された主なケースとしては、架空の課税仕入れや架空の輸出免税売上を計上して不正に還付を受け取った事案です。
令和5年度の消費税の告発件数は27件ですが、そのうち消費税不正受還付事案の件数は16件と、消費税に対する査察調査の約6割は不正還付関連の事案です。
所得税や法人税は申告納税方式を採用しているため、無申告事案を放置することは制度の崩壊に繋がることから、無申告事案に対する取り締まりも厳しく行われています。
令和5年度の無申告事案に対する告発件数は16件で、アフィリエイト事業など、インターネット取引関係の無申告が摘発されているのが近年の特徴です。
査察調査だけでなく、国税当局が全体で力を注いでいるのが国際事案に対する調査です。
国際取引は国内取引に比べ国税当局の目が届きにくいことから、国際取引を利用しての脱税が行われているため、法整備および他国との情報交換が積極的に行われています。
国際事案として摘発されたケースとしては、外国法人を利用しての不正行為や、海外に資金を隠していた事案などがあり、令和5年度の告発件数は23件です。
先に挙げた「消費税事案」・「無申告事案」・「国際事案」は、税務署職員が担当者として行う税務調査でも重点事案として掲げられていますが、査察調査の重点事案の中には社会的波及効果が高いと見込まれる事案も含まれています。
社会には脱税行為による租税回避を指南する人やアドバイスをする人が存在し、指南者および実行者を放置すれば国の税収が減るだけでなく、適正公平な課税が実現されなくなってしまいます。
国税庁は納税者の自発的な納税義務の履行を適正かつ円滑に実現することを使命としており、その取り組みの一つとして適正・公平な課税の実現がありますので、適正・公平な課税の実現が脅かされる租税回避行為をした者や、その指南者を厳しく取り締まっています。
国税庁の「令和5年度 査察の概要」の資料によると、脱税によって得た不正資金は高級車の購入資金などとして使われた事例がある一方、多くは現金や預貯金として存在していたそうです。
不正資金を隠す場所はさまざまですが、現金については天井裏や階段下収納、 蔵に置かれた木箱など、昔とあまり変わりません。
一般の方が査察調査を受けることはありませんが、高額な脱税は査察対象となりますので、多額の利益等を得た際は適正に申告手続きを行ってください。