良質なマンションの維持に欠かせない法律「区分所有法改定」の動き その主な見直し点について

区分所有法(くぶんしょゆうほう)は、マンション住まいをする上で非常に重要で知っておかなければならないマンション暮らしに関係する法律です。

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特に、築年数が古いマンションの所有者にとっては、とても身近な法律といえます。

築年数が古いマンションの所有者にとっては、とても身近な法律です

区分所有建物とはなにか

まず、「区分所有」とは、住戸ごとに売買する分譲マンションのように建物が独立した各住宅部分から構成されている場合、建物の独立した各住宅部分を所有することを意味し、その所有者を「区分所有者」といいます。

では、「区分所有建物」の定義は、次の2つの要件を満たすことが必要とされています。

1つ目は構造上の独立性、これは建物の各住宅部分が他の部分と壁等で完全に遮断されていること、

2つ目は利用上の独立性、これは建物の独立した各住宅部分が一つの住居として利用可能であること、などです。

区分所有法とはなにか?

区分所有法は、一棟のマンション等の区分所有建物に関する所有者相互の利害関係や管理運営について定めた「建物の区分所有者等に関する法律」のことです。

具体的には

・ 区分所有者が単独で所有する「専有部分」に関する権利を定める法律

・ 区分所有者が共同で管理する「※共用部分」に関する権利を定める法律

 ※共用部分は、例えば、エントランスロビー、廊下、階段、エレベーター等を指し、共同で利用する権利をもちます

・ 各区分所有者がその建物の敷地を共同で利用する「敷地利用権」を定める法律

・ ※管理組合の設立、管理規約・集会の開催・規約の作成等に関する規定を定める法律

 ※管理組合とは区分所有法において、区分所有者全員で組織を設立し、建物と敷地などの管理を行う組織で、集会の開催や規約の作成などの活動を行っています。 

また、マンションの各所有者は否が応でも管理組合の一員(組合員)となります。

集会における決議の基準や種類を定める

などです。

集会における決議の基準や項目・種類とは

集会での決議とは、たとえば、マンションの管理組合が集会を招集し、建物の一部が滅失、または建物の老朽化などによる建て替え、共用部分の不当使用、迷惑行為などに対する措置等の事柄について取り上げ、それらの対策を決定した内容を指します。

決議の基準は、(1)「区分所有者」と(2)「区分所有者が保有している専有部分の床面積の保有割合に応じて持つ権利である議決権」の二つを併用して集会の決議が行われます。

(1) 区分所有者の数

区分所有者の数としては、たとえば、専有部分を2人で所有(共同名義)している、または、専有部分を2住戸所有していても、“1”と数えます。

(2) 区分所有者が保有している専有部分の床面積の保有割合に応じて持つ権利である議決権

専有部分の床面積に応じた議決権について、管理規定で議決権に関する規定を設けていない場合は、原則として、たとえば、区分所有者Aさんの専有面積が70平方メートル、マンションの各住戸の専有床面積の合計が2,100平方メートルとした場合、Aさんの議決権は、2,100分の70となります。

ただし、各住戸の専有面積がほぼ同じ場合等においては、各住戸1戸につき“1”とするような、異なる方法を管理規定で定めることも可能です。

現行の決議項目には、「普通決議」と「特別決議」の2つがあります

普通決議

普通決議」は共用部分の利用・改良等の行為をルール化した決議で、具体的な種類は、共用部分や敷地等の管理、管理者の選任・解任、建物価格の2分の1以下に相当する部分が滅失した場合の復旧などの事項があります。

この決議の基準は、原則として区分所有者数と議決権の各過半数の賛成で可決されます。

特別決議

特別決議」は、普通決議より重要な事項で、具体的には、管理規約の設定・変更・改良、共用部分の重大な変更、建物価格の2分の1以上に相当する部分が滅失した場合の復旧などの事項があります。

この決議の基準は、原則として区分所有者数と議決権の各4分の3以上の賛成で可決されます。

さらに、最もハードルの高い特別決議は、建物の建て替えです。

この決議基準は、区分所有者数と議決権の各5分の4以上の賛成で可決されます。

なぜ区分所有法が改正されるのか、その背景は

法改正される背景としては、

・国土交通省の調べによると、現在の分譲マンションのストック総数(新規に供給された戸数の累積数等)は、2022年末時点で約694.3万戸でした。そのうち、約30年以上前に建てられたマンションは、約36%を占めており、今後マンションの老朽化が急速に進むことが見込まれること

・マンションのオーナーである区分所有者の高齢化に伴い、相続の発生などによって誰も住んでいない物件となり、その所有者も所在不明となるケースの増加が懸念されること

現在の区分所有法では、一例を挙げると、所在が不明となっている区分所有者は決議において反対者として扱われるため、全区分所有者数と議決権割合が、決議で必要とされる賛成数を満たすことが困難となり、建て替えなどの重要決議が成立せず、弊害が生じる可能性が多くなっています。

区分所有法の改正の内容は

この法律の現状と見直しの検討項目については、次のとおりです。

現状1

所在不明の区分所有者は決議において反対者として扱われるため、決議で必要とされる

賛成数を満たすことができない場合もあり、区分所有建物が火災や地震等で損害を受けた場合の復旧または建て替え等の特別決議案が承認されず、区分所有建物のリノベーションが円滑に進まず、それが阻害要因となりうる


見直しの検討

所在不明の区分所有者を決議の母数から除くしくみが検討されている

現状2

集会に不参加、委任状も提出しないため賛否も不明な区分所有者は、決議において反対者として扱われるため円滑な決議の阻害要因となる


見直しの検討

集会出席者だけの多数決による決議とするしくみが検討されている

現状3

共用部分の変更に関する決議の賛成数は4分の3の多数決が必要であり、共用部分の設備工事等が円滑に進まない要因となっている


見直しの検討

共用部分の変更に関する決議の要件の緩和も検討されている

現状4

建て替えに関する決議の賛成数は5分の4の多数決が必要であり、必要とされる建て替えが迅速に行えない要因となる


見直しの検討

建て替えに関する決議の要件の緩和も検討されている

見直し項目については、たとえば、多数決の割合を引き下げる、建物の耐震性に問題がある場合に限り多数決割合を引き下げるなどですが、建て替えが必要となる客観的な事象が認められる場合には、特別決議において必要とされる賛成数を5分の4から4分の3に引き下げることが検討されています

現状5

「建て替え」が決議されても専有部分の賃借権(賃貸借契約に基づいて得られる借主の権利)などは無くならないため、建て替え工事の円滑な実施の阻害要因となっている


見直しの検討

建て替えが決議された場合は、一定の手続きによって賃借権を消滅させるしくみが検討されている

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情報提供元: マネーの達人
記事名:「 良質なマンションの維持に欠かせない法律「区分所有法改定」の動き その主な見直し点について