- 週間ランキング
公的年金(老齢年金、障害年金、遺族年金)は、新年度が始まる4月(金額が変わるのは6月の支給日)に、賃金や物価の変動によって金額を見直しています。
最大44%ポイント還元の「超超超さとふる祭」に注目!効率のよいポイ活法と注意点
また2024年1月中旬に厚生労働省から、2024年度の老齢年金の金額が発表されました。
それによると2024年度は前年度より2.7%の増額になるため、2年連続で老齢年金は増えるのです。
ただ本来であれば3.1%の増額だったので、2024年度の老齢年金の一部は密かに減額され、2023年度も同じように減額されました。
また老齢年金の2年連続の減額によって、2024年の財政検証に注目が集まると予想するのですが、その理由は次のようになります。
原則65歳から支給される老齢年金の一種に、国民年金から支給される老齢基礎年金があります。
この老齢基礎年金の受給要件を満たすには、国民年金や厚生年金保険などの保険料の納付済期間、国民年金の保険料の免除期間などの合計が、原則10年以上必要になります。
ただ20歳から60歳までの40年間に渡り、一度も未納にしないで保険料を納付すると、老齢基礎年金は満額に達するため、10年の納付で止めない方が良いのです。
また厚生年金保険の被保険者の配偶者(20歳以上60歳未満)が、年収130万円未満などの要件を満たして国民年金の第3号被保険者になると、その期間は未納でも保険料の納付済期間になるのです。
もうひとつの老齢年金としては、老齢基礎年金の上乗せという取り扱いになる、厚生年金保険から支給される老齢厚生年金があります。
この老齢厚生年金の受給要件を満たすには、原則10年以上という老齢基礎年金の受給要件を満たしたうえで、厚生年金保険の加入期間が1か月以上必要になります。
また老齢厚生年金の金額は、厚生年金保険の加入中に勤務先から支払われた給与(月給、賞与)の平均額や、厚生年金保険に加入した月数を元にして算出するのです。
厚生労働省の発表によると、2024年度の満額の老齢基礎年金を月額に換算したものは、次のような金額になるため、2023年度より月1,750円(68歳以上は1,758円)の増額になるのです。
・ 2023年度:6万6,250円(67歳以下)、6万6,050円(68歳以上)
・ 2024年度:6万8,000円(67歳以下)、6万7,808円(68歳以上)
年金額の推移などを説明する時に厚生労働省は、次のような設定のモデル世帯を用います。
・ 夫婦が同い年である
・ 夫は20歳から60歳まで厚生年金保険に加入し、その期間の平均収入は厚生年金保険に加入する男子の平均収入と同額であり、妻は20歳から60歳まで第3号被保険者
このモデル世帯の2024年度の年金(夫婦2人分の老齢基礎年金+夫の老齢厚生年金)の月額は、次のような金額になるため、2023年度より月6,001円の増額になるのです。
・ 2023年度:22万4,482円
・ 2024年度:23万483円
なお2級の障害基礎年金は満額の老齢基礎年金と同額、1級の障害基礎年金は2級の1.25倍になります。
また遺族基礎年金は満額の老齢基礎年金と同額になるため、障害年金や遺族年金についても、老齢年金と同じくらい増額すると推測されます。
公的年金は冒頭で紹介したように、賃金や物価の変動によって金額を見直しますが、次のように年齢によって見直しのルールが違うのです。
過去3年度平均の賃金の変動率(2024年度は+3.1%)の分だけ、前年度より公的年金を増額(減額)させます。
前年の物価の変動率(2024年度は+3.2%)の分だけ、前年度より公的年金を増額(減額)させます。
2023年度の見直しの際には、この原則ルールが適用されたため、67歳以下と68歳以上で金額が分かれたのです。
一方で2024年度のように「賃金の変動率<物価の変動率」の時は例外的に、67歳以下か68歳以上かを問わず、賃金の変動率で金額を見直しするのです。
また変動率がプラスの時は、年金制度の被保険者数の減少率と、平均余命の伸びを元にして算出したスライド調整率(2024年度は-0.4%)が、変動率から差し引かれます。
そのため最終的な改定率は、賃金の変動率(+3.1%)からスライド調整率(-0.4%)を差し引いて算出した、+2.7%という結果になるのです。
2023年度に支給された老齢年金に、この+2.7%を適用して増額させたものが、前述した2024年度の満額の老齢基礎年金と、モデル世帯の年金になります。
いずれについても金額は増えているのですが、賃金の変動率から差し引かれたスライド調整率の分だけ、密かに減額しているのです。
賃金や物価の変動率からスライド調整率を差し引くのは、年金制度の被保険者数の減少率と、平均余命の伸びに合わせて公的年金を減額し、年金財政を安定化させるためです。
この仕組みが導入されたのは2004年になりますが、例えば賃金や物価の変動率がマイナスになる年度には、スライド調整率を差し引かないルールになっています。
また2004年以降の日本経済は、このような状態が続いたため、初めてスライド調整率が差し引かれたのは2015年度です。
ただ近年は消費税率の引き上げ、資源価格の高騰や円安などにより、賃金や物価の変動率がプラスになる場合が多いため、次のようにスライド調整率が差し引かれる年度が増えています。
・ 2015年度:-0.9%
・ 2019年度:-0.5%
・ 2020年度:-0.1%
・ 2023年度:-0.6%
・ 2024年度:-0.4%
これを見て不安を感じる方がいるかもしれませんが、年金財政が安定化したら、スライド調整率による公的年金の減額を止めることになっているので、いずれは終了する日が来るのです。
またスライド調整率を差し引く年度が増えれば、終了する時期が前倒しになる可能性があります。
厚生労働省は5年に1度のペースで、年金制度の健康診断などと呼ばれる財政検証を実施しています。
前回に実施されたのが2019年になるため、2024年は財政検証の年にあたるのです。
財政検証が実施される際には、スライド調整率による公的年金の減額が終了する時期の目安も示されるのですが、2019年の財政検証では2046~2058年度でした。
また賃金や物価の変動率のマイナスが続き、スライド調整率による公的年金の減額が想定よりも進んでいないため、終了する時期の目安は段々と後ずれしています。
しかし2019年の財政検証の後は、スライド調整率による公的年金の減額を2年連続(合計3回)実施したので、2024年の財政検証では終了する時期の目安が、前倒しになる可能性があります。
これに加えて年金財政の改善が確認されれば、年金の支給開始年齢を引き上げする議論が後退するため、2024年の財政検証に注目が集まると予想するのです。
自営業の夫が亡くなった場合、妻はどのくらい遺族年金が受給できるか?
遺族年金はどのような遺族が受給できるか?遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給要件の違いに注意