老後の「年金繰り下げ」にあたっての注意点とは?65歳の年金請求時までには決断すべき3つの判断基準
他の写真を見る

年金受給にあたって、「75歳までの繰り下げ」が報道されています。

定年退職前に知っておきたい「老後貧乏になりやすい人」の傾向と改善策6つ

年金は原則として65歳から受給開始となるものの、65歳から受給せずに繰り下げを選択することで、1か月あたり0.7%の増額を享受できるため、一考に値すると考えられます。

そこで、今回は繰り下げにあたっての注意点について解説します。

年金繰下げ制度を使うか否か、65歳までに決断しよう

繰り下げの判断基準に正解はない

人によって寿命は異なるため、65歳時点で絶対的な正解はありません。

だからと言って何も検討しないということは適切とは言い難く、今後の生活環境等を見据え、何を重要視すべきかを念頭に置き、65歳の年金請求時までには決断することが望まれます。

また、金額的な部分としては次の点が挙げられます。

1. 加給年金対象か否か

  • 厚生年金保険に20年以上加入し、

  • かつ、65歳到達時に生計維持関係にある65歳未満の配偶者もしくは、18歳年度末に達する前の子(当該子が障害状態にある場合は20歳未満となる)がいる場合は、

厚生年金から支給される老齢厚生年金に加給年金として、加算がおこなわれます。

次に、「生計を維持する」とは、加給年金の対象となる者(配偶者や子)が次の両方の要件を満たしていることを定義します。

  • 生計が同じである(同居していることや別居していても仕送りをしていること、健康保険の扶養親族等であること)

  • 前年の収入が850万円未満であること(所得の場合655万5千円未満であること)

加給年金はあくまで厚生年金から支給される老齢厚生年金に加算されますので、そもそも老齢厚生年金を繰り下げするとなると、繰り下げている間、当然老齢厚生年金は支給されませんので、加給年金も支給されません

繰り下げ加算額は1か月あたり0.7%の増額ですので、現時点での銀行の利息に比べれば魅力であることは明らかですが、配偶者の加給年金には、生年月日に応じて特別加算もつきますのでその点も勘案して決断すべきです。

加給年金の対象であれば繰下げ受給とのメリットを天秤にかけて判断しよう

2. 在職老齢年金の対象か否か

年金は老後の所得保障という観点から、厚生年金に加入しながら一定以上の報酬を得ている場合、年金の全部または一部が支給停止される制度があり、当該制度を在職老齢年金と呼びます。

「支給停止」という文言がミスリードになっていると言わざるを得ないケースにも遭遇しますが、支給停止された分が将来戻ってくるわけではありませんので注意が必要です。

繰り下げの論点でよくある勘違いとして、通常通りに65歳から年金を請求した場合であっても、在職老齢年金によって老齢厚生年金が全額支給停止となっている場合は老齢厚生年金を繰り下げ請求したとしても増額はしません

すなわち、繰り下げたからといって必ず1か月あたり0.7%年金が増えるわけではないということです。

3. 夫婦の場合

夫婦ともに健在という場合は、リスク分散という考え方もあります。

例えば、

  • 妻は繰り下げをして、

  • 夫は65歳から請求する

という考え方です。

その場合、当面は夫の年金でやりくりしながら、妻は繰り下げ待機期間中、年金額を増額させることができますので、夫に先立たれたとしても(もちろん遺族年金もありますが)一定の安心材料にはなり得ます。

夫婦で受給開始時期をずらすこともリスク分散になる

平均余命と健康寿命を考慮して判断しよう

この部分は抽象的な話になってしまいますが、平均余命と健康寿命は無視できません。

日本の場合、男性よりも女性の方が長生きする傾向にあり、その中で、健康寿命とは、健康上の大きな問題を考えることなく生活できる期間であり、ある程度自由にお金を使える期間ということです。

上限いっぱいである75歳まで繰り下げ、84%増額した年金を受給開始したものの、健康寿命は残りわずかとなってしまっては後悔も残るでしょう。

よって、加給年金等の制度的な問題以外の面も総合的に勘案して決断することがよいでしょう。

「ナビダイヤル」は無料化不可の電話サービス 1月より携帯電話からかけると実質値上げに

情報提供元: マネーの達人
記事名:「 老後の「年金繰り下げ」にあたっての注意点とは?65歳の年金請求時までには決断すべき3つの判断基準