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労働者に対する公的保険の1つに挙げられる雇用保険は、失業保険や育児休業給付金を受給する際の保険とのイメージが先行していると思われます。
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ただし、これは雇用保険の給付制度の中の一部に過ぎず、他にも多くの給付が設けられています。
目的としては、労働者の生活の安定や就職促進を図るための制度であり、今回、法改正の議論が進んでいる中で、実生活にも影響が大きい「雇用保険加入要件の拡大」について、議論がされています。
そこで、今回は雇用保険の加入要件拡大について解説します。
前提としては、労働者でなければなりません。
よって、雇用契約ではなく、業務委託契約の場合や、代表取締役の場合はその時点で雇用保険の加入対象者とはなり得ません。
次に労働者であって、週の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用見込みであることが必要です。
実務上は「31日以上」の雇用見込みはあっても、「週20時間以上」の要件を満たさずに加入対象外となっているケースは多くあります。
加入対象外となってしまう背景としては、子育てや家族の介護等、さまざまな理由が考えられます。
改正後の雇用保険加入要件案として、
「週20時間以上」の部分を、「週15時間または週10時間」とするか否かについて、
議論されています。
先行して社会保険の方は段階的に適用拡大が図れており、直近では単に対象となる労働時間の拡大に留まらず、社会保険促進手当や、企業に対する助成金制度も打ち出されていました。
しかし、雇用保険については、65歳以上が対象となるマルチジョブホルダー制度の施行はあったものの、社会保険と比べると改正は限定的であったと言わざるを得ません。
そもそも、広い意味でこのような公的保険の適用拡大が進められる背景としては、少子高齢化社会の到来が挙げられます。
現役世代が少なくなることで、保険料が財源となる年金の支給額の低減が想定されることや、働き方自体が新卒一括採用後終身雇用のスタイルからスキルアップに応じて流動性のある働き方が増えてきたことも挙げられます。
特に、流動性のある働き方が増えてくると一定期間、失業状態ということも想定され、その間、何らかの所得保障は必要となります。
失業保険受給以外のメリットはどのようなものがあるのでしょうか。
まず、出生数については、年々減少傾向を示しており、国難として出生数を引き上げることは喫緊の課題と言えます。
出生数が引き上がることで一定期間経過後には「現役世代」となり、年間給付財源等の支え手となります。
本題の失業保険受給以外のメリットとしては、育児休業給付金の受給権を得られることです。
実務上、育児休業給付金は、原則として、育児休業開始日以前2年間に一定の被保険者期間が必要ですが、労働時間が少ないゆえに雇用保険未加入期間が引き金となり、育児休業給付金の受給に至らないことが少なくありません。
2022年4月以降の法改正により、育児休業取得者の拡大は図られてきたものの、そもそも雇用保険に加入できていない労働者については、救済の余地が乏しく、事実上、育児休業期間は無収入という状況下に置かれていました。
それが加入要件拡大に伴い、雇用保険に加入できることとなり、旧来であれば育児休業期間中無収入であったものの、改正後は育児休業期間中、給付金を受給できることで育児休業期間中の生活が安定すると考えられます。
ただし、育児休業給付金はあくまで、復帰することが前提です。
よって、復帰せずに育児休業終了と同時、あるいは育児休業中に退職することを決めているにも関わらず、受給することはできません。
雇用保険は厚生年金と比べても保険料率は低く、加入することによって手取り額が著しく低くなるということはありません。
よって、社会保険促進手当のようなものが出される可能性は低いものの、適用拡大によって救済される層が出てくると言えます。
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