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国税庁が公表した「令和4事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」によると、所得税の税務調査は全体で637,823件(対前年比106.3%)実施され、そのうち338,268件(対前年比106.6%)は申告漏れ等の非違事項があった件数です。
ここ数年の税務調査の実施件数は、新型コロナウィルス感染症の影響で大幅に減少していましたが、令和4事務年度の調査件数は感染症流行以前の平成30事務年度の調査件数(610,655件)を超えています。
全体の申告漏れ所得金額については9,041億円と、前事務年度の7,202億円よりも1,839憶円も増加しており、追徴税額の合計額1,368億円は過去最高額です。
国税庁が定義する「富裕層」は、有価証券・不動産等の大口所有者、経常的な所得が特に高額な個人、海外投資等を積極的に行っている個人などをいいます。
調査担当者が自宅等に訪問し申告内容や帳簿書類等を調べる「実地調査」は、令和4事務年度では富裕層に対して2,943件実施されました。
前事務年度の調査件数は2,227件、申告漏れ所得金額の総額は当時の過去最高額となる839億円でしたが、令和4年事務年度の申告漏れ所得金額はその最高額を大幅に更新する980億円でした。
富裕層の申告漏れ所得金額の総額が過去最高となった理由として最初に考えられるのが、富裕層に対する税務調査件数の増加です。
調査件数が増えれば申告漏れを見つける確率も高くなりますが、富裕層に対する調査件数(2,943件)は、前事務年度より716件も増加しています。
申告漏れ等の非違事項件数2,533件についても対前年比129%と、国税当局が富裕層に対する調査に力を注いだ結果が実績に現れています。
富裕層は日本以外の場所に資産を有していることも多く、海外投資等も行われています。
海外投資や海外への資産移転が租税回避目的として利用されていることもあることから、世界各国が情報共有するなどして取り締まりを強化しています。
国税当局は、国外送金等調書や国外財産調書だけでなく、租税条約等に基づく情報交換制度等を活用して情報を集めています。
申告漏れが把握された場合には税務調査で指摘を受けることになりますし、実際に取り締まりの強化が数字上でも成果として現れています。
参照:
個人でもSNSや動画配信サービスを利用して、多額の利益を得られる環境が整えられており、有名なインフルエンサーであれば億単位の収益を獲得していることもあります。
ただ個人は企業と比べて税に対する知識が乏しいことが多く、違法な手段で税金を納めないケースも増えています。
インフルエンサーは知名度が高いことはもちろんのこと、社会的影響もありますので、国税当局は申告内容の適否を重点的にチェックしている可能性が高いです。
実際、インフルエンサーが脱税を指摘され、多額の重加算税を納めた事例も発生していますので、確定申告が必要になる方は偽りなく申告手続きを行ってください。