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年金制度においては今後も法改正が予想されていますが、今後も改正されないもしくは改正があったために取り残されているものの1つとして、持ち主不明の年金記録があります。
報道等でも「宙に浮いた年金」とも取り上げられ、社会問題となりました。
今回は持ち主不明の年金記録について解説します。
1997年1月に基礎年金番号が導入されました。
基礎年金番号とは個々人の年金加入記録を管理するためのキーとなる番号であり、 日本年金機構では原則として、1人に対しての年金加入記録を1つの基礎年金番号で管理することとなっています。
すなわち、それまで各公的年金保険制度ごとに年金番号が付番されていたことから、年金番号の統合が進められました。
当時はITツール等も現代と比べて劣っていた点は否めず、事務処理上の問題等が絡みあり、結論として適正な統合処理ができていない部分がわかりました。
当時の推計で統合されていないと思われる年金記録が約5,000万件存在することが明らかになり、これがいわゆる「宙に浮いた年金」としてクローズアップされました。
肝心な部分として、そのような記録の存在は、いざ年金を請求する段階でもわからないのかという声がありますが、記録の存在は年金事務所から開示してもらうことができます。
それだけでなく、年金の請求時に本人確認が取れればその記録をつなぎ合わせることも可能です。
ただし、重要な部分として、日本国内であっても同姓同名かつ同じ生年月日の方がいないとは断言できず、そのような不確定要素が強い中であっても、他人の記録をつなげたとなればこれは大問題となります。
よって、例えば厚生年金の宙に浮いていると思われる記録であれば、本人だからこそ知り得る情報として、例えば職場名等を伝えることで、記録を統合できることとなります。
やはり、年金請求時に何の準備もせずに数十年も前の記憶を手繰り寄せて手続きまでするのは、時間的にも厳しいと言わざるを得ません。
よって、年金請求が発生する前に一度記録の整備をしておくことで、年金請求時にはスムーズに手続きができます。
年金請求時ともなれば理論上は年齢もそれなりに上昇しており、場合によっては労働収入が全くなくなっているということも珍しくありません。
そのような状況下で記録の整備に時間を要してしまい、年金の請求にたどり着かないという状況は可能な限り回避したいものです。
年金事務所においては、対面での老齢年金の請求は原則45分の枠内で相談と手続き済ませる必要があり、手続きだけでなく記録の整備までとなるとほぼ時間が足りません。
また、委任状に記載をして家族等に請求手続きを委ねる場合も想定されます。
そのようなケースでは本人ではないため、過去の記録は全く知り得ないといったことも考えられ、何度も手続きが必要となることも想定されます。
基礎年金番号は4桁プラス6桁の番号です。
他方、マイナンバーは12桁の桁数です。
桁数は違うものの、混同されているケースにも遭遇します。
また、老齢年金請求時には雇用保険被保険者番号も必要となり、これは11桁となります。
医療の発展によって長く働くことが期待される時代が到来しており、雇用保険被保険者番号も再就職時には勤務先から求められるために、雇用保険被保険者番号も含めて、また、年金請求時に限らず、それぞれ分けて管理しておくことが望まれます。
年金制度はなくなることはないものの、手続きと制度が複雑である点は否めません。
自身でコントロールできる部分としては、可能な限り早い段階で相談や手続き前の準備を済ませておくことに注視することが重要です。