今年中(令和5年12月31日)に贈与をし、3年超生きれば、相続税の節税ができます。

もっとも、贈与先が相続人でない孫への贈与であれば、贈与後3年以内の相続が発生しても、相続税法上、3年以内の持ち戻しはありません

私事ですが筆者の母も、孫(筆者の姉の子)に贈与した1年後に亡くなり、その2年後に税務署より、引き出したお金の行方について確認をされました。

当時、会計事務所に勤務していた私より、「姉の子の通帳に振込、贈与した」ことを説明したところ、遺産に加算の必要ないこと理解していただけました。

これは、「相続又は遺贈により財産を取得したものが…」(相続税法19条)とあり、持ち戻しは、相続人、受遺者に限られているからです。

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孫なら誰でも加算しないのか

通常、孫は祖父母の相続人とならず遺産を取得することができないので、3年以内の贈与加算の対象外です。

孫でも、故人と養子縁組をしていれば、相続人として遺産を取得できますので、加算対象となります。

同様に子が先に亡くなり、孫が代襲相続人の場合も加算対象になりますので注意が必要です。

相続人でない孫でも、遺言書で、遺産を貰えることになっていると、相続税法19条に「相続又は遺贈により…」とあるうち、遺贈に該当します

そのため、孫が遺言書にて受遺者となっていれば、やはり、加算対象者となります。

保険の受取人が孫になっている

相談者で偶にあるのが、死亡保険の受取人に孫を指定しているケースです。

相続人でない孫を生命保険の受取人に指定し、受け取と「みなし遺贈」となり、同様に加算の対象となりますので、注意が必要です。

相続人でない孫を受取人に指定していると、生命保険の非課税枠が使えない上、受け取った保険金についても相続税が2割加算となります。

遺言とか保険を活用することで相続人でない孫にあげることは可能ですが、税金面での扱いは、押さえておきたいところです。

孫名義にすればいいのか

贈与は、もらう側と受け取る側の合意があって成立です。

形式的に名義を変更しただけでは、贈与は成立したことにはなりません。

大切なのは、本当にあげなければ、節税にならないということです。

あげる側(祖父母等)が、もし、認知症等で意思能力に問題がある場合、また本人の許可なく勝手にお金を引き出して、名義変更していれば、不当利益であり、贈与は成立していませんので、何年前に名義変更していても、税務上は、名義預金として遺産に加算されます。

貰う側(孫)も同様で、未成年の場合は、親権者の同意があって、成立となりますので、事実証明のためにも、贈与契約書を作成し、親権者(婚姻中なら二人とも)の、署名押印は、必ずしておきましょう。

特別受益(生前贈与)も原則、孫は加算なしですが

遺産分割でもめた時、遺産に特別受益(遺産の前渡し)を加算したうえで、分割の調整をすることがあります。

遺産の前渡しとしての生前贈与は、何年前の贈与でも対象となりますが、これも、相続人に限られるので、相続人でない孫は、特別受益の対象外です。

ただし、形式的に相続人以外へ贈与となっていても、実質的に相続人にあげたものと判断されれば、対象となります。

ポイントは、孫に本当にあげたかどうかです。(執筆者:FP1級、相続一筋20年 橋本 玄也)

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情報提供元: マネーの達人
記事名:「 孫への贈与は、遺産に加算されず直前の相続対策として有効か?