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協会けんぽと組合健保は同じ法律を元にして運営されているため、大きな違いはないのですが、3つの点に違いがあります。
月給から控除される健康保険の保険料は、この金額を元にして導き出した標準報酬月額に、保険料率を乗じて算出します。
例えば月給の金額が「19万5,000円以上~21万円未満」の場合、標準報酬月額は20万円になります。
東京都の協会けんぽに加入する、介護保険の対象にならない40歳未満の場合、保険料率は10%になるため、保険料の金額は2万円(20万円×10%)になります。
これを事業主と社員が折半して負担するため、月給からは1万円(2万円÷2)の保険料が控除されます。
協会けんぽと組合健保は保険料率が違うのですが、組合健保の方が低く設定されている場合が多いのです。
また組合健保によっては保険料を折半するのではなく、事業主の負担割合を増やしているため、組合健保は協会けんぽよりメリットが多いのです。
組合健保は協会けんぽと違って、法定給付の上乗せとなる付加給付を実施している場合があります。
これにより病気やケガで診療を受けた時の自己負担が、法定給付だけの場合より軽くなるのです。
また人間ドックの受診補助などの保健事業も、協会けんぽより組合健保の方が充実している場合が多いのです。
協会けんぽの保険給付費には、税金を財源にした国庫補助がありますが、組合健保の保険給付費には国庫補助がありません。
健康保険の保険料は上記のように、月給を元にして導き出した標準報酬月額と、賞与を元にして導き出した標準賞与額に、保険料率を乗じて算出します。
そのため給与の平均額が高い大企業の社員が、主に加入している組合健保は、保険料収入が多くなります。
一方で給与の平均額が低い中小企業の社員が、主に加入している協会けんぽは、保険料収入が少なくなってしまうのです。
こういった協会けんぽの財政上の弱点などを補うため、保険給付費に対する国庫補助が制度化されています。
入社した時点の月給の金額を元にして、各人の標準報酬月額を導き出すのですが、例えば4月に定期昇給が実施されると、月給の金額と標準報酬月額との間にズレが生じます。
このズレを解消するために標準報酬月額を、実態に合ったものに改定する必要があります。
ただ4月の月給だけで新しい標準報酬月額を導き出すのではなく、4~6月の3か月間に支給された月給の平均額で、新しい標準報酬月額を導き出すのです。
例えば3か月間の月給の平均額が、「21万円以上~23万円未満」だった場合、標準報酬月額は22万円になります。
東京都の協会けんぽに加入する、介護保険の対象にならない40歳未満の場合、保険料は月1万1,000円(22万円×10%÷2)になるため、上記の例より1,000円ほど高くなります。
こういった改定の仕組みは「定時決定」と呼ばれており、協会けんぽと組合健保の両者で、年に1回実施されています。
また新しい標準報酬月額を元にして算出した保険料は、月給の金額に大きな変動がなければ、9月から翌年8月までの月給から控除されます。
7月に入れば新しい保険料を算出できるのですが、保険料の引き上げが始まるのは、そこから2か月後の9月なのです。
ただ今月の健康保険の保険料を、翌月の月給から徴収する会社が多いため、実際に保険料の金額が引き上げされるのは、9月分の保険料が徴収される10月からになるのです。
健康保険の保険料は10月だけでなく、3月分の保険料が徴収される4月から、引き上げになる場合があります。
その理由は、
です。
保険料率を引き上げする主な要因は、制度を維持していくための財源が必要になったからです。
保険料率を引き上げする協会けんぽや組合健保は、財政上の問題を抱えている場合が多いのです。
財政上の問題を解消するために組合健保では、保険料率を引き上げするだけでなく、付加給付や保健事業の見直し(縮小または廃止)を実施する場合があります。
協会けんぽより保険料率が高くなりそうな組合健保では、制度を維持していく必要性が薄れるため、健康保険組合の解散を検討する場合があります。
こういった理由により健康保険の保険料の引き上げは、10月より4月の方が問題だと思うのです。
4月に健康保険の保険料の引き上げがあった組合健保の加入者は、付加給付や保健事業の見直しがあるか否かを、健康保険組合のウェブサイトなどで調べてみましょう。
なお自分が加入する健康保険組合の名称や、協会けんぽの支部がわからないという方は、健康保険証の表面を見てみるのが良いと思います。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)
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