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株投資で10万円をいかに増やせるか? 実際にやってみました~第3回~
これを議論しているのは東京証券取引所(略称:東証)ですが、東証に上場している会社は、2023年2月末時点で3,866社にも達しています。
東証は、昨年4月から今までの東証1部市場や東証2部市場といった上場会社の事業規模などに応じた市場区分を見直し、現在は、
などの区分に変わっています。
東証の主な業務については、市場にて国内や海外の投資家からの注文にもとづき市場に株式・社債や国債などの債券の売買および決済を証券会社経由で行っています。その他、証券会社への調査や分析も業務の一つです。
東証は、これから上場を予定している会社に対する審査だけでなく、上場した後にも上場を維持するための基準を設けています。
これは上場維持基準といいますが、それに適合しているかの審査も行っています。
それに適合していないと判断されれば、一定の猶予期間が設けられ、改善されない場合は、最悪、上場廃止となります。
したがって、今回、東証は、主にPBR1倍以上の努力目標を含めた新たな上場維持基準を設けるための検討を行っていると見られています。
たとえばスポーツの世界でいうと、フィギアスケートや体操などの採点競技のようなもので、実力があるのに高い得点がでない場合と同じです。
割安株は、好業績、良好なキャッシュフロー、高配当などを続けているにもかかわらず、株価が低迷している上場会社の株式のことを指しています。
英語では「バリュー株」とも呼ばれているとおり、「買って保有する価値のある株式」のことです。
代表的な株式指標には、
などがあります。
今回、判断基準としての象徴的な指標はPBRです。
PBR(Price Book-Value Ratioの略称)は、株価純資産倍率のことで、株価水準を測定する重要な指標です。
計算式は、会社が保有している純資産額を発行株式総数で割って1株当たりの純資産額と株価を比べた投資尺度のことです。
純資産額とは、会社が株主から集めたお金(資本)や営業活動によって得た利益などの合計額のことです。
式は
ですが、株価は1株当たりの価格なので、純資産額も1株当たりで求めます。
1株当たりの純資産額(BPS)の求め方は、
BPSはBook-Value per Shareの略称です。
PBRが1倍ということは、
これを意味しています。
東証は、毎期の損益より、純資産を増やすことを重視するBS(貸借対照表)経営やお金の収支状況から会社の財務状況を把握することを重視するキャッシュフロー経営なども求めています。
これは、上場会社の成長の継続性と企業価値の向上に向けた取り組みとも繋がっています。
東証は、上場会社の株価を底上げしPBR1倍割れを改善するためのガイドラインとして、具体的な取り組みについて、次のように4項目を挙げています。
この項目は、経営者が資本コストや自社の株価にたいする意識の足りない上場会社が多いため、経営者の意識改革や経営に関わる知識・能力(リテラシー)の向上および経営者自らも事業計画に関わり目的達成のための取り組みをモニタリングするなどの企業努力が求められます。
ここでは、「資本コストにたいする意識」とありますが、会社経営を続けて行くための方法の一つには、外部からの資金調達がありますが、これにはコストがかかります。
資本コストとは、
などを指します。
資本コストは費用なので低いことに越したことはありません。
資本コストを上回る利益が出ない会社は、投資する価値のない会社と投資家に評価されるため、資本コストを意識した経営努力や改善に向けた具体的な取り組みが経営者に対して求められます。
コーポレート・ガバナンスとは、企業統治という意味ですが、会社は経営者のものでなく、株主の利益を最優先するという考え方で、これらの会社経営を監視する仕組みをいいます。
具体的な制度としては、指名委員会や報酬委員会などの組織があります。
指名委員会は役員の選任や解任、報酬委員会は役員報酬をそれぞれ議論する役割を担っています。
役員が好き勝手しないようにする目的がある制度で、社外取締役などの第三者を中心としたメンバーで構成されています。
しかし、このような委員会を設置する会社は多くなっていても、その中身は形式的で不十分な事例も散見されているため、そういった会社にたいしては委員会の活動状況の開示や改善を求めるべきとしています。
東証は、海外の投資家にたいする情報量の少なさを指摘しています。
それは、英文で開示される書類の少なさを意味しています。
書類の種類は、
などが一般的です。
ただし、英訳にかかる費用負担や投資家が入手したい情報などを考慮した上で、書類の選別や開示するタイミングについての検討が必要とされています。
東証は、株主・投資家・金融機関・取引先等のステークホルダーとの対話に消極的な姿勢が散見されているとしています。
投資家向けの広報活動を担う組織は、事務局的な機能を持つIR(Investor Relations)部門が一般的です。
投資家との対話には、代表権のある会長・社長・広報担当役員などが勤めますが、会社経営を監督する立場にある社外取締役が積極的に応じることも必要とされています。
この項目では触れられていませんが、特に、海外に子会社や関連会社のある会社にとっては、海外の投資家や証券アナリストなどにたいして会社説明会を、直接現地に出向くかオンラインかの方法で実施することがより効果的と考えられます。
「株式は人気投票のようなもの」ともいわれており、「その会社が好き」「イメージが良い」という理由でもその会社の株が買われ、株価が上がります。
日本の場合は、株や投資信託などのリスク資産への投資が欧米と比べ極端に少ないので、飛躍的な株価の上昇はそう多くは望めないかもしれません。
しかし、PBR1倍割れの上場会社がこの基準に則った経営努力と自社の企業価値を国内外の投資家にアピールするための広報活動を積極的に行うことで、条件付ながら、今後は株価全体が底上げ相場になることを期待したいものです。(執筆者:CFP、1級FP技能士 小林 仁志)
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