- 週間ランキング
【年金額改定】令和5年度の老齢基礎年金の満額は、人によって違う?
2022年4月からは約140年ぶりに、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。
この影響によって18歳から、国民年金に加入する可能性があったのですが、今のところは20歳を維持するようです。
一方で政府は国民年金に加入する年齢の上限を、60歳から65歳に引き上し、5年延長する案を議論しているのです。
2024年までに結論を導き出し、2025年の法改正を目指すという報道があるため、早ければ再来年あたりから、65歳まで加入するようになるかもしれません。
国民年金の保険料は上記のように、2022年度額で月1万6,590円になるため、追加で5年(60月)分の保険料を納付すると、「1万6,590円×60月=99万5,400円」により、約100万円は負担が増えます。
また現在の給付水準から推測すると、9万7,200円(1,620円×60月)くらい、老齢基礎年金が増える可能性があります。
ただ老齢基礎年金が増えたとしても、負担増に納得できない方が多いと思うので、これを回避する方法を考える必要があるのです。
60歳以降も次のような要件を満たしている場合、非正規雇用者でも70歳になるまで厚生年金保険に加入するため、国民年金に加入する年齢の上限が65歳になっても、こちらには加入する必要がないのです。
(1) 1週間の所定労働時間(契約上の労働時間)が20時間以上である
(2) 月収が8万8,000円(年収だと約106万円)以上である
(3) 学生ではない(夜間や休学中の学生などは加入対象)
(4) 継続して2か月を超えて雇用される見込みがある
(5) 従業員数が101人以上の会社(労使の合意がある100人以下の会社も含む)で働いている
また月給から控除される厚生年金保険の保険料は、月収(基本給だけでなく通勤手当なども含む)を元にして算出するのです。
例えば月収の金額が「9万3,000円未満」の場合、厚生年金保険の保険料は月8,052円になるため、国民年金の半分くらいの負担で済みます。
月収の金額が上昇すると、厚生年金保険の保険料は増えますが、月収が「17万5,000円以上18万5,000円未満」の場合、保険料は月1万6,470円になるため、このくらいまでなら国民年金より少ない負担になるのです。
また国民年金に加入する年齢の上限が65歳になった場合、60歳から65歳までの間に厚生年金保険の保険料を納付した期間は、国民年金の保険料を納付したという取り扱いになると推測されます。
そのため給与の金額を抑えながら、60歳から65歳までの間に厚生年金保険に加入すると、約100万円の国民年金の負担増を、最大で半分くらいまで抑えられるのです。
これに加えて原則65歳になると、厚生年金保険から支給される老齢厚生年金の金額が増えるのです。
経済的な理由などで国民年金の保険料を納付するのが難しい場合、所定の申請により、全額免除、一部免除(4分の3免除、半額免除、4分の1免除)、納付猶予(50歳未満が対象)を受けられます。
全額免除や納付猶予を受けられた場合、納付する保険料はゼロになりますが、一部免除に関しては次のような金額まで圧縮されます。
・ 4分の3免除:4,150円
・ 半額免除:8,300円
・ 4分の1免除:1万2,440円
また国民年金に加入して、自分で保険料を納付している非正規雇用者などが、各種の免除や納付猶予を受けられる年収の目安は、次のような表の括弧内の金額になるのです。
参照:札幌市 免除等の種類
例えば扶養家族がいない方は122万円以下、配偶者だけを扶養している方は157万円以下が、全額免除を受けられる年収の目安になります。
納付猶予以外の全額免除や一部免除を受けた期間は、消費税などを税源にした国庫負担があるため、次のような割合で老齢基礎年金の金額に反映されるのです。
・ 全額免除:定額の保険料を納付した場合の「2分の1」
・ 4分の3免除:定額の保険料を納付した場合の「8分の5」
・ 半額免除:定額の保険料を納付した場合の「8分の6」
・ 4分の1免除:定額の保険料を納付した場合の「8分の7」
国民年金の保険料を1か月納付した場合、上記のように1,620円くらい老齢基礎年金が増えます。
そのため2分の1の国庫負担がある全額免除を受けた期間は、この半分となる810円くらい老齢基礎年金が増えるため、年金額に反映されない未納とは大きな違いがあるのです。
日本労働組合総連合会(連合)が実施した、「高齢者雇用に関する調査2020」によると、60歳以上の1か月の賃金(税込)の平均は、次のような金額になります。
・全体の平均:18.9万円
・正規雇用者の平均:33.1万円
・正規雇用者以外の平均:13.0万円
参照:日本労働組合総連合会(pdf)
厚生年金保険に加入していない方が多いと推測される、正規雇用者以外の1か月の平均は13.0万円になるため、年収に換算すると約156万円です。
また配偶者だけを扶養している方が全額免除を受けられる年収の目安は、上記のように157万円になります。
こういったデータから考えると、60歳から65歳までの間に国民年金に加入するようになっても、申請によって全額免除を受けられる方は、意外に多いと推測されるのです。
実際に全額免除を受けられた場合には、約100万円の負担増を回避できるのです。
また全額免除には2分の1の国庫負担があるため、5年間に渡って定額の保険料を納付した時に増額する老齢基礎年金(9万7,200円)の半分となる、4万8,600円を受給できる可能性があります。
全額免除の要件を満たせず、一部免除になってしまった場合でも、約100万円よりは負担が軽くなるため、忘れずに申請を行った方が良いのです。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)
厚生年金はいつまで加入するのか 1年に1回の年金額UPにつながる新たな導入制度とは?
年金事務所への請求手続きとは別に請求手続きが必要となる「厚生年金基金」とは