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例えば、夫が、夫の親より先に亡くなっている場合、夫の両親の相続が発生した場合に夫の妻は相続人になれません(図を参照)。
相続発生の以前死亡(代襲相続)による相続人は、「直系卑属のみに限る(民法887条2)」からです。
それは、妻が夫の両親の介護をしていても同様です。
しかもその夫婦に子がなければ、妻側の血族には、民法1050条の特別の寄与を除き、財産は一切行きません。
この場合こそ、義父母は、遺言書の作成を考えてほしいのです。
そこで、保険の受取人の確認と検討について考えてみたいと思います。
終活で、生命保険の受取人の確認作業は重要です。
加入当時は、夫婦がそれぞれを受取人とした保険にそれぞれ加入していたとします。
その後、夫が亡くなり、妻が夫の死亡保険を受け取ったとします。
ここで残された妻自身が加入している保険金の「受取人の見直し」が出てきます。
すでに亡くなっている夫のままの場合、保険会社は、原則、夫の相続人に保険金は支払われることになります。
その相続人が誰になるかで、受取人の変更の検討が必要になる訳です。
相続が発生後、保険関係を調査したところ、受取人が既に亡くなっていたという事例は、実務経験でも少なくありません。
夫婦間の子だけがいる場合は、同じ子供に行くだけで、問題は少ないですが、子供のいない夫婦の場合は要検討です。
先ほどの例ですと、妻のかけていた保険金は、夫の相続人である、夫の「直系尊属(両親、祖父母等)か、夫のきょうだい、おい・めい」に渡ることとなります。
ポイントは、妻自身の「直系尊属か、きょうだい、おい・めい」ではないのです。
保険の受取人の変更は、保険の契約者が、保険会社に意思表示すればできます。
また、平成22年に改正された保険法により、遺言で生命保険金の受取人の変更ができるようになりました。
相続発生後、死亡保険金の受取人が指定してある請求手続きは、他の相続手続きに比べ簡単に行えるため、遺言書の内容を知らない当初の受取人が保険会社に保険請求してしまうこともあり得ます。
そのためにも、遺言による生命保険金の受取人に変更がある場合、保険会社に死亡直後に通知を行う必要があります。
遺言執行者が、保険会社への通知をすることもふくめ、あらかじめ遺言書に遺言執行者を指定しておくのが確実な方法です。
遺言執行者は、受遺者自身でもなれますが、手続きをスムーズに行うためには、第三者の専門家の方がよいかもしれません。
費用負担とリスクを考え、あらかじめ遺言執行者は「受遺者の一人または、専門家○○」と複数指定しておき、「それぞれ単独で、執行者としての権限をあたえる」という書き方もあります。
これは、遺言書による受取人の変更が受遺者でスムーズにいかない時のリスクと、費用負担を考えたものです。
遺言書に、
「預金は、Aに三分の一Bに三分の二」
などといった書き方をされることがあります。
この場合だと金融機関としては、預金を払いだすのに、少なくともAとBの2人の承諾印を求める可能性があります。
ところが、遺言執行者が第三者で決められていれば、金融機関は遺言執行者へいったん相続預金を払いだしてくれます。
もちろん、遺言執行者は、その預り金を、遺言執行者の責任で、遺言書通りに分配することになるのです。
手続きは、遺言執行者ひとりでできます。遺言執行者は、そのための指定です。(執筆者:FP1級、相続一筋20年 橋本 玄也)
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