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遺言書を作成した場合、遺留分権利者は、民法でいう法定相続分の半分(相続人が直系尊属のみの場合は1/3)しか遺留分として請求できません。
一部の指定しかない遺言書の場合、あくまで遺産全体を法定相続分にて分けた上で、遺言で指定された財産額により、「遺産全体の法定相続分から、遺留分の範囲で調整するとなるといった考え方多いようです。
これでは、せっかく遺言書を作成した意味がなくなってしまうばかりか、さらにもめごとが増えるだけとなってしまいます。
相談でよくあるのが、Aの土地のみを、○○にあげたいという遺言書を書きたいのでその記載例だけくださいというのです。お気持ちはわかります。
おそらく、推定相続人の方から、「Aの土地だけは相続したいから」、と依頼され、重い腰を上げ相談にみえている訳です。
他の財産をどう分けたらいいか考えが及ばないこともあります。
最近、自筆遺言書でも、法務局にて遺言書の形式チェックし、保管もしていただけるようになりました。
ただ、法務局さんで、遺言者の意思能力までは判定していただけません。
「一部のみ指定の遺言書でも、とりあえず作ればなんとかなるだろう」というのは大きな間違いです。
また遺言書の費用のことを考え、自筆証書遺言を希望される方がありますが、残された方のことを考えるのであれば、公正証書遺言をおすすめいたします。
公正証書遺言であれば、公証人が遺言者さんの意思確認をきちっとしていただけますので無効になることは、原則ありません。
相続財産ではありませんが、葬儀代金の負担者でも揉めます。
実際、筆者も、遺言書で遺留分しか相続できなかった相続人が、「それでは葬儀代金を自分が負担するのは納得がいかない」といって他の相続人さんに請求されたケースをみてきました。
また、墓守もそれでは、したくないということで、お骨を持ってきたという話も聞いたことがあります。
それだけ、遺言で少なく書かれた方の方は、ある意味、心の傷を受けるわけです。
アドバイスで、「遺留分に配慮して」ということは簡単ですが、筆者も会計事務所にいる時に悩んだのが、遺留分の基になる金額です。
相続税法上では、3年以内に限られますが、民法上の特別受益(相続の前渡しとなる贈与)は、それ以上前も加算(遺留分の計算上は10年)されます。
そこの確認は、本人の失念もあり不明が多いです。
そしてなにより、不動産の価格です。
相続税法上の評価は、評価通達にて計算できますが、民法上は、あくまで時価です。
時価=相続税評価ではありません。
仮に、相続税評価を基に遺産額を計算すると相続人間で合意が取れる場合、相続税法上、「小規模宅地等の評価減」を適用してある土地については、税法上の減額分は持ち戻して計算することになりますので、要チェックです。
遺言執行者を遺言書のなかで決めておきましょう。
決めてあれば、相続手続きはスムーズに進みます。
そもそも公正証書遺言であれば、公証人から「その余の財産の記載のアドバイス」も「遺言執行者」のアドバイスもあります。
そして、「遺言書の作成=遺留分の請求がある」前提で、資金の準備をしておきましょう。
法改正で、現在は、現金払いが原則です。
金額も、その時点での時価ではっきりしませんが、諸費用も掛かる可能性があり、多めに準備された方がいいでしょう。(執筆者:FP1級、相続一筋20年 橋本 玄也)
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