年を取ってくると、足が上がりにくい、転びやすくなったなど、身体がうまく動かないといったお悩みも多くなりがちです。

また、うっかり転倒し、骨折治療による入院で体力が落ち、認知症症状まで出てきてしまった…など、耳にすることもあります。

そんな状況に陥ることを防ぎ、安全な生活を送るためには何が有効なのでしょうか。

介護保険制度では、

自宅で安全に過ごすための住宅の改修(以下:住宅改修)と

福祉用具の購入(以下:特定福祉用具販売)を、

1割から3割の自己負担で行うことができます。

今回は、住宅改修と特定福祉用具販売について、上手に利用するポイントと合わせてご紹介していきます。

安全な生活を送るための住宅改修

介護保険の住宅改修は、改修にかかった費用(支給限度基準額20万円まで)を一旦全額支払い、20万円から介護保険自己負担分(1割から3割)をひいた金額が戻ってくる制度です。

住宅改修でできることは、手すりの設置、段差の解消などがあります。

中には、安く使えるものは使ってしまおうと、一気にいろいろと改修しようと考える方がいるかもしれません。

しかし、住宅改修は1度支給限度基準額を使い切ると、介護度が3段階上がった場合と転居した場合にしか、新たに20万円支給されませんので、注意が必要です。

使い切ってしまった後、再度改修が必要な時になった時には、自費で改修することになってしまう可能性があります。

また、住宅改修は事前に役所に申請し、許可を得る必要があります。

場所によっては、住宅改修で手すりをつけなくても、レンタルで借りられる手すりなどを利用する手段もあります。

住宅改修を行う際には、慌てずに、まずは専門家と今の自宅介護にどういった改修が必要なのかを考え、必要な箇所に改修を行うようにしましょう。

毎日の生活を支えてくれる特定福祉用具販売

介護保険では、直接肌に触れるもの(シャワーチェアー・ポータブルトイレなど)は、レンタルではなく購入になります。

その際利用する制度を「特定福祉用具販売」と言い、1年で10万円支給され、介護保険自己負担分(1割から3割)をひいた金額が返ってきます

1年経過することで、また10万円を新たに使えるようになりますが、購入後使いづらいので、再度同一品目を購入すると言うことはできませんので注意が必要です。

再購入できる場合は、

・ 破損(部品交換などでは修理できない場合)

・ 購入時より介護の手間が多くかかるように身体状況が変化した場合

になります。

特定福祉用具販売を利用する際には、本当にその特定福祉用具を利用するのか、本当に利用しやすい形なのかをよく検討して、購入しましょう。

また、特定福祉用具販売の制度が適用されるのは、都道府県に指定された事業者から購入した物のみになりますので、この点も注意するポイントになります。

≪画像元:厚生労働省「介護保険における福祉用具(pdf)」≫

よく考えて!業者によって価格が違うこともある

住宅改修は、福祉用具を取り扱っている業者に頼むことが理想です。

住環境福祉コーディネーターが在籍していることが多く、スムーズに書類の作成が行なわれるため、役所への書類提出が早いという強みがあります。

住宅改修をすぐに頼める業者と提携している点も特徴です。

使う部品は一緒でも作業費が違うなどの理由から、頼む業者によっても料金が違います。

また、特定福祉用具の販売価格についても業者により、わずかですが異なる場合があります。

どこの福祉用具業者が安いかなど、ケアマネージャーはよく把握していますので、ぜひ相談してみてください。

利用する前に相談・検討しよう

介護保険を利用した住宅改修や特定福祉用具販売については、便利でお得に利用できる反面、住宅改修を行った後や福祉用具を購入した後に、「実際には利用しづらい」「役に立たず使用していない」というケースも少なくありません。

そのため、利用する前には慎重に相談することが大切です。

面倒でも事前の相談や検討を行うことで、安く利用できる以上にその後の生活が楽になり、気分や行動力の向上につながります。

また、健康寿命と平均寿命ともに延びてきている今、1割から3割で行えるからと言って、両制度とも早々に使い切ってしまうのは避けたいところです。

大きな金額が動く時こそ節約を意識し、本当に必要なことは何かを専門家とよく話し合い、後悔のないように利用していきましょう。(執筆者:現役老人ホーム施設長 佐々木 政子)

情報提供元: マネーの達人
記事名:「 【老後を自宅で安全に過ごす】介護保険が使える「住宅改修」と「福祉用具購入」の賢い利用法 自己負担1~3割でOK