改正「マンション管理適正化法」が2022年4月1日から全面施行されています。

日本初の官営マンションは東京都が1953年に分譲しましたが、築63年で解体、民間初の分譲マンションは1956年に分譲、築61年で解体されています。

マンションの寿命は国土交通省の耐用年数基準ではRC(鉄筋コンクリート)では築47年です。

一方、築20~30年のマンションは性能が向上してきているので、リフォームを適切に行えば100年でも十分もつとの見解もあります

耐震基準が新しくなった1981年に建築されたマンションもすでに築41年になり高経年マンションが増加しています。

中古マンションの実態、改正法の内容やメリット・デメリットについて解説します。

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1. マンションの実態

まずは分譲マンションの実態から考えます。

(1) 分譲マンションストック戸数、棟数

平成30年国交省データを筆者が加工

ストック戸数は、合計5,100万戸、内訳は戸建 2,800万戸、集合住宅1,650万戸、分譲マンション650万戸です。

年度別の分譲マンションストック戸数と新規戸数 新規戸数は毎年10~20万戸程度です。

ここでいうマンションは、中高層(3階建て以上)・分譲・共同建で、鉄骨鉄筋コンクリート又は鉄骨造の住宅をいい、ストック戸数は、平成30年度、国交省の調査、新規供給戸数の累積等を基に各年末時点の戸数を推計しています

(建て替え実績244棟、約 19,200 戸=79戸/棟で換算)

マンション棟数の推定値は、約8万4,000棟 築年数別でグラフ化しています。

築41年以上は、約1万1,700棟(94万戸)で約14%を占め、築51年以上は約1,675棟(13万戸)です。

(2) アンケート調査、年齢分布

令和3年国交省データを筆者が加工

「永住するつもり」が毎年増加し平成30年度は62.8%に達しています

60歳以上の保有者が10年間で40%から50%に増加し高齢化しています。

(3) 資産価値 中古価格の推移

【大阪府北部 中高マンション価格】


・国交省中古住宅流通データと大阪府北部データの中古マンション価格です。

築年数と価格の関係は、築20年頃まで直線的に価値が落ち、以降はやや緩やかに下降する傾向です。

2. マンション管理適正化法

(1) 現在の問題点

・高経年マンションが増加

マンション棟数は約8万4,000棟 築41年超え約1万1,700棟で約14%を占め、築51年を超えるのは1,675棟です。

2018年時点で建て替え済は 約244棟で、10年後には築41年超えは約2万7,000棟と2.3倍と急激に増える予想です。

・外壁はがれや耐震性が不十分なマンション

人命の危険があるものや配管設備等が劣化しているなど住宅としての基本的条件を欠く老朽化マンションが急増するおそれがあります

・適切な長期修繕計画の不足、修繕積立金の不足などの問題があるマンションがあります。

所有者の高齢化が進んでいて、相続する人がいない、空き家で放置する等問題が発生しています。

・中古マンション購入者は、管理状況を把握することが難しく把握できないままに購入する場合が多い。

・建て替え事業の採算性が低下し所有者の経済的負担が増加してきています。

例えば平均自己負担額は2000年400万円でしたが、2016年1,100万円に上昇、容積率が低下し建て替え条件が厳しくなっています。

建て替え前後の比率 1970年代4.34倍2010年代 2.23倍

(2) 「マンション管理適正化法」及び 「マンション建替円滑化法」を改正(令和4年4月1日全面施行)

「マンション管理適正化法」

国が基本方針を策定し、地方自治体が推進計画、指導・助言、管理計画認定制度などに関与します。

・国による基本方針策定

国土交通大臣は、マンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な方針を策定(以下7項目)

1. 管理組合・国・地方の役割
2. 管理の適正化に関する目標設定
3. 管理組合によるマンション管理の適正化
・管理組合が留意すべき項目:8 項目 ・区分所有者  ・管理委託
4. 合意形成
5. 知識普及
6. 推進計画 7項目
7. その他  6項目

・ 地方公共団体によるマンション管理適正化の推進

地方公共団体が以下の措置を講じる

1. マンション管理適正化推進計画制度・・・基本方針に基づき、管理の適正化の推進を図るための施策に関する事項等を定める計画を作成(任意)

2. 管理適正化のための指導・助言等4項目・・・管理の適正化のために、必要に応じ管理組合に対して指導・助言等

3. 管理計画認定制度17項目・・・マンション管理適正化推進計画を作成した地方公共団体は適切な管理計画を有するマンションを認定

事務主体は市・区(市・区以外は都道府県)

「マンション建替円滑化法」

マンションの建て替え又は除却、敷地売却の円滑化を図る目的で以下を定めています。

・ 耐震性不足、外壁剥離等の危険マンションを対象に「4/5以上の同意」「建替時の容積率特例」

・ 団地における敷地分割制度の創設

3. 改正法のメリット・デメリット

メリット

・マンション管理組合の状況や管理計画認定制度で長期計画が明確化されるので、マンション管理強化になります。

・ 購入したいマンションの情報が入手しやすくなり、良好な管理ができているかどうかがよく分かります。

・ 管理計画認定(新築の場合)があると、金利優遇を受けられる場合があります。

・ 建て替え決議は、改正前はマンション住民の全員賛成が必要でしたが、改正後4/5以上の賛成で可決されハードルが下がりました。

今後さらに3/4で可決や不明保有者の除外等の緩和が検討されています。

・ 住民だけによる建て替えは難しい場合でもデベロッパーからの働きかけの可能性があります。

デメリット

・ マンション管理組合の運営に労力がかかりマンション管理や経理など専門知識が必要になります。

コンサル業等への依頼が必要になってきます。

・ 長期修繕計画から算出される修繕積立金が増える可能性があります。

・ 建て替えは4/5以上の賛成で可決されますので、建て替えに反対し費用負担をしない場合や費用を支払えない場合などは立ち退きになる可能性があります。(執筆者:1級FP技能士 淺井 敏次)

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情報提供元: マネーの達人
記事名:「 【4/1~】高経年マンションの増加で「改正マンション法」全面施行