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離婚が成立していなくても別居中でも対象になる場合もある 「児童扶養手当」の制度
財産分与とは、婚姻生活中において夫婦間で協力して貯蓄してきた財産を離婚に伴って分配する制度のことを言います。
では、財産分与の対象になるものとならないものには一体どのようなものが当てはまるのでしょうか。
次で詳しく見ていきましょう。
基本的に婚姻中に夫婦の協力により築き上げ維持してきた財産については、財産分与の対象となります。
そのため、どちらかの名義で購入をしたものであっても、それは財産分与の対象です。
具体例は次の通り。
上記のものを婚姻中に取得したのであれば、財産分与の対象となりえます。
これらそれぞれがどれぐらいの割合になるのかは、貢献度に応じるとされています。
例えば、女性側が専業主婦だった場合は、家事をして貢献していることになるため、50%を基準として判断されるケースが多いようです。
そしてこれをベースに、離婚理由や扶養的部分などが加味されて検討・算出されていきます。
では、財産分与の対象とならない財産にはどのようなものがあるのでしょうか。
それは、婚姻前からそれぞれが保有していた財産です。
これを「特有財産」とも言いますが、婚姻前から片方が有していた財産や、婚姻中であっても夫婦間の協力なく取得した財産については基本的に財産分与の対象外となります。
例えば、婚姻前から片方が有していた財産としては、独身時代より貯金してきた定期預金などが当てはまります。
また、婚姻中に夫婦間の協力なく取得した財産については、相続によって引き継がれた不動産などが代表例です。
ただし、特有財産であっても、婚姻後に夫婦間で協力して維持されていた場合や、夫婦の貢献によって価値が増加したものにおいては、貢献度が加味されて財産分与の対象となるケースもあります。
それでは今回の本題、離婚した場合つみたてNISAは財産分与の対象となるのでしょうか。
上記で説明した財産分与の考え方と同様、独身時代より貯蓄していたつみたてNISAは、婚姻前までの分については特有財産であるため財産分与の対象外となり、分割する必要はありません。
一方で、結婚をしてから始めたつみたてNISAについては、財産分与の対象とみなされます。
もしも夫婦それぞれの名義で口座を保有し投資資金を掛けていれば、その両方ともが財産分与の対象となり、分ける必要性が出てくるでしょう。
ちなみにこれはつみたてNISAだけに限ったことではありません。
従来のNISAや特定口座で保有している株・投信についても同様の扱いとなります。
iDeCoとは、制度を導入している企業の事業主もしくは個人が積み立て(拠出)した掛け金を、加入者自身が運用をして生じた損益に応じた額を60歳以降に年金として受給する制度。
そのため、「iDeCo=年金分割制度の対象」と考えている人も多いようです。
では実際のところ、iDeCoは離婚した際どのような扱いとなるのでしょうか。
年金分割制度とは、婚姻中の年金を夫婦間で分割するものであり、専業主婦や配偶者より収入が少なかった場合など、自身名義での年金保険料の納付額が乏しい人を対象に保護することを目的として制定されました。
上記でも説明したように、結婚している間に夫婦で築いた財産については、名義に関わらず夫婦2人の共有財産として扱われますが、この共有財産には婚姻している期間中に納めた年金も含まれます。
ただし、自身で貯蓄する現金や資産といった財産とはまた異なり、年金は法律で定められている公的制度です。
ゆえに、離婚時は年金分割に基づいて年金保険料の記録を夫婦間で分けることとなります。
ここで勘違いしている人が多いのが、「分割」という名称がついていることから相手が受け取る年金額の1/2を分割してもらえると思い込んでしまっていることです。
これは大きな間違いで、年金分割ができるのは厚生年金の部分のみ。
日本の年金の仕組みはよく3階建てと言われますが、年金分割が対象としているのは2階建て部分だけであり、それ以外の1階と3階は対象外です。
≪画像元:LIFULL介護≫
年金支給額=基礎年金+厚生年金
公的年金は上記のような方程式がありますが、1階の基礎年金部分については年金受給資格者の固有財産となるため分割の対象外となるというわけです。
ではiDeCoの扱いはどうでしょうか。
iDeCoで積み立てをした年金資金については、あくまで個人が任意で加入をした年金です。
そして上記の3階建ての図では、iDeCoは3階建て部分にあたります。
よって、iDeCoは離婚時の年金分割では対象外です。
ただし、年金分割の対象ではるものの、財産分与の対象であるという見解もあります。
というのも、iDeCoの利用者が増えてきたのはここ最近の話であり、まだ裁判等で財産分与に関するきちんとした判例が出ていないのです。
さらに財産分与するとなっても、iDeCoの特性上60歳まで引き出すこともできません。
そのため、iDeCoが財産分与の対象となるかどうかについてはまだグレーゾーンの部分が多いのですが、過去ある裁判では定年まで15年以上ある事案で争われたケースがあります。
この裁判においては、年金受給までの期間が長いこと、受給や受給額について確実性がないことから財産分与の対象外という判断となりました。
しかし、これは裏を返せば定年間近の場合や、受給が確実である場合においては財産分与の対象となる可能性があるとも解釈できるでしょう。
また過去の裁判例を参考にすると、退職まで期間が長い場合は財産分与の対象外となる可能性が高いですが、婚姻期間中に積み立てをした金銭は夫婦間の協力のもと拠出したものでもあります。
ゆえに、拠出金額については同程度の財産を取得できるよう協議を申し入れてみるのも方法の一つです。
つみたてNISAやiDeCoは素晴らしい制度であり、利用者もここ数年で増加してきています。
しかし、いざというときどのような扱いとなるのかは意外と知らない人が多いもの。
いつかやってくるかもしれないもしものときに備えて今から知っておけば、困らないでスムーズに対応できるでしょう。
また、iDeCoが財産分与の対象となるのかについてはまだグレーな部分が多いです。
こちらについては今後も動向を注意すべき点でもあるでしょう。(執筆者:元銀行員、FP3級 吉村 みき子)
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