◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「世界食糧危機の中、なぜ中国には潤沢な食糧があるのか?(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。


◆世界食糧危機に対応するには需要と供給の両方から瞬発力を
6月21日の「農民日報」は<世界食糧危機に対応するには需要と供給の両方から瞬発力を発揮しなければならない>(※2)として、以下のように書いている。

——総量で見ると、わが国の穀物生産は近年「18回連続の豊作」を達成し、年間の穀物生産量は7年連続で0.65兆キロに達し、中国の穀物の基礎を成している。一人当たりの所有量の観点から見ると、中国の一人当たりの食糧所有量は480キログラムに達し、国際的な食糧安全基準である一人当たり400キログラムをはるかに上回っている。在庫の観点から見ると、わが国の穀物在庫は約40%であり、これも世界平均の17%をはるかに上回っている。穀物という観点から見ると、三大穀物(米・麦・とうもろこし)の自給率は 90%以上に達しており、食糧安全に関しては「絶対的な安全性」を満たしていると言えよう。

◆ロシアからの穀物輸入
5月31日の環球時報(※3)は、ロシアからの穀物輸入は非常に少なく1%にも満たないので、大きな変化はないものの、ここ数年、年平均19.1%の貿易増があるので、今後はさらなる増加が期待できると書いている。少なくとも、今年2月4日に中国商務部とロシア経済発展部が農業領域の貿易に関して新たに署名している(※4)ので、農産品領域における貿易の伸びが期待できるだろうとのことだ。

◆「中国は大量に食糧を買い占めている」と批判する傾向が西側諸国に
アメリカの農務省には中国に関する統計もあり(※5)、今年6月10日に公開されたデータでは、世界の在庫量に占める中国の割合は、トウモロコシ65.78%、米59.42%、小麦53.03%となっている。中国政府の主張がまんざら嘘ではないことが分かる凄まじい通知だ。

これを西側諸国は「中国が買い占めたからだ」と非難する傾向にある。たとえば2021年12月19日の日経新聞<世界の穀物、中国が買いだめ 過半の在庫手中に>(※6)は、その代表のようなものと言っていいだろう。

買い占めているか否かは別として、中国共産党が統治する国家「中国」は、どんなことがあっても、まず食糧問題を最優先事項に置く国であることを筆者は実体験を以て知っている。

◆毛沢東「誰が食べさせるかを人民に知らしめよ!」
7月3日に出版予定の『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』(※7)に書いたように、1947年晩秋から、私が生まれ育った長春(中国吉林省長春市。元「満州国」の「新京」)は中国共産党軍によって食糧封鎖された。1948年9月20日、餓死から逃れるために長春を脱出した私たちを待ち受けていたのは「チャーズ(qiazi)」という、国民党軍と共産党軍の中間地帯(真空地帯)だった。共産党軍は長春市を鉄条網で都市ごと包囲したのだ。鉄条網は国民党軍側と共産党軍側の両方に設けられ二重になっていた。その二重になった包囲網である鉄条網の中には餓死体が敷き詰められており、私たち難民はその餓死体の上で野宿することを強いられた。このころ長春に残っていたのはほぼ中国人で、中国人の中には餓死体を食する人もおり、共産党軍はそれを鉄条網越しに直接見ながら、水の一滴も米の一粒も与えなかった。チャーズの外には共産党軍が占拠する「解放区」が広がる。

4日目にようやくチャーズの門を出ることができたのだが、解放区側の土を踏んだ瞬間、お粥がふるまわれた。こんなことをするのなら、なぜチャーズの中で餓死していく人々を助けてくれなかったのか。

あのとき毛沢東はチャーズを囲む共産党軍に「誰がご飯を食べさせてくれるかを思い知らせよ。人民はご飯を食べさせてくれる側に付く」と言っていたことを、何十年もあとになって知った。

習近平も同じように考えているだろう。

人民はご飯を食べさせてくれる側に付く。

いま世界が食糧危機にある中、なぜ中国だけは潤沢な食糧を備蓄しているのか。

それは一党支配体制を維持するためなのである。

80年間の実体験を通して確信する。


写真: ロイター/アフロ

(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://szb.farmer.com.cn/2022/20220621/20220621_002/20220621_002_4.htm
(※3)https://world.huanqiu.com/article/48ErezBftfA
(※4)https://www.fmprc.gov.cn/zyxw/202202/t20220204_10638957.shtml
(※5)https://www.fas.usda.gov/data/grain-world-markets-and-trade
(※6)https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM13CUD0T11C21A2000000/?unlock=1
(※7)https://www.amazon.co.jp/dp/4408650242/



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情報提供元: FISCO
記事名:「 世界食糧危機の中、なぜ中国には潤沢な食糧があるのか?(2)【中国問題グローバル研究所】