1. 長期経営指針「ND For The Next 2030」 将来的に人口減少などを背景に新築ビルが続々と建てられるような時代ではなくなることから、足元で好調の空調計装関連事業の新築工事も長期的には現状以上に大きく広がらないと言われている。一方、既設工事では、築年数の経過とともに改修時期の到来する大型ビルが増加していくことが想定される。また、日本のエネルギー政策※1から、脱炭素社会の実現に向けて環境ビジネス市場は堅調に拡大すると予測されており、とりわけ建設業界ではビルを中心に究極の省エネであるZEB※2の実現に向けた取り組みが進められている。このため、省エネ・省力化を実現する同社の「計装エンジニアリング」技術に対する需要はますます高まると考えられている。産業システム関連事業においては、中長期的にAIやIoT、ICT技術といったDXを活用した工場のデジタル化(スマートファクトリー化)が追い風となって、市場が大きく広がることが期待されている。なかでもプロセスオートメーションやファクトリーオートメーションなど、工場設備の更新や生産管理システムの構築に関連する需要の増加が期待されている。
同社は、空調計装関連事業については同社を支える安定収益源、産業システム関連事業については成長ドライバーと考えており、2022年3月期に2031年3月期を最終年度とする長期経営指針「ND For The Next 2030」を策定した。さらに、「ND For The Next 2030」を、成長基盤を構築する「第1フェーズ(2022年3月期〜2024年3月期)」、成長基盤の拡大と生産性の向上を果たす「第2フェーズ(2025年3月期〜2028年3月期)」、さらなる飛躍と挑戦の「第3フェーズ(2029年3月期〜2031年3月期)」に分け、好調な空調計装関連事業のなかでも既設工事につながる新築工事で収益を拡大するとともに、既設工事で収益の積み増しを図る。一方、産業システム関連事業の独り立ちを進めた後、開拓余地が大きい産業システム分野に経営資源を投入し、産業システム関連事業の成長に弾みをつける考えである。なお、2024年3月期に終了した「第1フェーズ」は好調に推移したうえ、「2024年問題」を前に着実に対策を講じた点は高く評価できる。